第18話 黄砂の街
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熱帯地域によく見られる椰子(ヤシ)の木。
それは街の中にも多く自生しており、熱風にあおられて椰子(ヤシ)の葉は揺れている。
街の中を一人歩いていたリリーティアは強い日差しを避けるように建物の影の中を歩く。
「(どこも騎士ばかり・・・)」
石造りの家々が建ち並んだ随所に騎士の姿があった。
どこか威圧的に感じるのは、それは相手が全身覆われた甲冑姿だからというわけでなく、街中にいる騎士たちの中には何故か通りに背を向け、店や民家のほうを向いている騎士がいるからだ。
「(・・・どう見ても監視でしかないな)」
街の安全を守るためにいるのではなく、それは明らかに街の住人たちを監視している様だった。
それに、どうもそれだけではないようだ。
「すみません」
「あ、ああ、いらっしゃい。何が要りようで」
リリーティアは一軒の出店に立ち寄った。
店主は気さくに声をかけてくたが、どこか様子がおかしい。
彼女は適当に商品をいくつかを選ぶと代金を支払う。
「ここはいつもこんなに静かなんですか?」
「あ、いや・・・」
買ったものを受け取りながらリリーティアは尋ねた。
だが、店主は言葉を詰まらせると、ちらりと横へ視線を泳がせた。
その視線の先にいるのは、店から少し離れた所に立っているひとりの騎士。
「ま、まぁ、最近はこんなものですよ。まいどありがとうございました」
店主はぎこちない笑みを浮かべると、どこか逃げるようにして背を向けた。
そして、店の中にある売り物を整理したり、忙しなく動き回る。
だが、それはそう装っている風でしかなく、明らかに不自然でしかなかった。
「あの、この先に広がる砂漠のことなんですが-------」
「す、すみませんね~、お客さん。ちょっと今手が離せないんですよ」
どこか他の所で聞いてほしいと、店主は頭を掻いて申し訳ないと何度も頭を下げた。
リリーティアはそうですかと頷いて、その店を後にした。
「(会話でさえも禁止か・・・)」
どうやら、この街の住民はただ監視されているだけでなく、必要以上に外の者との会話も禁止されているらしい。
宿屋やさっきの店でもそうだか、何かと騎士の目を気にしながら客と相手をしている。
さっきのようにこちらから尋ねてもはぐらかすか他の所で聞いてくれと言われるばかりだ。
あの店の前にも何軒が店を訪れてみたが、どこも同じような対応であった。
「(これじゃあ、ここで情報収集は難しいそうだな・・・)」
始祖の隷長(エンテレケイア)であるフェローの情報。
どの店も同じ対応で、新たな情報は簡単に得られそうない。
それに、この街の住人は店を開いている者しか見かけず、その辺を歩いている住人は一人も見かけないのだ。
各店の近くには必ず騎士が立っており、そのため騎士の目を盗んで聞くことも出来ない状況だった。
内部への監視、外部に対する遮断。
「(すべては何のためか・・・)」
始祖の隷長(エンテレケイア)の捕獲のためにここにいるのは確かだ。
だが、そのためにこの街の人たちを監視、外部からの一切の会話の禁止するなど、その意味は一体どこにあるというのか。
実際、なんの意味もないことだ。
騎士団が始祖の隷長(エンテレケイア)を
「・・・・・・」
不意にリリーティアはその足を止めた。
胸の奥には言いようのない不快なざわめき。
リリーティアは左の掌(てのひら)を見た。
何を思っているのか、彼女はただ黙したままその掌をじっと見詰め続ける。
そして、何事もなくその手を下ろすと、彼女は再び歩き出した。