第10話 暴走
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「リリーティア!!リタ!!しっかりしてぇ!!」
暗闇の中から、エステルの絶叫にも似た叫び声が聞こえる。
自分は一体どうしたのか、何が起きたのか。
徐々に光が広がっていく。
そのとき、何か冷たいものを感じた。
「っ!!」
瞬間、リリーティアは何が起きたのかを思い出した。
「エステル!リタ!」
リリーティアは勢いよく上体を起こした。
体中に痛みを感じたが、今は気にしていられなかった。
雨がぽつりぽつりと降り始め、冷たく感じたのは雨のせいだと知る。
「リリーティア、よかった・・・っ!!」
エステルが心底安堵した表情でリリーティアを見る。
ふと、その横を見るとリタが倒れていた。
「リタっ!!」
リリーティアは直ぐにリタの口元に手をあてた。
「(呼吸が浅い!?)」
外傷は数箇所かすり傷がある程度で大きな怪我はないが、このままでは危険だった。
そのとき、リリーティアとリタの体があたたかな光に包まれる
同時に感じていた痛みもひいていくのが分かった。
それはエステルの治癒術だった。
それも、かなり高度なもの。
「エステル!!」
「・・・はあ・・・はあ・・・はあ」
治癒術を使った途端、地面にうずくまるエステル。
荒く息を吐き、その顔色はあまりにも青白い。
光の衝撃で体力が奪われている中で、彼女が持てる最大の力を注いで治癒術を使ったからだった。
リリーティアは急いで《レウィスアルマ》をひとつ手に取った。
「命芽吹きし大地を包む 豊穣の守護者 西風の神ここに」
この魔術はいくつかの治癒の効果があり、体力の低下を回復させる効力があった。
これで少しは良くなってくれたらと、リリーティアは願いを込めて詠唱する。
「デウス・ゼピュロス」
すると、リリーティアを含む三人の周りに緑の光が花びらのように舞い、あたたかい風が体を包んだ。
「大至急、エステリーゼ様とリタを休ませる部屋を準備してください!」
「すぐに準備を・・・!」
リリーティアの声にすかさずフレンが答えると、部下の騎士に指示を出す。
一度、エステルの様子を窺い見てみると、彼女の顔色も少しはよくなっていた。
リタの呼吸も安定していて顔色も悪くない。
この様子だと、二人とも大丈夫だろう。
それを確認すると、ユーリとフレンが駆け寄ってくるのを視界に捉えたリリーティアはさっとその場を立ち上がった。
「ユーリ、フレン、リタとエステルをお願い!」
そう言い残すと、すぐに駆け出すリリーティア。
後ろからユーリとフレンの呼ぶ声が聞こえたが、彼女は構うことなく、ただひたすらに走った。
ただただ、彼の無事を祈りながら。