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エンドレスシアター

彼はステージ上であまりにも輝いていて、それはまるでそのために神様が作ったような人、そして絶対に私が手に入れられない男の子だった。

彼に釣り合うように背伸びした花柄のワンピースに、甘い香りの香水、彼にエスコートしてほしくて選んだ頼りない細いヒール。

デートの前の日は、1日中クローゼットを漁って一人でファッションショーをする、きっと彼は私が何を着ても可愛いって褒めてくれるだろう。

たまに私は、星の数程いる子猫ちゃんの何番目だろうと考えてしまう。
きっと私より愛くるしく、美しい女の子は何人もいるだろう。奇跡的に子猫ちゃんになれた私は必死にそこにしがみつくしかなくて、でも彼を思って髪を巻いたり、マニキュアを塗ったりするのは嫌いじゃない。

デート当日は、風が強くていつもよりワンピースの裾が良く揺れている。いつもなら鬱陶しく思うのに、なぜだかとても嬉しくなった。きっと風の強い日は決まってこのデートを思い出してしまうだろう。

忘れないように一つ一つ確かめるように記憶していく、カフェで飲んだ甘ったるいクリームソーダ、ひどく退屈で終わった後二人で笑いあった恋愛映画、キスした時伏せたまつげの影何もかも。

デートが終わったら私の家に泊まるのが最近の定番コースになっていて、彼がいつのまにか買っていた女の子が好きそうな、可愛い入浴剤をいれて今日の映画の悪口を話ながら二人でお風呂に入る。
白濁とした液体は、夢の中みたいに気持ち良くて同じ匂いをまとわせているのは酷く嬉しかった。

彼は髪を乾かすのがとても上手い、それには少し嫉妬してしまうけど振り向いたらキス出来る距離に心拍数が上がってしまう自分がとてつもなく単純で、笑ったと同時に上手くなるまで何回女の子の髪を乾かしたのだろう、と嫉妬してしまう。

二人で悩みに悩んで買ったお揃いのパジャマに、じゃんけんして決めた色ちがいの歯ブラシ、少しずつでも確実に増えていく私物、決して広くない部屋に彼の物で面積が埋まっていくのはとても気分が良い。

次のデートはどこに行こうかと話す彼に、ちゃんと次があるんだと安心する。次はお花見が良いな近くの公園の桜が咲きそうだし、といいながらぬるいココアを飲み干す。

暖かい体温を感じながら100回目のデートが私だったら良いのに、と小さく神様に祈った。
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