第10話 暴走
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そうして、しばらく話をした後、シュヴァーンは部屋を出て行った。
再び部屋の中は雨の音だけに包まれ、リリーティアは椅子に座ると窓の外を眺め見た。
雨は変わらず激しく降り続けている。
「・・・・・・明日」
騎士団長がヘリオードに向かっている。
リリーティアはその真意を改めて考えていた。
姫の身柄を確保し、誘拐犯を捕らえたからといって、帝都からわざわざ遠く離れたヘリオードまで、騎士団長自ら動き出すのは少々大げさすぎる。
明らかに他になにか目的があっての行動に違いなかった。
その目的とはなにか。
考えられるのは、----------ギルドへの協力要請。
ヨーデル誘拐の一件でラゴウとバルボスが裏で手を組んでいたことが、騎士団全体に知れるところとなった今、ギルドとの交渉に出るつもりなのだろう。
リリーティアは机の上に手を組み、その手に額を乗せた。
ギルドのへの協力要請は、まさに<帝国>が新たに一歩動き出すということ。
ギルドと<帝国>が激しく衝突していた昔の時代ならば、到底考えられることのない交渉である。
まさに、世の中にとっての新たな一歩といっていいだろう。
それはまた、アレクセイの理想が次の段階へ動き出しているということを、リリーティアは分かっている。
そして、ギルドへの協力要請という考えの中に隠れた、裏の目的のことも。
「(・・・とりあえず、今は考えても仕方がない)」
長い間、考えに耽っていたリリーティアは大きく背中を伸ばす。
任務は終えた。
騎士団長閣下がこちらに向かっているという連絡を受けた。
今後の行動すべては、彼がヘリオードに到着しないと決まらないことだ。
彼が来るまで今自分はここでやれることをやるだけ。
リリーティアは報告をまとめるために必要な紙とペンを取りに席を立つ。
部屋を出て廊下を見渡すも、騎士の誰もいなかった。
紙とペンの用意してくれるよう、手近な騎士を探して廊下を歩く。
その時になぜかふとエステルのことが頭の中に浮かんだ。
そこにはユーリたちを心配するエステルの表情(かお)があった。
瞬間、ぴたっとその足を止めるリリーティア。
何を考えているのか、少しの間そのまま突っ立ていた。
「・・・・・・やるべきこと、か」
そう呟くと、再びその歩を進めた。
さっきよりも足早に廊下を歩いている。
本部内の広間に出ると、ある扉の前に立っているひとりの騎士が見えた。
その騎士は見習いの騎士のようだ。
「任務中にすみません。少しお願いがあるのですが・・・」
気だるそうに立っていた騎士だったが、声をかけてきたのがリリーティアだと知ると慌てて騎士は姿勢を正した。
「あ、はい!なんでしょう?」
「用意していただきたいものがあるんです。紙とペンと-------」
そこで、一旦言葉を区切る。
リリーティアは少し考える素振りを見せたあと、再び口を開いた。
「----------あと、油紙をお願いします」