第6話 進む道
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エステルを連れ戻そうと、ユーリたちに近づいてくるルブラン。
そんな時、今まで黙って見ていたリタが急に詠唱を始めた。
「ちょ、リタ・・・」
それを見たカロルは、とっさに後ずさる。
「戻らないって言ってんだから、さっさと消えなさいよ!」
----------ドカーン!!
大きな爆発音と共に、ルブラン、そして、部下二人も巻き込まれ、一斉に吹き飛ばされた。
容赦ない魔術にリリーティアは冷や汗をかいたが、彼らに直撃したのではなく爆風で飛ばされただけであった。
リタが彼らを吹き飛ばしたところで、これまでと違った嫌な視線を感じたリリーティアははっとする。
見ると、街の高台に黒装束に身に纏った男たちがいた。
「ユーリ、あそこ」
「・・・やっぱり、オレらも狙われてんだな」
それは、フレンが手紙で言っていた暗殺者-------赤眼だった。
素早い走りでこちらへ向かってきている。
「今度はなにっ!」
「ど、どういうこと?」
リタは次から次へと面倒事が起きていることに苛立ちを見せる。
カロルはというと、何が起きているのか訳が分からず落ち着き無くおろおろしていた。
「話はあとだ!カロル、ノール港ってのはどっちだっけ?」
「え、あ、西だよ、西!エフミドの丘を越えた先に、カプワ・ノールはあるんだ」
ユーリは「行くぞ」といって駆け出した。
カロルとラピードもすぐに後を追い、リタも駆け出そうとしたがエステルがその場で佇んだままなのに気づき、足を止めた。
「ほら、さっさと行く」
「でも、わたし・・・」
エステルはルブランとユーリたちの方を交互に見た。
ルブランたちは魔術で吹き飛ばされたものの大した怪我はなく、咳込みながらゆっくりと起き上がっているところだった
ユーリたちは街の入り口で一度足を止めると、カロルがこちらに向かって声を上げて呼んでいる。
「・・・あーっ!!決めなさい。本当にしたいのはどっち?旅を続けるのか、帰るのか」
なかなか、動かないエステルにリタはぴしゃりと言い放ち、彼女の本心を促した。
「・・・今は、旅を続けます」
少し考えた後、エステルはきっぱりと言った。
一切の迷いもない声であった。
「賢明な選択ね。あの手の大人は懇願したってわかってくれないのよ」
リタはエステルの決断に納得していた。
そして、エステルは改めてリリーティアへと向き直った。
「リリーティア、すみません。私、まだ帰れません」
「・・・・・・」
申し訳ない表情でエステルは告げると、深々と頭を下げた。
リリーティアは何も言わず、ただじっと真剣な眼差しで彼女を見詰めると、しばらくしてエステルに背を向けた。
その背を見た瞬間、エステルの胸中は一気に不安が押し寄せた。
「騎士団の心得ひとつ!!」
だが、エステルが不安に感じるのもつかの間、リリーティアが突然叫んだ。
すると、ルブランたちがビシッと直立不動になる。
それはあまりにも凄味の利いた声音だっため、傍にいたエステルとリタは目を白黒させて驚いていた。
「『その剣で市民を護る』!!」
リリーティアは厳しい顔つきで直立不動のルブランたちに向けて叫んだ。
その時、暗殺集団である赤眼の男たちが街中を抜け、近くまで追ってきていた。
すでにその距離は数十メートルもない。
「ですよね?ルブラン小隊長」
そう問いかけながら、真剣な瞳に口元には笑みを浮かべるリリーティア。
暗殺者の男の出現、そして、我らが特別補佐官の言葉。
彼女の言わんとすることをすぐに察したルブランは、毅然として敬礼し、力強い目つきを向けて大きく頷いた。
「その通りですっ!!いくぞ騎士の意地をみせよっ!!」
そう叫びながら、ルブランを筆頭にアデコールとボッコスが赤眼たちに立ち向かった。
彼らの背を、リリーティアは自信に溢れた目で見詰めた。
ルブランはとても生真面目で融通の利かないところがあり、堅物という言葉がぴったりと当てはまる人だ。
けれど、だからこそ不義を嫌い、不正を罰し、誰よりも義に厚い心を持っている。
それは部下である、アデコールとボッコスも同じで、市民を護る心、騎士として心は人一倍強い。
確かに普段周りからは能力の低い隊だと、そして、ひと際それが目立っている彼らたちだけれど、騎士としての生き方に誇りを持つ心は、誰にも負けていないのがこの三人だ。
そのことを誰よりもリリーティアは知っている。
だから、当然だった。
あのような暗殺者に、彼らがやられるわけがないことなど。