第9話 廃墟
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「ったく、どうしろってんだ」
ユーリは何度か攻撃を繰り出してみたが、ほとんど効いている様子はない。
剣技ではまったく歯が立たないことを見て取ったユーリは、前衛は敵の攻撃に注意しながら、魔物の注意をひきつけることだけに徹した。
その隙に後衛の魔術で攻撃を与えていこうと考えたのだ。
見たところ、魔術もあまり効いていないようだったが、まったく効かないよりはましであった。
突然、魔物が大きく吼えた。
それは耳がつんざくほどの咆哮で、頭の奥にまで強く響いた。
ユーリたちの攻撃が一時的に止まった隙を狙ってなのか、魔物は前足を高く上げるとそのまま勢いよく振り下ろした。
一踏み一踏みが重い巨大な足。
それらの体重をすべてかけて高く振り下ろしたその衝撃の波はあまりに凄まじいものだった。
「うおっ!」「きゃあ!」「きゃぁ!」
足が振り落とされた地面は激しく隆起し、そこから出た衝撃波がユーリたちを襲う。
ユーリたちは勢いよく吹き飛ばされた。
「っ!」
リリーティアも吹き飛ばされるまではいかなかったが、彼らからだいぶ離れた距離にいても体勢を崩されるほどの衝撃が襲った。
彼女はすぐに体を起こし、顔を上げる。
瞬間、その視界に一番に飛び込んできたもの。
それは、---------------仲間が倒れている姿だった。
「っ!!」
彼女の目は大きく見開く。
その瞳はまた大きく揺れた。
過去が蘇る。
遠い過去。
頬に感じるのは、熱い風。
肌に感じるのは、灼熱の光。
瞳に映るのは、生々しい欠片。
その瞳に映るのは、赤黒い影。
その心を支配するのは、絶望。
瞳の中で過去の記憶と現在(いま)の光景が重なる。
砂の上で倒れた赤黒い影と地の上で倒れた仲間の姿。
「・・・・・・ああ、また・・・」
-------------------- 失うのか。
だが、その重なりはすぐにズレた。
目の前で倒れていた仲間はゆっくりと起き上がっている。
仲間は、まだ、生きていた。
リリーティアは大きく息を吐くと、力なく頭(こうべ)を垂れた。
そして、すっと瞳を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、
おどけた笑顔と穏やかな笑顔。
そして、---------------”薄ら笑う顔”
瞬間、リリーティアの体は激しく脈打つ。
彼女はゆっくりと立ち上がる。
そして、その顔を上げ、ひたと前を見据えた。
----------その瞳に捉えるのは、敵。
「・・・・・・また奪うのか」
----------その心を支配するのは、憎しみ。
「・・・・・・そうはさせない」
彼女はゆっくりと歩き出した。
絶対的な存在と絶対的な力を前にしても、しっかりとした足取りで、前へと進んだ。
その手に、愛用の武器を持って。