第7話 魔導器
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しばらく進んでいくと、街道では見かけない大きな赤い花が目に入った。
よく見ると、あちらこちらに点々とその赤い花は咲いている。
「山の中じゃ、こんな花咲くんだ」
見たことのない花を前に、好奇心からかリタがゆっくりとその花に手を伸ばす。
「リタ!触っちゃだめ!ビリバリハの花粉を吸い込むと眩暈と激しい脱力感に襲われる、です」
「ふーん・・・」
エステルから花の説明を聞いたリタは、何か考え込む。
「ちょ、何を・・・」
「あ、ゴメン!」
なにを思い立ったのか、リタはカロルの背後にそっと回り込むと、花に向けてドンッとその背中を押した。
体が花に当たってビリバリハの花粉が宙を舞うと、カロルは思いっきりそれを吸いこんでしまった。
カロルは何度もせき込むと、急に足取りがおぼつかなくなり、ふらふらとその場に力なく座り込む。
「カロル、だいじょうぶです!?」
ぼうっとするカロルにエステルは慌てて駆け寄ると、手をかざしてすぐに治癒術を施した。
「治癒術に興味あんのか?」
「別に・・・」
何かを疑うようなユーリの問いに、リタは肩を上げて素っ気なく答えた。
「・・・だめですね。私のこの治癒術では治りません」
彼女が今使った治癒術は主に怪我を治すためのものであるから効果がなかったようである。
リリーティアは少し考える素振りを見せると、カロルの前に跪き手をかざした。
「清かなる大気よ アイテール」
リリーティアはそこで麻痺や毒などの、体内の異常を治すための術を使った。
白い光に包まれると、ぼうっとしていたカロルの目がパチリと開いた。
どうやら効いたようである。
「・・・あれ?」
「大丈夫?」
「あ、うん。・・・もう、ひどいよ、リタ~」
文句を言いながらカロルはゆっくりと立ち上がった。
「だから、ごめんって言ったでしょ」
「平気なら、行くぞ」
「ビリバリハには、今後気をつけましょうね」
再び一行は草木を掻き分けながら獣道を進んでいった。
だんだんと進んでいくにつれて道が狭くなっていくことに、エステルやカロル、リタは何度か不安を口にしたが、
リリーティアは大丈夫だといって、迷わずその先をどんどん進んでいく。
そして、カロルがもう疲れたと弱音を吐いた直後、少し開けた場所に到着した。
「ここまでくれば、あと少しで半分だよ」
「え?・・・まだ半分も来てないの~!」
カロルはがっくりと肩を落とす。
心なしかエステルもリタも落ち込んでいるように見えた。
ここまで距離で言えばそれほど長い道のりではなかったが、急斜面でしかも歩きにくい獣道はその分時間もかかり、かなり体力を消費したのだろう。
三人のあまりの落ち込み様にリリーティアは困ったように笑った。
「もう少し進めば、きっとその疲れも-------」
「ガオオォォォッッ!!」
リリーティアの言葉に覆い被さるように、突然、獣の咆哮が響き渡った。
「なに?!」
カロルはその咆哮がした方へ振り向いた。
見ると、すぐ近くの崖の上に巨体な魔物がこちらを見下ろしている。
「うわあああっ!あ、あれ、ハルルの街を襲った魔物だよ!」
カロルは叫んだ。
姿はウルフと似ているがその体躯はその何倍もあり、鋭い牙と爪はとても大きい。
その魔物はガットゥーゾと呼ばれ、数年前からここら一帯を縄張りとしている魔物であった。
「へえ、こいつがね。生き残りってわけか」
「ほっといたら、またハルルの街を荒らしに行くわね、だぶん」
「でも、今なら結界があります」
ユーリたちが話しているとガットゥーゾはもう一度咆哮をあげ、崖から飛び降りてきた。
一行を獲物と捉えたのか、ガットゥーゾは一直線にこちらへ向かってくる。
「うわ、きたよ!」
「結界があっても街の近くにこんな魔物がいたら、みんな安心していられない」
そう言いながら、リリーティアは武器を抜いた。
ユーリたちもそれぞれに武器を手に取り、ガットゥーゾを退けるために戦闘態勢に入った。