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それはあまりにも

南條君は桃を剥くのがうまい
綺麗で人工的な手がするすると気持ちよく柔らかく産だった皮を剥いでいく。
その手つきはいかにもなれていますと言った感じだ。

今までは女の人に剥いてもらうばかりだと思っていたから、こんなに綺麗に果物を剥けるなんて予想外で不思議な気持ちになった。

薄い紫色のお皿につやつやとした実を落としていく、不器用な私には到底無理なので羨ましい。
桃は柔らかいのと固いのどっちがすき?、と話ながらクリームチーズの乗ったクラッカーをかじる。

呆れ顔で、「食べ過ぎじゃない?」と小言を言われるけれど、止めはしない彼の口にクラッカーを入れる。少し眉間に眉を潜めながらも、口元がちょっとだけ緩んでいて凄くこの時間が恋人っぽいなと思う。

恋人なのだけど、と自分の心の中で付け足すその気持ちはこの桃のように柔らかく熟れきっていて食べることも捨てることもできない。

そんなことを考えているときに彼と目が合う、この気持ちを何だか見透かされたような気分になって少し恥ずかしくなり目をそらす。

彼はそんな私をみて鼻で笑い、「そういう所凄くかわいいよね」などど言ってのける、かろうじて「意味わかんない」などと強がって見せるけど、本当に本当にこういう所がずるくて、勝てなくて、大好きだと思ってしまう。

桃を剥いた手ってしばらく匂いが取れないんだよね、と手を洗いに行く彼を見て。
何だかその手にこの記憶が記されているようでうれしくなった。桃はあまり好きでは無かったけれどこれからついつい手に取ってしまいそうだ。
今日の日差しはとても明るくて窓際にかけたドライフラワーがすこし揺れている、午後3時のティータイムは私たちには早すぎると問いかけているみたいだ。
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