白いテーブル
ただいまと珍しく少し疲れた声の南條君はお酒の匂いと外の匂いが混じっていてなんだか不思議に感じる。
なんか貰ったんだよね、と乱雑に置かれたオシャレな紙袋の中から高そうなお菓子が出てきて包装紙を破りながらちょっともやもやする。
もう今さら誰から貰ったの、とは聴かないけれど私は相変わらず律儀に嫉妬してしまう。
自分では買わないボンボンショコラは南條君にとても、似合う。
これを選ぶのに何時間かかったのだろうとか、何件お店をはしごしたのかなとか、余計なことを考えては当て付けのようにチョコを食べる
しらばっくれた顔で、そんなに美味しいんだ、とか言う南條君に腹は立つけどチョコレートに罪はない。
甘ったるいチョコレートを噛むと中からどろりとしたリキュールが口の中に流れる、その舌触りが気持ち悪くてコーヒーで流し込んだ。
多分私がこの前同期の男に貰った出張土産をはしゃいで見せたせいだろうなと、ツヤツヤとした丸くて甘いものを見ながら思う
小さな仕返しはなんだか彼らしくなくてかわいいと思ってしまう自分はとてもちょろい。
お土産を見せた時も趣味が悪いとか、ありきたりだとか、言っていてそういう時だけ見せる年相応の顔はいつもより幼く感じる。
南條君って意外と嫉妬深いよね、と微笑む私に前は違ったけどね、と呟く南條君は何だか罰が悪そうで面白い。
「ふふ…」
「何笑ってるの不気味なんだけど」
「思ってても彼女に不気味なんて言わないでよね」
くすくすと笑う彼はいつもより少し楽しそうな気がした。
何だか私たちの間に置かれたチョコレートが凄く、凄く、ちっぽけに見えてきて丁寧にピシッとした暗めのオシャレな包装紙も、金色のフチのリボンもバカらしくなった。
はやくでろでろに溶けてなにもかも全部無かったことになれば良いのにと真っ黒なコーヒーを見つめる。
抱え切れない独占欲と嫉妬は多分こんな味がするのかなとまた一つチョコレートを口に含んだ。
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