第1話 始動
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〈人魔戦争〉から十年が過ぎた。
”戦争”は世界各地に大きな爪痕を残したが、
長い時の中でその爪痕は可能な限り修復され、人々はようやく辛い記憶から立ち直りつつあった。
しかし、”戦争”の原因は相変わらず藪の中に隠されたままだった。
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空が仄かに明るくなり始めたが、まだ朝日が昇るには少し早い時間帯。
リリーティアは外が暗いうちから城の研究私室で実験資料をまとめていた。
薄暗い中で辺り一面に山積みとなっている資料を束ね、時にそれらの資料に何かを書き加えながら、室内に備え付けられた棚へと仕舞っていく。
そうして、朝日を迎えてしばらくたった頃。
室内にある資料を大方まとめ終わり、彼女が一息ついた時だった。
「リリーティア特別補佐」
室内の扉の脇に嵌め込まれた魔導器(ブラスティア)の装置から、彼女を呼ぶ声が響いた。
どうやら研究室の入り口を警備している騎士の声のようである。
リリーティアはその装置に近づくと、装置についてあるひとつのスイッチを押しながら応えた。
「なんでしょうか?」
「アレクセイ騎士団長閣下がお呼びです。急ぎの用事とのことです」
「わかりました。すぐに行きます」
踵を返し、椅子に掛けていた魔導服(ローブ)を手にとると、それを羽織りながら彼女は研究室を出た。
途中、研究室前で警備していた騎士に一言声をかけ、アレクセイがいる騎士団長の執務室へと向かう。
アレクセイの政策にとって、何かしら障害となるものが動き出したのか。
それとも、何かしらの成果が得られたのか。
そんな考えを巡らせながら、リリーティアは物悲しい雰囲気が漂った城の廊下を足早に歩いていった。