第17話 闘技場

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「いた!」




カロルが声を上げる。

洞窟のさらに奥で一行はその場で立ち留まっているラーギィを見つけた。

見ると、彼の前にはぽっかりと開いた大きな空洞があり、空洞は真っ黒に染まっている。

良く見ると、その中でコウモリに似た魔物の群れが甲高い啼き声を上げながら飛び交っていた。

どう見てもそれ以上は先へ進めない。





「こ、こ、こんなことに・・・」





ようやく追い詰めたラーギィにラピードが突進した。

その衝撃にラーギィは抱えていた小箱を落とし、ラピードがすかさず力強い尻尾でそれをリリーティアたちのほうへと滑らした。





「よくやった、ラピード。鬼ごっこは終わりだな」





箱を拾い上げると、ユーリはにっと笑みを浮かべた。

ラーギィはぐっと歯を噛み締める。





「くっ、こここ、ここは・・・ミーのリアルなパワーを・・・!」





ラーギィが煙に包まれかと思うと、そこには『海凶のツメ(リヴァイアサンのツメ)』の首領(ボス)、イエガーが立っていた。





「うそっ・・・!」

「どういうことです?ラーギィさんに変装して・・・?」





カロルがのけぞって驚く。

エステルも信じられないと口に手をあてて驚いた。





「(・・・そういうことか)」





これには、リリーティア自身も驚いた。

『遺構の門(ルーインズゲート)』と『海凶のツメ(リヴァイアサンのツメ)』がつながっていることは当然知っていた。

『海凶のツメ(リヴァイアサンのツメ)』は独自の流通ルートで、<帝国>が厳しく管理している魔導器(ブラスティア)の密売を行っているが、その独自の流通ルートが『遺構の門(ルーインズゲート)』からの横流しであることはリリーティアもはじめから知るところだ。

いや、知るも何も、彼女自身、『海凶のツメ(リヴァイアサンのツメ)』から得たその魔導器(ブラスティア)を使って、秘密裏の中でこれまで様々な研究を行ってきたのだ。





しかし、そんな彼女だか、『海凶のツメ(リヴァイアサンのツメ)』のイエガーが『遺構の門(ルーインズゲート)』の首領(ボス)と同一人物だということは知らされてはいなかった。

二つのギルドの関係は、もともと己が理想のために秘密裏に研究を進めていく上で、アレクセイが仕組んだものであるが、リリーティアの中では、アレクセイ、もしくはイエガーが『遺構の門(ルーインズゲート)』の首領(ボス)と互いに結託し、それは単なる利害一致の関係にすぎないものだと思っていた.

いつしかの、ラゴウとバルボスのように。

しかし、今回のことで、そんな単純なことではなかったと知る。

いや、ある意味もっと単純なこととも言えた。

『遺構の門(ルーインズゲート)』と『海凶のツメ(リヴァイアサンのツメ)』との横流しの仕掛けが、同じ首領(ボス)にあったからだということに、リリーティアは納得しながらも正直驚きを隠せなかった。





「(それじゃあ、『遺構の門(ルーインズゲート)』のかつての首領(ボス)は・・・)」





『遺構の門(ルーインズゲート)』は五大ギルドとして昔からその勢力を示している。

イエガーが『遺構の門(ルーインズゲート)』の首領(ボス)となる前に、当時の首領(ボス)はどうしたのだろうか。

ここにはもういないのか、それとも・・・。





「今はあれこれと考えてる暇はなさそうよ」





ラーギィの正体に戸惑うカロルとエステルに向けられたジュディスの言葉に、そこでリリーティアも考えに耽るのをやめた。

彼女の言う通り、今はこの状況をどうするかだった。





「おーコワいで~す。ミーはラゴウみたいになりたくないですヨ」





ユーリたちの鋭い視線にイエガーは大げさに身を竦めてみせる。

彼の言わんとしていることに、リリーティアは僅かに眉を寄せた。





「ラゴウ・・・?ラゴウがどうかしたんですか?」

「ちょっとビフォアに、ラゴウの死体がダングレストの川下でファインドされたんですよ。ミーもああはなりたくネー、ってことですヨ」





エステルはカロルやリタと顔を見合わせている。

戸惑っている様子であった。





「ラゴウが・・・死んだ・・・?どうして?」

「それはミーの口からはキャンノットスピークよ」





エステルの問いには答えず、イエガーは口元に人差し指をたてた。

だが、その物言いは明らかに彼はその真相を知っているのだ。

ラゴウが誰に命を奪われたのかを。





「どういう、ことでしょう・・・?」

「・・・・・・」





イエガーの言葉を真意が分からず、エステルはユーリの顔を見上げた。

だが、ユーリは何も答えず、ただじっとイエガーを見ているだけだった。

リリーティアも何とも言えない表情で、黙す彼の背を見詰めていた。

その背に負った罪、彼なりの覚悟を思いながら。





「イエガー様!」

「お助け隊だにょーん」





その時、どこからともなくゴーシュとドロワットが一行たちの前に現れた。

ヘリオードでも同じだったように、リリーティアは彼女たちを前にしても少しも表情を変えなかった。





「ゴーシュ、ドロワット、後は任せましたヨー」

「了解」

「アイアイサー♪」





イエガーは流れる前髪をさっと手で払うと、ユーリたちに向かってにやりと笑った。





「イエー、また会いましょう、シーユーネクストタイムね!」

「あ・・・そっちは・・・!」





イエガーは魔物の大群が飛び交う空洞の中へと躊躇なく向かっていく。

敵である相手であっても、彼の行動にエステルは思わず手を伸ばした。

だが、イエガーが魔物の群れの中へと飛び込む手前、ゴーシュとドロワットがコウモリ型の魔物たちに斬りかかり、二人が斬り込んで魔物が散った合間をイエガーが抜けていく。





「逃げられちゃう!」





カロルが叫んだの同時に、イエガーの姿は空洞の奥へと消えてしまった。

イエガーが逃げだした後も、魔物の群れはゴーシュとドロワットに攻撃を受けたことで、その怒りから二人へ容赦なく襲い掛かり続ける。

リリーティアはとっさに前に飛び出そうとしたが、寸前でぐっとそれを押さえた。

四方を囲まれながらもゴーシュとドロワットはどうにか立ち回っていたが、次第にその体にはいくつもの傷が増えていく。





「(二人であの数は・・・)」





リリーティアは苦い表情で二人の姿を見る。

そんな時、コウモリの群れの動きが一変した。

群れは一箇所に集まり出し、黒い大きな塊が出来上がっていく。

そして、それは巨大な黒鳥となった。

その瞬間、リリーティアは前に駆け出していた。





「こいつだ!プテロプスだよ!」





カロルが言っていた、洞窟に棲む強い魔物とはこの魔物のことだった。

その正体はコウモリ型の魔物たちの集合体だったのである。

プテロプスは黒翼を大きく広げながら、雄叫びを上げて飛び上がっていた。

カロルが叫んだのと同時に、リリーティアはすでに一行たちの前へと飛び出していた。

彼女の突然の行動に皆が言葉なく驚いている。





「アーラウェンティ!」





プテロプスが敏速をもってゴーシュとドロワットに向かって突撃するのと、リリーティアが魔術を発動したのはまったく同時だった。

だが、彼女の風魔術ではその勢いのあるプテロプスの動きは止められなかった。

その魔術は確かに一寸の狂いもなく魔物に直撃したにもかかわらずにだ。

その勢いを少しも削ぐこともできないまま、プテロプスはゴーシュとドロワットに突撃した。





「ああっ!」

「きゃっ!」





二人は容赦なく吹き飛ばされた。

吹き飛ばされる直前、二人の背後に立っていたリリーティアは二人をその腕に受け止めたが、その勢いまでは受止めきれずに、彼女も一緒になって吹き飛ばされてしまう。

そして、そのまま洞窟の岩壁へと叩きつけられてしまった。





リリィ!」「リリーティア!」

「っ・・・わ、私は大丈夫!今はあの魔物を・・・!」





ユーリとカロルの声にはっとして、リリーティアはなんとか声を上げた。

それから彼女は背中に感じる痛みに声をもらしながらも、腕の中にいる二人の様子を窺った。

僅かに呻き声をこぼし、痛みにその表情は歪んでいるが、二人の命に別状はなさそうだ。

リリーティアはほっとした表情を浮かべ、息を吐いた。





リリーティア、怪我は・・・!」





そこへ、エステルが駆け寄ってきた。





「それに、二人ともひどい怪我を・・・」

「エステル、こっちは大丈夫だから。ユーリたちの援護を」





ユーリたちはプテロプスと戦っている最中だった。

プテロプスは一体一体分裂したり、またさっきのように集合体になったりと、形態を変えて攻撃を仕掛けているようだ。

これまでにない攻撃形態にユーリたちは戸惑い、すでに苦戦を強いられている様子である。

だからこそ、治癒や補助を専門とするエステルの力は今はユーリたちに最も必要だ。

彼女と比べるともちろん効力は小さいが回復の魔術を使えるリリーティアは、自分も含め、この二人のことは任せてくれていいと言葉を続けた。

それでもエステルは心配した面持ちではあったが、の言葉に素直に頷くと、彼女も戦っているユーリたちのもとへと向かって行った。




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