第5話 天才少女
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現在の時刻は朝日が昇ってまだそれほど経っていない時間帯だが、そこは洞窟の中であるから街の中はまるで夜のようであった。
街全体に点々と外灯が灯っている。
そんな街中には、魔導士がよく着用している魔導服(ローブ)をまとった人たちが大勢いた。
「なんか、モルディオみたいのがいっぱいいるな・・・」
ユーリはそう呟くと、疑わしい目で街を行き交うアスピオの研究員たちを見渡している。
ドロボウである犯人が魔導服(ローブ)をまとっていたため、魔導服(ローブ)を着ている人物がすべて疑わしく見えるのは仕方がない。
「ちょっと、いいか?」
「ん、なんだよ?」
街の中心にある大きな広場に着くと、ユーリは近くにいた一人の研究員に声をかけた。
「モルディオってのはどこにいるんだ?」
「な!あの変人に客!?」
研究員は驚きの声を上げた。
その反応はさっきの騎士とまったく同じだった。
「さすが有名人、知ってんだ」
「・・・あ、いや、何も知らない。俺はあんなやつとは関係ない・・・」
研究員はしまったといった感じで視線を逸らし、これもまた早口に答え、その場をそそくさと立ち去ろうとする。
「まだ話は全然終わってないって」
ユーリは逃がすものかと研究員の襟首をつかんで無理やり止めた。
「もう!なんだよ!」
「どこにいんのって聞いてんだけど?」
相手の怒りなどお構いなしに、襟首を掴んだままユーリはしつこく問いただす。
「奥の小屋にひとりで住んでるから勝手にいけばいいだろ!」
研究員はユーリを睨み見ると、モルディオが住んでいる場所を指で示しながら怒鳴るように言った。
「サンキュ」
満足のいく答えをもらい、ユーリはぱっとその襟首を離した。
研究員はぶつぶつと文句を呟きながら、大股でその場を去っていった。
「大丈夫なの?」
カロルは不安げな表情でユーリを見た。
「ん?」
「名前出しただけで、みんな嫌がるなんておかしいよ」
「気になりますね」
確かにカロルの言うとおり、騎士といい、研究員といい、明らかに関わりあいたくないという態度で、それはあまりにも過剰と思えるほどに彼らは拒絶的な反応を示していた。
エステルもそれには少し疑問を持ったようだ。
「そりゃ、魔導器(ブラスティア)ドロボウだしな。嫌われてんのも当然だろ」
二人とは違い、ユーリはそれほど気にしていないらしい。
三人が話しているのを聞きながら、リリーティアは去っていく研究員をじっと見詰めていた。
「(いったい、モルディオという魔導士はどんな人なんだろう・・・?)」
名前を聞いただけあれほどまで動揺する理由はなんなのか、リリーティアは不安というよりも、少し興味の方が強かった。
これまでその人物のことは話に聞いているだけだったため、以前から一度は会ってみたいとは思っていた。
何より周りがその人物を語る中で、時折、口にされる変人というのは一体どういうところを指しているのか。
彼女はそのことも少し気になっていた。