第2話 青年
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リリーティアは連なり合う切妻屋根の上で、身を潜めるように片膝をついていた。
いつもの魔導服(ローブ)は羽織っておらず、その上、左胸につけてある<帝国>の徽章もそこにはない。
苦笑を浮かべ彼女が見下ろしている先には、大勢の下町の人たちがひしめき合うように集まっていた。
あまりに騒がしく、様々な言葉が飛び交っている。
「(これじゃあ彼らは、しばらくは動けそうにない、か)」
その下町の人たちに取り囲まれているのは、三人の<帝国>騎士たち。
一人は、ルブラン。
あとの二人はルブランの部下で、見習い騎士の格好をしている。
長身痩躯のアデコール。
単身肥満のボッコス。
どちらものシュヴァーン隊の騎士だ。
周りからは能力の高くないことで知られるシュヴァーン隊の騎士。
そんな騎士たちの中でも、とりわけその名に恥じないのがこの三人。
彼らは下町の人たちから質問攻めにあっており、先に進めないで困っている。
「(彼らには悪いけど、先に行かせてもらおう)」
あの様子からして、脱獄者であるユーリ・ローウェルとエステリーゼはここにいないようだ。
集まっている下町の人たちの後ろに続いている道は街の外に通じる道。
下町の人たちはルブランたちを質問攻めに詰め寄り、彼らをこの先へ行かせないようにしているのが見て取れた。
そのことから二人がすでに街の外に出て行ったのだということはすぐに分かった。
「(それにしても、下町の人たちは逞しいな)」
というよりも、彼らの団結力にはいつも脱帽させられる。
ルブランが下町の人たちに怒り叫んでいるが、下町の人たちはまったく意に介していないようだ。
リリーティアは下町の人たちのそれぞれの繋がりの強さに感嘆しながらも、昔から変わらない下町のその深い絆を羨望の眼差しで見詰めた。
「(そろそろ行かないと)」
彼女は静かにその場に立ち上がる。
そして、身を翻すと、切妻屋根の上を軽々と飛び越えて、結界の外へと向かったのだった。