第19話 砂漠
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オアシスで休憩した後、兄妹の両親を探して先へと進む一行。
十分に体を潤すことが出来たことで、カロルやリタも少しは元気を取り戻し、今や足取りもしっかりしている。
それだけでなく、近場に水場があるということが分かっているだけでも、砂漠の中を捜索するとしても精神的にも幾分か楽になっていた。
「おっ・・・?」
しばらく進んだ先で、先頭を歩いていたレイヴンが突然その足を止めた。
僅かに腰を屈めて、訝しげに前を凝視している。
「何やってんだ、おっさん」
「いやほら、そこなんか変な生き物がいるなーって」
彼が指差すほうを見ると、確かに砂中で何やらうごめくものがあった。
砂漠に棲む生き物だろうか。
砂に埋もれて姿形がよく分からないその謎の生き物に皆が目を凝らした。
「ん・・・?なんだ!?」
と、突然その謎の生き物がこちらへと向かってきた。
その様はまるで土竜(もぐら)が土の中を進んでいるようなもので、
しかも、それは何故か一直線にユーリへと向かっていく。
そして、皆が何事かと驚く間に、何か物体が砂の中から現れてユーリの足を掴んだ。
「うわああああっ!!」
カロルが叫んで驚いた。
ユーリの足を掴んだそれは人の手だった。
「ユーリなのじゃ!」
手が現れたかと思うと、その元気な声と共に次に砂から現れたのは、紺色の海賊帽と金色の髪。
なんとそれはパティであった。
思いがけない現れ方に皆が驚く中、エステルはほっと安堵の息を吐く。
「び、びっくりした・・・」
「・・・まさか、砂ん中でも宝探しか?」
「ご名答なのじゃ」
いくら宝を探すためとはいえ、この熱い砂の中を潜るなど尋常では考えられない行動である。
とはいえ、これまでの彼女の出会い方を考えるとこれこそが普通でもあった。
森の中では空中遊泳のごとく魔物と共に空から現れ、海の中では航海と称して魔物の体内から現れる。
他にも奇想天外な場所からひょっこりと現れては一行らを驚かせていた彼女だ。
今回はこの熱い砂の中から現れ皆が一様に驚いたが、それはまた彼女らしいといえばらしい登場ではあった。
「もしかしてあそこに置いてある箱、この砂漠で見つけたお宝?」
カロルが指差すほうを見ると、少し離れた場所に荷物が置かれてあった。
それはパティの荷物でその中にいかにも古い四角い木箱があった。
それは大人の顔ひとつぐらいある大きさの箱。
マンタイクで手掛かりを得られなかったあの時、
すぐに準備を整え、その日の内にこの砂漠の探索を始めたらしい。
そして、砂の中であの箱を見つけたという。
「でも、よく砂の中にあるのを見つけることできたね」
「冒険家の勘はイルカの右脳よりも鋭いのじゃ」
「勘?非科学的~」
「あら、侮れないわよ。勘って」
不思議がるカロルに胸を張って豪語するパティ。
合理的なリタは疑惑な視線を投げたが、ジュディスはどこか納得していた。
勘はその人物の本能的なものでもあり、経験がものをいうものもある。
これまで宝探しをして生きてきた彼女には、その経験と冒険家としての感性が他の人よりも鋭いからこそのものなのかもしれない。
「まさかそれ?パティちゃんが探してたお宝っていうの?」
「うんにゃ、違うのじゃ。これはガラクタだったのじゃ」
そう言うと、パティは箱を持って軽く振ってみせた。
箱の中でカラカラと音がなる。
「じゃあ、まだ記憶とやらの手掛かりは掴めてないってことか」
「うむ。でも、うちの旅はまだまだこれからなのじゃ」
パティは胸をとんと軽く叩いて意気込んだ。
過酷な旅の果てに最後は空振りに終わっても、立ち止まることなく新たに前に進む。
その立ち直りの早さは感服するばかりだ。
「ねぇ、こんなところでおしゃべりしてたら行き倒れになるわよ」
「そうですね。パティも一緒に行きましょう」
リタの言葉にエステルが頷く。
「む?宝探しの続きがあるのじゃがの」
「ごちゃごちゃ言わないでついてくる」
渋るパティにリタが有無も言わせずぴしゃりと言い放った。
砂漠は危険な場所だ。
ここまでは無事に一人で来たのだとしても、こうして出会った以上、ここで彼女を一人にするというのはどうにも忍びない。
一行はパティも連れて砂漠での捜索を続けることにした。