第5話 天才少女
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***********************************
「待ってろとは言ったけど・・・どんだけくつろいでんのよ」
リリーティアたちはアスピオに到着し、リタの研究室小屋に戻った。
小屋の中では、ユーリとエステル、カロルがリリーティアたちの帰りを待っていたのだが、その中でユーリだけは、まるで自分の部屋にいるかのように床に寝そべりなが待っていたので、その遠慮のない様にリタはジト目で彼を見た。
その隣では、あまりの彼のその横柄さにリリーティアも呆れた表情を浮かべている。
「あ、おかえりなさい」
「ただいま」
エステルは怪我もなく帰ってきたリリーティアを見て、ほっと安堵した表情を浮かべていた。
「疑って悪かった」
いつのまにか起き上がっていたユーリは、唐突にリタに向かって謝罪の言葉を口にした。
傍から聞けば悪びれているようには見えないが、彼が素直ではない性格だと知るリリーティアから見れば、ちゃんと謝罪の意を込めた言葉であるのが分かった。
「軽い謝罪ね。ま、いいけどね。こっちも収穫あったから」
そう言うと、リタは部屋の奥にある黒板に書かれた術式とエステルを何度も交互に見ていた。
「リタ?」
そんなリタの様子に、エスエルは首を傾げた。
「(・・・これはもう、決定かな)」
エステルと黒板に書かれた術式を交互に見比べているリタに、リリーティアはひとり苦笑を浮かべた。
それは明らかに、魔導器(ブラスティア)なしで術が扱えるエステルの力をもとに、黒板に書かれた術の公式を解くカギがないか考えているようだ。
つまり、あの式を解明するためにエステルについてくるのではと、リリーティアは推測しているのである。
「カロル、なにしてんだ?」
「いや、こんなにたくさん置いてあるから。本当に魔導器(ブラスティア)好きなんだなあって」
カロルは魔導器(ブラスティア)が並べて置かれてある棚をまじまじと見ていた。
そして、その中にある魔導器(ブラスティア)のひとつに触ろうと手を伸ばす。
「ビクトリアに汚い手で触らないで」
「ビ、ビクトリア?それってこの魔導器(ブラスティア)の・・・?」
まさか名前が付いているとは思わず、カロルは戸惑っていた。
リリーティアもそれには少しばかり驚いたが、魔導器(ブラスティア)を誰よりも大切にしているリタらしく、彼女が心から魔導器(ブラスティア)のことを想っているということがよく分かる。
「・・・名前まで付けてるんだな。何がそんなに好きなんだ?」
「何がって・・・・・・楽しいからよ。仕組みとか理論とか・・・、それに・・・」
そこで言葉を途切ると、彼女はどこか窺うような視線をリリーティアへと向けた。
「?」
リタのその視線の意味が分からず、リリーティアは首を傾げる。
そして、視線を落とし、しばらく何かブツブツと独り言を言っていたが、彼女は乱暴に自分の頭を掻き出した。
「あ~もぉっ!そんなの考えたことないわよ。あんただって自分の好きなものに理由つけられる?」
「え?・・・あ、そう、だね。好きなものは好きだってしか言いようがないものはたくさんあるよ」
話を振られるとは思っていなかったリリーティアは、少し反応が遅れながらも言葉を返した。
「ま、たしかに理屈じゃねぇもんはいっぱいあるわな」
「そういうこと」
リリーティアはふと遺跡の地下でリタが言っていた言葉を思い出す。
『魔導器(ブラスティア)はあたしを裏切らないから・・・。面倒がなくて楽なの』
あの時、彼女はそう言っていた。
その言葉の真意は、彼女の人との関わり方が大きく反映しているのだと、リリーティアは思った。
おそらく彼女は人よりも魔導器(ブラスティア)と関わることだけを選び、これまで生きてきたのだろう。
人と魔導器(ブラスティア)と共に生きるのではなく、そのどちらか一方を選んだ。
面倒な人間ではなく、-------愛情を注いだ分、輝いてくれる魔導器(ブラスティア)を。
リリーティアは何とも言えない面持ちでリタを見詰めた。
「んじゃ、世話かけたな」
「なに?もう行くの?」
「長居してなんだし急ぎの用もあるんだよ」
ユーリは傍に置いてあった愛用の剣を手に、玄関のほうへ歩き出した。
「今日は本当に迷惑をかけてごめんなさい。いろいろとありがとう」
「リタ、会えてよかったです。急ぎますのでこれで失礼します。お礼はまた後日」
「・・・わかったわ」
感謝の意を伝えリリーティアは頭下げると、エステルも丁寧にお辞儀をした。
リタは何やら少し言いたげな様子ではあったが、二人の言葉にただ頷いた。
そうして一行は、リタに別れの挨拶をして彼女の研究室小屋を出たのだった。