第18話 黄砂の街
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「静かな街だな」
額の汗を拭いながら、ユーリは目の前に広がる街を眺めた。
カドスの喉笛で一夜を過ごしてから翌日。
一行は目的地である、砂漠のオアシスを擁(よう)する街 マンタイク にたどり着いた。
「でも、暑い町よ・・・」
リタがうんざりした声で呟いた。
照りつける太陽は一切の情けもなく、周囲に立ち並ぶ家々の影すら陽炎(かげろう)で揺らめいて見えるほどの景気。
靴底を通して伝わってくる地面の熱気がさらに熱さを増幅させた。
しかし、それでもここはオアシスの街。
この先に広がる砂漠中央部、ゴゴール砂漠と比べればこの熱気もまだまだマシなほうなのである。
その上、街に到着した今の時間帯はまだ朝といってもいいような午前のはじめ頃。
つまり、これから日中にかけてさらにこの暑さが増していくのだ。
そう考えると、この街の住人からすれば、きっと今はまだ涼しいほうなのだろう。
「暑い~」
だとしても、慣れていない者からすればこれでも十分な暑さで、街についた時にはリタだけでなくカロルも暑さにひどくやられている様子であった。
「それじゃあ、うちは宝の手がかりを探すから、ここでバイバイなのじゃ」
ノードリカの時と同じように、街に着いてすぐに別行動を取るパティ。
記憶を取り戻すため探している宝の情報を得るため、彼女はすぐにも街を見て回るつもりらしい。
「もう行っちゃうの?」
「んじゃ。では、行くのじゃ」
声に力がないカロルに頷くと、その場を駆け出していくパティ。
暑さに参っているリタやカロルとは違い、パティはいつもと変わらず元気そのものであった。
去っていくパティを見送ると、残った一行たちも街の中へと進んだ。
「こんなところにも騎士がいる」
カロルが呟く。
しばらく進むと、一軒の家の前に鎧に身を包んだ騎士が立っている姿があった。
この激しい日差しから身を守るためだろう、その鎧の上には外套(ローブ)を纏っている。
「少なくとも、前来た時はあんな物騒な人たちはいなかったわね」
その騎士の姿にジュディスが首を傾げた。
「ねえ、もしかしてあの騎士たちってさ・・・」
カロルが声を潜めて隣にいるユーリを見上げた。
街の中に立つ外套を纏った騎士。
その外套の下から見えるのは桃色と赤で彩られた隊服。
「・・・ああ、キュモールのやろうだな」
その隊の騎士団はキュモール隊であった。
こんなところまで騎士がいること自体不可思議なことなのに、その騎士団がキュモールの隊だということにユーリたちは一層訝った。
「また何か企んでるんじゃないでしょうね」
「・・・・・・」
街にいる騎士たちに怪訝な目を向けるリタの後ろで、リリーティアはひとり辺りを見渡して街の様子を窺い見る。
街自体ははじめにユーリが言っていたようにあまりにも静かであった。
出店の類いはあるが全体としては静まり返っており、まったく活気というものが感じられない。
乾いた砂で覆われた通りを歩く住人の姿はなく、代わりに要所要所で見かけるのが<帝国>の騎士たちの姿だった。
「ひとまず宿に行って少し休むか」
「賛成・・・何するにしてもちょっと休憩したい・・・」
汗に濡れた髪の毛の先をつまみながら答えるカロルに続いて、他の皆も頷いた。
ガドスの喉笛からマンタイクまでは一時間もない道のりではあったが、砂漠となると砂に足を取られる上、火傷でもするかのような強い陽光にたちこめた熱気のせいで、同じ道のりの長さを進むとしても、平原と砂漠とではその体力の消耗差は激しいものである。
一行はひとまずマンタイクで唯一の宿屋へと向かった。