第17話 闘技場
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洞窟の奥は大きな空洞になっていて、その中をいくつか岩の道が続いている。
道の脇は崖になっていて、底は真っ暗でどこまで続いているのか分からない。
落ちたらまず命はないだろう。
足元に注意しながらほどなく進むと、先を走っていたラピードが急に立ち止まった。
「どうした、ラピード?」
ラピードに追いついたユーリが聞く。
リリーティアも立ち止まると、じっと前方を見たがラーギィがいる様子はない。
またどこかに隠れているのだろうか。
「よっこいせ・・・」
すると、どこからか声が響いた。
カロルは首を傾げる。
「・・・なんか聞こえなかった?」
他の皆にもその声は聞こえていた。
だが、近くに隠れるような場所はなく、道の脇は崖だ。
どういうことだろうと一行が訝っていると、
「ここなのじゃ」
「うわあっ!」
その崖から突然に手が伸びてきて、カロルは思わず身を引いた。
驚いたことにその崖から誰か人が登ってきたのだ。
「・・・ってパティ?」
「おっ、また会ったの」
その誰かとはパティだった。
相変わらず彼女は思いもよらない所から一行の前に再び現れたのである。
彼女との遭遇にはどうも常識は当てはまらないようだ。
「そんなところから出て来て、やっぱりアイフリードのお宝を探してるのか」
ユーリの言葉にパティは何度も大きく頷いた。
どんな危険な場所であってもその宝を探し求めているパティ。
そこまでして探すお宝の真相が気になったのか、カロルは彼女に尋ねてみた。
「ねぇ、そのお宝ってどんなものなの?」
「聞いて驚け、それは麗しの星(マリス・ステラ)なのじゃ!」
よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、パティは胸を張って答える。
だが、驚くもなにも、リリーティアも他の皆もその宝の名を聞いたことがなかった。
麗しの星(マリス・ステラ)はアイフリードのお宝の中でも何より貴重なものなのだとパティは話した。
「で、その麗しの星(マリス・ステラ)とやらってお宝は見つかったのか?」
「宝とは簡単に見つからないから宝というのじゃ」
つまりは、この洞窟内でもまだその宝は見つかっていないらしい。
でも、まだまだ諦めずに探して回るようだ。
「・・・ねぇ、ノードポリカで聞いた、パティがアイフリードの孫って・・・本当?」
カロルが恐る恐るといった様子で小さく口を開いた。
ノードポリカにある店でのやり取りを見ているからか、その声音はどこか少し気を遣っている感じでもある。
「なによ、そうなのパティちゃん?盟友に孫がいたと知ったら、じいさん、どんな顔するかね」
あの場にいなかったレイヴンは驚きに目を見張りパティを見る。
ドンとアイフリードはユニオン結成以来の盟友だが、アイフリードに孫がいることはドンも知らないようだ。
「でもさ・・・嘘でしょ?アイフリードの孫なんて。だって、そんな話一度も聞いたことないし」
カロルと言う通り、アイフリードに孫がいるという話は聞いたことがない。
そもそもアイフリードの身内に関すること自体、話に聞いたことがなかった。
「本当なのじゃ!・・・たぶん・・・」
「たぶん・・・?どういうことです?」
首を傾げるエステルに、パティはうっと言葉を詰まらせる。
何か言いにくいそうであったが、彼女は重くその口を開いた。
「・・・それは、うちが記憶喪失だから、なのじゃ」
「記憶・・・」
「喪失・・・?」
カロルとリタが目を瞬かせて呟く。
リリーティアも内心驚いてパティを見た。
いつも元気に溢れた彼女の姿からは正直想像できないことだったからだ。
「ま、そういうことなのじゃ」
それはどうでもいいことのように、パティはいつもの元気な笑みを浮かべた。
「じゃあ、アイフリードの孫ってのは、本当かどうかわからないってこと?」
「絶対、本当なのじゃ!」
レイヴンの問いに、パティはぐっと拳を握り締めてきっぱりと言い切る。
「・・・たぶん・・・」
だが、すぐに目を伏せて、やはり最後には曖昧な言葉をこぼした。
「ああっ、もおっ!絶対なのかたぶんなのかどっちよ!」
記憶がないからはっきりしないのは仕方がないが、
そうだとしても、パティ自身がアイフリードのことを祖父だと信じているのなら、
胸を張って言えばいいとリタは思っているのだろう。
曖昧なパティの言動に、リタは頭をかきながら苛立ちげに声を上げた。
「わかんないから、麗しの星(マリス・ステラ)を探してるのじゃ」
「つまり、記憶を取り戻すために、祖父さんかもれないアイフリードに会いたい。そのアイフリードを探し出すために麗しの星(マリス・ステラ)っていうお宝を探して回っている、ってことか?」
「のじゃ」
宝を求めて各地を巡っているパティの目的。
はじめは大海賊の宝を手に入れて冒険家として名を上げるためと話していたが、実のところは自分の家族を見つけるだめだったのだ。
「きっといつの日か祖父ちゃんに会えるのじゃ!」
そう言って、パティは笑った。
その笑顔にリリーティアは思わず息を詰まらせた。
胸を締め付けられるような感覚に襲われたが、リリーティアはその感覚を受け入れながらも、心の内では気のせいだと自分に何度も言い聞かせていた。
「それより、こんなところで悠長に話をしていてもいいの?」
「そうだった・・・!紅の小箱、取り返さなきゃ!」
ジュディスに本来の目的を指摘され、カロルははっと声を上げた。
首を傾げるパティに、闘技場で紅の小箱を奪われた状況を簡単に説明した。
すると、向かう方向が同じだからと言ってパティもついて行くという。
「・・・買い物に行くのとはわけが違うんだぞ?」
「承知のうえなのじゃ。何かあったら力になるぞ」
ユーリはそれ以上何も言わず、呆れたように肩をすくめると、その場を駆け出した。
リリーティアたちも急いでその後に続く。
そうして一行は、再びパティを加えて洞窟の奥へと進んでいった。