第8話 小悪漢
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一行が屋敷から出ると、外は降りしきっていた雨から一変して綺麗に晴れ渡っていた。
魔導器(ブラスティア)が破壊され、エアルの干渉を受けなくなったからだろう。
「ったく、なんなのよ!あの魔物に乗ってんの!」
「あれが竜使いだよ」
怒り奮闘のリタにカロルは説明する。
「竜使いなんてもったいなわ。バカドラで十分よ!あたしの魔導器(ブラスティア)を壊して!」
「バカドラって・・・。それにリタの魔導器(ブラスティア)じゃないし」
カロルは呆れた表情でリタを見る。
よほど魔導器(ブラスティア)を壊されたことに腹が立っているようだ。
「それにしても、どうして魔導器(ブラスティア)を壊したりするんでしょう?」
「確かにな。話ができる相手なら、一度聞いてみたいけどな」
「あんな奴とまともな話、できるわけないでしょ!」
リタは竜使いに対し敵意むき出しだった。
何より今回は壊されたのを目の当たりしているため、余計に怒りが収まらないのだろう。
そんな彼女の怒りをよそに、ユーリはパティとポリーへと顔を向けた。
「おまえらとはここでお別れだ。ラピード、ポリーを頼むわ」
「ワン!」
これからラゴウを追いかけなければならないユーリは、家までポリーを送れないかわりにそれをラピードに頼んだ。
「ラゴウってわるい人をやっつけに行くんだね」
「ああ」
「たすけてくれてありがとう、気をつけてね」
笑顔を浮かべたポリーは屋敷の外へと向かって駆け出し、ラピードもすぐに後を追った。
少し先まで走ったあと、ポリーは一度足を止めて振り向く。
「リリーティアおねえちゃん、あの時、守ってくれてありがとう!」
ポリーは満面の笑みで叫んだ。
リリーティアは突然の感謝の言葉に何度か目を瞬かせると、彼女も笑顔を浮かべて手を振って応えた。
ポリーも大きくて手を振り返し、ラピードと共に町へと去っていった。
「おまえも、もう危ないところに行ったりすんなよ」
ポリーを見届けると、ユーリはパティに向き直って言う。
「わかったのじゃ」
そう言うと、パティはあっさりとその場を駆け出して行った。
「・・・・あの娘(こ)、たぶんわかってないわね・・・」
リタはパティが去って行った方を見ながらぼやいた。
その時、エステルの様子が少しおかしいことにリリーティアは気づき、彼女の顔を覗き込む。
「エステル?」
「わたし、まだ信じられないんです。執政官があんなひどいことをしていたなんて・・・」
悲しげな面持ちのエステル。
リリーティアは何も言えず、ただエステルを見詰めた。
ラゴウの悪行はあまりに酷いものだった。
何より世界を知り始めたエステルには、特にこの事実は精神的にも、ひどく衝撃を受けたに違いない。
「よくあることだよ」
そう、これが現実なのだ。
カロルの言うとおり、まだまだ世間には市民が<帝国>に苦しめられている事はたくさんある。
知らないだけで、おそらくそれは数えきれないほどあるだろう。
「ほら、のんびりしてるとラゴウが船で逃げちゃうよ!」
「カロル先生の言うとおりだ、早く行くぞ」
ユーリとカロルはさっさとその場を駆け出した。
すぐにリタも後を追う。
リリーティアは未だ落ち込んでいるエステルの肩にそっと手を置いた。
「エステル、今はやるべきことをやろう」
その言葉にエステルは小さく頷くと、リリーティアたちも駆け出した。
そう、今は現実に打ちひしがれている場合じゃない。
自分たちには、今、やるべきことがあるのだ。
ラゴウを追いかけて捕まえることが。