第17話 闘技場
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ラピードはノードポリカを西へ走り続けていた。
時折振り返っては疲れを見せる一行たちを待ち、また走り続ける。
やがてラピードは山肌にぽっかりと口を開けている薄暗い洞窟の中に入った。
そこはノードポリカがある比較的穏やかな気候のザドラク半島部と
酷暑のゴゴール砂漠とを分け隔てる山脈を貫いている通り道、 ガドスの喉笛 と呼ばれる洞窟だった。
一行はその洞窟の中に入ると、少し先へと進んだ。
「見あたらないわね」
ぼんやりと明かりが広がる中を見回すリタ。
洞窟内は薄暗いが、岩には発光する鉱物が埋まり、道には光を放つ植物が咲いているおかげで光明魔導器(ルクスブラスティア)がなくても歩く分には困ることはなかった。
青白く光る鉱物はこの洞窟でしか見られないものだが、花びらが白く光る植物だけは、この大陸外にある洞窟でもよく見られるものである。
「じゃあ、これを抜けて山の向こうに逃げたってこと?」
「でも、ここの洞窟ってプテロプスっていう強い魔物が棲んでて危険なとこなんだって」
レイヴンが指で示した先は洞窟の奥へと続く道だった。
洞窟には魔物が棲みついているらしく、前にナンが言っていたとカロルは話す。
「ワン!」
そのとき、ラピードが急に駆け出し、岩陰に飛び込んだ。
「あわわわ・・・は、はなして、く、ください」
慌てた声が聞こえたかと思うと、服に噛み付いたラピードに引きずられてラーギィが現れた。
彼は岩陰に隠れてやり過ごすつもりだったらしいが、ラピードの鋭い嗅覚にはそれはかなわなかった。
「さて、話を聞かせてもらおうか。オレたちを闘技場に立たせてどうするつもりだったんだ」
ユーリは一歩前に出て、地面に座り込んでいるラーギィを問いただす。
「ししし、仕方ないですね」
ようやく観念したのか、ラーギィはゆっくりと立ち上がった。
すると、なんの仕草なのか、彼は手をひょいと挙げる。
「『海凶の爪(リヴァイアサンのツメ)』!?」
「なんでラーギィさんが!」
驚きに叫ぶエステルとカロル。
それが合図だったのか、突然、数人の赤眼たちが一行たちの前に現れたのである。
そして、声もなく襲い掛かってきた。
リリーティアたちはすぐさまそれぞれに武器を構え、戦闘態勢に入る。
薄暗い洞窟内はいつもよりも戦いにくかったが、それでも、たいして時間も掛からず全ての赤眼たちを退けることができた。
だが、その時にはすでにラーギィの姿はなく、さらに洞窟の奥へと逃げてしまっていた。
「『遺構の門(ルーインズゲート)』と『海凶の爪(リヴァイアサンのツメ)』はつながってたってところか」
なるほどなと納得して、ユーリは剣を鞘におさめる。
「手伝うふりをして、研究所のものかすめ取って横流ししてたのね・・・。許せない、あいつら・・・」
「正しいギルドで有名な『遺構の門(ルーインズゲート)』がそんな悪さをするなんて・・・」
「・・・・・・」
怒りに肩を震わせながら地に伏した赤眼たちを睨みつけるリタと、
『遺構の門(ルーインズゲート)』の事態を知ってさらに落胆するカロル。
はじめから二つのギルドのつながりを知っているリリーティアは、二人の言葉を飲み込んだ。
その横流しはギルドだけの話ではないのだということを、彼女は心の内で静かに思う。
「さっさと追いかけるわよ!」
「待って、危ないってば!さっきも言ったでしょ、危険な魔物が棲んでるって」
追いかけようとするリタをカロルが慌てて止める。
運よく魔物に遭遇しなければいいが、
強力な魔物がいるこの洞窟を通るにはそれなりに危険を覚悟で行く必要があった。
「あんなヤツに遺跡から出た大切な魔導器(ブラスティア)を好き勝手させないわ!あの箱も返してもらう!」
それでもリタはラーギィを追う気だった。
ぐっと拳を握り締め、一人でも行くと彼女はその足を踏み出す。
「わたしも行きます!」
エステルが声を上げた。
「何言ってんの!あんたは待ってなさい」
「待ちません!」
リタがいくら危険だと言っても、エステルは首を縦に振らない。
寧ろ危険だからこそ一緒に行くべきだと、頑なに一緒に行くと言い張った。
「はっは。こりゃ『凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)』としてはついて行かざるを得ないぜ」
「そうね。でも、きっとなんとかなるわ」
少し渋っていたカロルも、ユーリとジュディスの言葉にゆっくりと頷いた。
「・・・そうだね。エステルの護衛がボクたちの仕事だもん」
そして、何よりギルドは裏切りを許さない。
それが互いのギルドの掟でもあり、ギルドは掟を守ることが誇りなのだ。
その生き方に一番の誇りを持っているカロルは、危険な洞窟の中でもラーギィを追うことを決めたのだった。
「よし。ラピード、頼む」
「ワフッ!」
ユーリの言葉を聞くや否や、ラピードは矢のように駆け出した。