第18話 黄砂の街
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「それで、どうやって砂漠の中をさがす?」
カロルが問う。
一行は昼食をとった後、暑い日射を避けて建物の日陰の中で話し合っていた。
食事をした店の中にも騎士はおり、そこでの会話は最低限控えることにし、騎士の目が届かない今ここで改めて今後の行動について話し始めた。
「(・・・砂漠・・・やつがいる場所・・・)」
彼らが話し合っている中、リリーティアはひとり何やら考え込んでいた。
砂漠地帯は所々に岩石が転がっていたり、この過酷な環境の中でも自生している数少ない植物 仙人掌(サボテン)があるだけで、その面積の大半は熱砂で覆われている。
砂漠中央部にもこの街のようにオアシスが点々とあるらしいがその数はけして多くない。
フェローがゴゴール砂漠にいるのが確かなら、あの巨体が休める場所が砂漠の何処かにあると考えられた。
いくら砂漠に棲む生態であるとはいえ、適当に熱砂の上で休んでいるとはあまり考えられない。
どこかに特定の棲家があるはずだ。
「ジュディス、砂漠中央部には目立った岩場はある?」
「岩場・・・?」
リリーティアから出た突然の問いに、カロルが首を傾げた。
岩場と特定して言ったのにはそれなりの理由があった。
「岩場・・・もしかして、おとぎ話の?」
その時、エステルがはっとして呟いた。
砂漠に住む言葉をしゃべる魔物のおとぎ話。
フェローがおとぎ話にある砂漠に棲む魔物のことではないか、あの時エステルからその話が出たことで、リリーティアはフェローの居場所は岩場ではないかという可能性を以前から考えていた。
この国にいくつか伝わる砂漠に棲むしゃべる魔物の話の中には、必ずその岩場が出てくるのだ。
「そういえば、わたしがお城で読んだおとぎ話にも岩場のことが書かれてありました。おとぎ話が事実なら、フェローは岩場にいるのかもしれませんね」
「なるほどな。で、ジュディ、どうなんだ?」
あの巨体を休めさせる場所ならば相当広い岩場のはずだ。
ガドスの喉笛でそうだったが、ジュディスは何かとデズエール大陸の地理に詳しい。
それだけでなく、リリーティアの中では
「確かに砂漠中央部には大きな岩場があるわね」
そこまでの詳しい距離は分からないらしいが、ここから南東の位置に巨大な岩場があるのは確かだという。
カロルとユーリは顔を見合わて頷いた。
「なら、決まりだね」
「ああ。まずはその岩場に向かうか」
明日からその岩場を目指して砂漠を渡ろうということで話はまとまった。
「だから、その前に準備忘れないでよ。特にあんたは肌露出しすぎ」
誰よりも砂漠を路を危ぶんでいるリタが、びしっとジュディスを指差した。
指を指された当の本人は首を傾げる。
「そんな格好で砂漠の太陽にさらされたら全身火ぶくれしちゃうわよ」
「あら。私、この格好気に入っているんだけれど」
リタの指摘を真剣に受け止めず、頬に手をあててどこか呑気なジュディス。
リタが言うようにこの先の砂漠では日差しを避ける外套(ローブ)は必需品となる。
砂漠地帯の端に位置するこの街ならまだ長時間日光にさらされなければ、今のように常に外套(ローブ)を羽織らなくてもいいだろうが、ここよりもさらに暑さが厳しい砂漠中央部となれば話は大きく変わってくる。
椰子(ヤシ)の木や建物などの日を避ける物も少なく、日射が強い場所でのそれは命に関わってくるだろう。
まあ、砂漠の事をよく知るジュディスのことだ。
おそらく冗談でリタの指摘に答えているだけなのだろう。
「そうよ~、リタっち。ジュディスちゃんはこの格好だからジュディスちゃんなわけで」
「黙れおっさん!」
レイヴンも冗談で、いや、それは半ば本気だったのだろうか。
そのふざけた物言いに、リタは容赦なく彼の鳩尾に拳を殴りこんだ。
呻き声と共に勢いよく彼は地に倒れたが、そんなやり取りはすでによくある光景のことで皆が呆れてそれを見ていた。
リリーティアもはじめは呆れにも似た笑みを微かに浮かべていたが、すぐに空を見上げた。
「・・・・・・」
そして、しばらく神妙な面持ちでひとり空を見詰めていた。