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タルトタタン

女の子は、お砂糖と、スパイス、素敵なものぜんぶ、で出来ているらしい。
小さい頃に読んだ絵本にピンクのフリフリでキラキラしたお姫様は私の憧れだった、きっと私にも王子様が現れるのだろうと。


虎石君といるとふとその幼少期の思い出がよぎる。ピンクのワンピース、控えめなヒールの真っ赤なパンプス、派手過ぎないキラキラしたネイル彼のためにそれをみにまとった私はピンクのお姫様になれているだろうか。


「今日のネイルもかわいい」、とさりげなく手を繋ぐ虎石君はとてもスマートで「実は虎柄入れてもらったんだ」と恥ずかしそうに言う私に「俺のため?」と体をぐっと引き寄せる。自分の体温との温度差に顔があつくなった。


繋がれた手にはお揃いのリングが光っていて、そこだけ運命の赤い糸が結ばれているようで本物のリボンで結んだらもっと素敵だろうなと思ってしまう。


とりあえず飯行こうぜ、とあどけない笑顔を見せる彼はさっきまでの大人っぽさは無くて男子高校生だなと感じる。「やっぱりこのネイル良いな」、と上機嫌な彼はとても楽しそうで「そんなに気に入った?」、「俺のものって事だろ?」と私を見透かすように笑う虎石君にドキドキした。


私の指先をくすぐる彼の目は、まつ毛の影と光でキラキラしていて宝石箱みたいなケーキよりも甘くて、美味しそうで、眺めてしまう。それを分かってるくせに「食べねーの?」と言ってくるのは意地悪で、「食べさせて」と見栄で強がる。


女の子はお砂糖と、スパイス、素敵なもの、で出来ているのは本当かもしれないなと私の王子様を見ていると思う。白馬には乗っていないけど、乗りなれたバイクにまたがって、私たちはまたどこかデートへと出かけるのだろう、と幼少期の自分に微笑んだ。
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