第4話 奇跡
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そして、再びクオイの森にやってきた一行。
パナシーアボトルの材料となるニアの実と、エッグベアの爪。
ニアの実は森によく落ちているものだからすぐに見つけられるだろう。
問題はエッグベアの爪だ。
凶暴な魔物で知られるエッグベアを倒して、その爪をとらないといけない。
「ねえ、疑問に思ってたんだけど、三人・・・ラピードもなんだけど、なんで魔導器(ブラスティア)持ってるの?」
ここでリリーティアたちと会った時、彼女らが武醒魔導器(ボーディブラスティア)を持っているのを見て驚いたのを思い出したからだろう。
森の中に入ってすぐのこと、カロルが突然聞いてきた。
「普通、武醒魔導器(ボーディブラスティア)なんて貴重品持ってないはずなんだけどな」
「カロルも持ってんじゃん」
「ボクはギルドに所属してるし、手に入れる機会はあるんだよ。魔導器(ブラスティア)発掘が専門のギルド、『遺構の門(ルーインズゲート)』のおかげで出物も増えたしね」
カロルがギルドの名を出した時、リリーティアは僅かに反応を示した。
だが、ユーリたちの誰もそれには気づかなかった。
「へえ、遺跡から魔導器(ブラスティア)掘り出してるギルドもあんのか」
「うん、そうでもしなきゃ<帝国>が牛耳る魔導器(ブラスティア)を個人で入手するなんて無理だよ」
「古代文明の遺産、魔導器(ブラスティア)は、有用性と共に危険性を持つため、<帝国>が使用を管理している、です。魔導器(ブラスティア)があれば危険な魔術を、誰でも使えるようになりますから無理もないことだと思います」
「やりすぎて独占になってるけどな」
「そ、それは・・・」
ユーリの鋭い指摘に言葉を詰まらせるエステルの横で、リリーティアもわずかに苦い表情を浮かべた。
それは昔から問題視されており、市民たちの不満要素の一つでもあるのは確かだ。
それこそギルドが興った所以でもある。
「で、実際のところどうなの?なんで、持ってんの?」
「オレ、昔騎士団にいたから、やめた餞別にもらったの。ラピードのは、前のご主人の形見だ」
「(・・・餞別じゃないよね)」
「餞別って、それ盗品なんじゃ」
リリーティアの思っていたことを代弁するかのように、疑いの目を向けてカロルが言う。
基本、騎士団を退団する際、魔導器(ブラスティア)は回収されることになっており、<帝国>側が餞別として貴重な魔導器(ブラスティア)を一介の青年に渡すわけがない。
明らかにカロルが言っていることは的を射ている。
「・・・えと、エステルは?」
「あ、わたしは・・・」
「貴族のお嬢様なんだから魔導器(ブラスティア)くらい持ってるって」
<帝国>の姫だと知っているユーリは、機転を利かしてうまく誤魔化してくれた。
確かに貴族ならば魔導器(ブラスティア)を所有していてもおかしくはない。
貴族に限らず、用途が認められ、尚且つ多額の金額を支払えば誰でも魔導器(ブラスティア)を所有することは出来るが、金額が金額なため、生活の支障なく多額の金額を払えるような市民となれば貴族のほかにいない。
「あ、やっぱり貴族なんだ。ユーリと違ってエステルには品があるもんね」
これまでのエステルの立ち振る舞い方を見ていて、彼女が貴族であるということにカロルは大いに納得したようだ。
<帝国>の姫であるから礼儀作法はきっちりとしており、貴族と言われれても疑う者はいないだろう。
「リリーティアは?」
「私は、魔道士でもあるし、騎士団にも所属しているから」
「え!リリーティアって騎士なの?!」
「リリーティアはお城で魔導器(ブラスティア)の研究をしながら、騎士としても活躍しているんですよ」
カロルは目を白黒させて驚いていた。
魔導士が騎士であるということにも気になったようだが、<帝国>の騎士がどうしてここにいるのかということが何より気になったようだ。
「こんなところで無駄話してねえで、さっさとニアの実、取りに行くぞ」
ユーリがぴしゃりと言って会話を終わらせると、一行は再びクオイの森の奥へと足を踏み入れた。
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「よし、ニアの実はこれでいいな」
ユーリは地面に転がっているニアの実を拾い上げる。
一行はエステルが倒れて一度休憩を入れたあの開けた場所まで来ていた。
「あとは、エッグベアの爪、だね」
「森の中を歩いて、エッグベアを探すんです?」
「それじゃ見つからないよ」
「なら、どうすんだ?」
「ニアの実ひとつ頂戴。エッグベアを誘い出すのに使うから。エッグベアはね、かなり変わった嗅覚の持ち主なんだ」
ユーリが投げたニアの実を受け取ると、カロルは鞄から何かを取り出した。
「あ・・・、ラ、ラピード、下がってたほうがいいよ」
「わふ?」
「いいから、早く」
鞄から取り出したものを見たリリーティアは、今からしようとしていることを察して、ラピードを急いで下がらせた。
ラピードは彼女の意図が読めず、訝しげにするも彼女の言葉に従う。
その時、カロルがニアの実を火を近づけて炙り始めた。
たちまちニアの実から煙があがり、辺りにはその煙が広がる。
と同時に強烈な匂いが充満した。
「くさっ!!おまえ、くさっ!」
「ちょ、ボクが臭いみたいに!」
ユーリが言うようにその臭いは尋常ではなく、言葉では言い表せられないほど酷いものだった。
「先に言っておいてください」
「これは、さすがに・・・」
あまりの異臭にリリーティアとエステルも鼻を押さえてカロルから離れた。
すると、リリーティアの後ろでどさっという音が聞こえた。
「ラピード!」
振り向くと、ラピードが倒れていて、リリーティアは慌てて駆け寄った。
こうなることを見込んで、彼女はラピードを慌てて下がらせたのだが、やはり距離をあけたぐらいではしのぐことはできなかったようだ。
「みんな警戒してね!いつ飛び出してきてもいいように。それにエッグベアは凶暴なことで有名だから」
「その凶暴な魔物の相手はカロル先生がやってくれるわけ?」
「やだな、当然でしょ。でも、ユーリも手伝ってよね」
「わたしもお手伝いします」
「じゃ、まあ、これでちょっと森の中、歩き回ってみっか」
一行はなんとも言えない異臭を漂わせながら、さらに森の奥へと進むことにした。
カロルが先頭で、少し距離をあけてユーリとエステルが、そのさらに後ろをリリーティアとラピードが進んでいった。
「ラピ-ド、あまり無理しないようにね」
「ワフゥ・・・」
隣にいるラピードにリリーティアは声をかけるが、まだ辛いようでその返答には覇気がない。
さっきよりは少しは慣れてきたが、人よりも嗅覚が鋭いラピードにはこの臭いは相当きついものだろう。
そうして、しばらく森の中を進んでいくと、茂みの中から獣の咆哮が響き渡った。
ガサガサと茂みから音が聞こえたと思うと、カロルはそそくさとユーリの背後に回った。
「き、気をつけて。ほ、本当に凶暴だから・・・!」
「そう言ってる張本人が、真っ先に隠れるなんて、いいご身分だな」
「エ、エースの見せ場は最後なの!」
次の瞬間、巨大な影が茂みから飛び出してきた
それと同時に、リリーティアは《ラウィスアルマ》を引き抜いた。
「うわああっ!」
「こ、これが、エッグベア・・・?」
エステルの問いに、こくこくと何度も頷くカロル。
「なるほど、カロル先生の鼻曲がり大作戦は成功ってわけか」
「へ、変な名前、勝手に付けないでよ!」
「そういうセリフは、しゃきっと立って言うもんだ」
ユーリは鞘から剣を抜き放つと、リリーティアと同じく臨戦態勢に入った。
「グワァアア!!」
エッグベアは雄叫びをあげながら突進してきた。
「アーラウェンティ!」
それを見たリリーティアは、すかさず風属性の下級魔術を放つ。
それでエッグベアの突進を抑えると、ユーリがその隙を狙ってエッグベアへ向かって走り出した。
ユーリが攻撃するも、エッグベアは少しも怯む様子もなく更なる雄叫びを上げた。
それから幾数分、エッグベアとの戦闘が続き、ユーリ、カロル、ラピードは前衛として、
エステルが後衛から回復を、リリーティアはその間に立って前衛で戦う彼らを魔術で援護していく。
そうして、凶暴で知られるエッグベアをそれほど苦戦することなく倒すことができたのであった。