第17話 闘技場
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***********************************
ベリウスに会うため、闘技場へとやってきたリリーティアたち一行。
闘技場の中は大規模な広さで、入ってすぐに宿屋があった。
宿屋だけでなく、さらに奥へ進むと道具や武器を売っている店も並んでおり、闘技場だからといって武舞台があるだけというそんな簡単な施設造りではなかった。
毎日様々な戦いが繰り広げられている施設だからこその設備が十二分に備わっている。
その中には大勢の人が行き交い、闘技場の中だけあって武器を携えた屈強な者たちが多く見られた。
だが、そんな中にも闘技場の見物客らしい者たちもいて、闘技場の中だけでもその顔ぶれは様々だ。
何より、その熱気が凄かった。
自慢の腕を試す戦士たち、勝ち負けを賭ける見物人たち。
戦う者、そうでない者のすべての人たちが感情を高ぶらせ、闘技場という舞を楽しんでいる有様である。
中には賭けに負けて不機嫌に怒声を上げている者もいて、他の街では感じられない圧倒される賑やかさがあった。
「闘技場って、なんだかすごい所ですね」
エステルはいつも以上に目を輝かせて辺りを忙しなく見渡している。
闘技場というものが初めてのリリーティアも、これまでにない雰囲気に少々圧倒され、
物珍しげに闘技場内を見渡しながら歩いていた。
奥へと続く道を進み扉を潜ると、闘技場の受付広間に出た。
受付の人が声を上げて参加を呼びかけている所を見ると、まだまだ闘技場での戦いが開かれているらしい。
受付の者にベリウスの私室がある場所を尋ね、受付を抜けてさらに奥へ進むと、いくつが扉がある内の一箇所だけに一人の男が立っていた。
ひときわ体格の良い隻眼の男で、盛り上がった肩の筋肉はまさに生粋の戦士といった容姿である。
その扉の先だけ厳重に守っている様子から、重要な場所であることは違いない。
一行はその男の前に近寄った。
「なんだ、おまえたちは?この先は我が主、ベリウスの私室だ。立ち入りは控えてもらおう」
「ギルド、凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)だよ。ボクたちはそのベリウスさんに会いに来たんです」
カロルが答えると、目の前の男は怪訝な顔で一行たちの顔を見渡した。
「・・・聞かない名前だな。主との約束はあるか?我が主は約束のない者とは会わない」
「ドン・ホワイトホースの使いの者でも?」
レイヴンが懐から白い封筒を取り出して掲げると、途端に男の頬が引き締まった。
「これは失礼」
重厚な態度の男はナッツと名乗った。
ベリウス直属の部下で、統領(ドゥーチェ)代理も務めているという。
「我が主への用向きならば私が承ろう」
「すまないねぇ。一応、ベリウスさんに直接渡せってドンから言われてんだ」
「そうか・・・。しかしながら、ベリウス様は新月の晩にしか人に会われない。できれば、次の新月の晩に来てもらいたいのだが・・・」
ナッツは申し訳なさそうに巨体をすくめてみせる。
ベリウスは統領(ドゥーチェ)代理のナッツ以外の者には、月に一度、新月の晩にしか引見しないらしい。
「満月はつい最近だったし、新月はまだまだ先ね」
「・・・仕方ない、出直しますか」
空を仰ぐ仕草をしてジュディスが答えると、レイヴンはひとつため息をついた。
なぜ新月の時なのかとカロルは不思議げに首を傾げている。
「(新月の晩・・・、何か意味があるのだろうか・・・)」
リリーティアも内心不思議に思いながら、ひとり考えていた。
だが、当然その真意が分かるはずもない。
ギルドそれぞれに掟があるように、人それぞれにも考えた決まり事がある。
ならば、新月の晩にもう一度ここに来るしかないだろう。
「わざわざ悪かったな。ドンの使いの者が訪れたことは連絡しておこう」
「頼むわ」
手紙を懐に仕舞い込むと、レイヴンは踵を返して引き返し始めた。
リリーティアたちも彼の後に続く。
受付がある部屋から出ると、リリーティアたちはこれからどうするかを話し合った。
「じゃあ、今の内に砂漠の情報を集めてはどう?」
「フェローの情報もね」
「あたしはエアルクレーネの情報探したいんだけど」
新月の夜まで、かなりの日数がある。
それまで一行はそれぞれの目的のための情報を集めようかと話を進めていった。
見たところ、この闘技場の街には様々な顔ぶれの者たちが各地から集まってきている。
それだけ得られる情報も期待できそうであった。
「今日のところは、おっさん、先に宿行ってていい?」
今から街の中を見て回ってみようかと話し始めた時、レイヴンが不意に口を挟んだ。
ドンに経過報告の手紙を出すために、闘技場内にある宿に一足先に行っているという。
ユーリが一言頷くと、レイヴンは一行と別れて宿に向かって去っていった。
「じゃあ、あたしらも行こ」
そのすぐ後、リタの号令と共にリリーティアたちもその場から歩き出す。
各々の必要な情報を集めるのは明日からにして、今夜は街の様子を見て回ることにした一行は、闘技場を出て、街の中へと向かったのだった。