第19話 砂漠
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あと一刻もせずに太陽が真上まで上る。
暑さは一層厳しさを増していった。
一刻も早く子どもたちの両親を探そうと意気込んで進んでいたものの、やはり、この強烈な暑さの中ではそれも長くは続かない。
焦る気持ちとは裏腹に足取りは重くなる一方だった。
いよいよ仙人掌(サボテン)もほとんど見かけなくなり、砂に埋もれた岩くずや時折魔物の骨が転がっているのを見つけながら、一行はただひたすらに前に進んだ。
「あ~~!」
このままでは周辺に転がっている魔物の骨と同じ運命を辿ることになる。
そんなことが頭によぎり始めた頃、カロルが突然叫びに近い声を上げた。
そして、それまで足取りもふらふらしていたのに、彼は勢いよくその場を走り出したのだ。
「お?ついにひとり壊れた?」
揶揄する口調のレイヴン。
駆けていくカロルの遠く先を見ると、少し大きな岩場と共に椰子(ヤシ)の木が密集している場所があった。
その中に太陽の光に反射してキラキラと光るものがある。
「水っ!」
リタが声を上げ、カロル同様にその場を走り出した。
輝くそれはよく見ると小さな泉、オアシスだった。
「あ、ちょっと、待ってください!」
先へと走り出す二人に続いて、エステルもだっと駆け出す。
さっきまで覚束ない足取りだったのが嘘のようであった。
「おっさんも行くか!」
挙句にはレイヴンも同じように駆け出していき、
ユーリとジュディス、そして、リリーティアだけがその場に取り残された。
ユーリはジト目で先に駆け出していくカロルたちを見やる。
「なんだよ、・・・まだ元気じゃねえか」
中でもカロルやリタは、どこまでも続く同じような景色とこの暑さに何度も文句をぼやいていた。
にも拘わらず、あの変わりようである。
ユーリは重いため息をついた。
「みんなして力の出し惜しみしやがって・・・」
「まあ、それでもいいじゃない」
実際に行き倒れてしまうほど弱っているよりは、元気であってくれるほうがいい。
苦笑を浮かべるリリーティアの言葉に、そうねとジュディスも微笑んで頷いた。
そして、だいぶ先へと行ってしまったカロルたちの背を追いかけるように
リリーティアたちもオアシスへと向かって歩き出した。
「生き返った・・・」
「ほんと、もうダメかと思った」
先に言ったカロルたちに遅れてリリーティアたちがオアシスにたどり着くと、
すでにカロルとリタは泉の水に足を浸して休んでいるところだった。
ようやくありつけた憩いのひとときに一行らは心ゆくまで喉と体を潤す。
リリーティアも火照った顔を洗い、乾いた喉を潤した。
湧き出る水は透明で意外なほど冷たい。
「このまま進むのも危険だよね・・・」
「でも、ここで引き返したらあの子たち悲しむわね、きっと」
カロルの言うように確かに危険ではあるが、
子どもたちが悲しむ以前にあの両親の命もその分危険に晒されているということだ。
何よりキュモール隊に連れられている以上、どんな扱いを受けているかが心配だった。
「とりあえず力の限り行くわよ」
「毒を食らわば皿までってことね」
どうせここまでやったのなら最後までやり通そう。
そんなリタとレイヴンの言葉にユーリは頷いた。
「だな。水場も見つけたし、もうしばらくは捜索できるだろ」
「わん!」
仙人掌(サボテン)も少なくなり水の補給も満足に出来なくなってきた今、少なくとも、ここのオアシスを拠点に探せば行き倒れることはまずない。
一行はしばらくの休憩をいれた後、捜索を開始することにした。