第10話 暴走
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アデコールとボッコスを見送ったあと、リリーティアはユーリと共にエステルが休んでいる宿に向かった。
そこにリタとカロルもいるという。
そして、エステルがいる部屋に入ると、広い横長の椅子に座って3人で話をしているところだった。
「リリーティア!」
エステルはリリーティアたちが入ってきたことに気づいて立ちあがる。
「ユーリ、今までどこいってたの?」
「ん?ああ、街をフラついてたんだよ」
本当はアデコールとボッコスの相手をしていたのだが、カロルたちにわざわざ言う必要もないと思ったのか、ユーリは適当なことを言った。
「リタ、カロル、取り調べお疲れさま」
「ほんとにね。こっちはいい迷惑よ」
「罪状も全部ユーリがやってきたことばっかりだったもんね」
今日の朝から延々と罪状について聞かされ、しかも、そのほとんどが下町での騎士の公務を邪魔をする為にユーリがやってきたことばかり。
関係のないカロルとリタは心底うんざりしていたようだ。
「なんにしても、みんな無事に釈放されてよかった」
「そうですね、これもリリーティアのおかげです。ありがとうございます」
頭を下げるエステルに、リリーティアは目を瞬かせた。
「リリーティアが口添えをしてくれたんですよね」
エステルはにこっと嬉しげな笑みを向ける。
「え?そうなの?確か、エステルと・・・ヨーデルって人の計らいでって」
カロルはきょとんとしてリリーティアを見た。
「私は何も-------」
「リリーティアはアレクセイにいち早くみんなことを伝えてくれていたんです」
昨日の夜、リリーティアは早急の書状を出した。
ヘリオードに向かっているアレクセイに、簡単にまとめた報告書と共にユーリたちのことを詳しく書いて報せたのだ。
エステルを守ってくれたこと、騎士団に協力してヨーデルを救ってくれたこと。
下町でのことを含め、これまでの彼の行動の真意、その他諸々。
すべてを伝えた上で、彼らは罪に問うべき者たちではないことを記した。
「そうだったんだ」
「はい。それに、ヨーデルにもリリーティアからの報せがあったそうですよ」
リリーティアはもう一通、書状を送っていた。
それは、トリムにいるヨーデルに宛てたものだった。
内容は主に拘束されたユーリたちを解放するために助力を願うものであった。
そこにも下町での彼のことも少し含め、これまでのユーリの行動の真意を添えて、彼らの釈放を求めた内容を記した。
そして、フレンと共にいたヨーデルはトリムでアレクセイと合流し、ここへ来る前にアレクセイにユーリたちを赦免する方向で話をしていたのである。
「ですから、みんなをすぐに解放することができたんです」
「へぇ、じゃあリリーティアの計らいでもあったんだね」
「いや、私はただ伝えただけにすぎないよ」
リリーティアは、自ら書状を送らなくてもユーリたちならしばらく経てば解放されるのではないか、という考えは少なからずあった。
考えれば、ラゴウの一件のこともあるヨーデルが解放する方向で動いてくれる可能性もあったし、そこにエステルが”ユーリに頼んで自ら城を出た”と証言すれば、姫誘拐に関する罪は問われず無事に釈放されたはずだ。
つまり、書状を送ったことで変わることは、釈放が遅いか早いかだけのその程度の違いにしかすぎないということ。
それでも、彼女が書状を送った理由は、少しでも早くユーリたちを解放させるため、且つ、確実的に釈放する方向へと動かすためだった。
ユーリたちが捕まってからというものエステルは彼らのことをひどく心配していた。
自分のせいだという罪悪感もあってか、彼女のその時の表情は不安そのものだった。
だから、昨日の夜のうちに動いた。
書状を書き、雨で濡れても大丈夫なよう油紙でそれを包み、急使を立てたのだ。
少しでも早くエステルが抱いている不安とその罪悪感を取り除くために。
必ず彼らが釈放されるようにと。
ユーリのこれまで行ってきた罪状に関して言っても、
姫誘拐という罪の濡れ衣に乗じて、こちらから少しばかり口添えはしたものの、すべて赦免するという判断はアレクセイによるものだ。
「すぐに解放することができたのも、実際に動いてくれたエステルとヨーデル殿下のおかげだ。閣下がそれを受け入れてくれたことも含めてね」
そう、だから自分のおかげではないのだ、決して。
「それでも、私はリリーティアのおかげだと思っていますから」
エステルは満面の笑みを浮かべた。
はっきり言い切るエステルにどこか気恥ずかしさを感じだが、彼女のその笑顔にリリーティアも微笑み返した。
けれど、ただひとつ。
ひとつだけ、リリーティアには心残りがあった。
それは、彼女の旅を続けさせることができなかったことである。