第16話 幽霊船
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***********************************
あれから一行は魚人の襲撃によって汚れた甲板を掃除していた。
カウフマンは仕事の話をするからと、彼女のボディガードと共に船室にいて、パティはまだ目を覚ましていない。
「・・・はぁ、もうへとへと~」
甲板の汚れを落とすために繰り返し容器(バケツ)に海水を汲んでいた手をとめ、レイヴンは大きくため息をついた。
「大丈夫ですか?」
「出発早々、これハードすぎない」
項垂れる彼にリリーティアはただ困った笑みを浮かべた。
「レイヴン、さぼんないでよね」
彼女の隣にいたカロルの言葉にレイヴンはさらに肩を落とした。
「とほほ・・・『凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)』はおっさんもこき使うのね。聖核(アパティア)探したりと、色々やることあるのに・・・」
「聖核(アパティア)? それっておとぎ話でしょ。あたしも、前に研究したけど、理論では実証されないってわかったわ」
リタが疑わしそうに言った。
確かに世間では聖核(アパティア)の存在は空想物だとされている。
リリーティア自身も昔はそうだと思っていた。
けれど----------、
「ま、おどぎ話だって言われてるのはおっさんも知ってるよ」
「どうしてそんなものを探すんです?」
エステルが首を傾げた。
----------それは実在するのだ。
だから、探し続けている。
「そりゃ・・・ドンに言われたからね」
「・・・・・・・・・」
空を仰ぐレイヴンにリリーティアは一瞥すると、静かにその目を伏せた。
それはドンだけじゃない。
あの人も、そして----------この私も。
ずっと探し続けているもの。
実際、そのいくつかはすでにあの人の手の中にある。
それでもまだまだ探し続けていた。
リリーティアは視線を上げると、海を眺めた。
太陽も西に傾き、空も海も茜色に染まりつつある。
「あ、パティ!」
「目が覚めたんですね!」
カロルのとエステルの声にはっとして、リリーティアも見ると、船室の扉の前にパティが立っていた。
「起きてきて大丈夫なのか」
「うむ!」
ユーリの言葉にパティは元気よく頷いた。
顔色もよく、歩いている姿を見ても調子が悪いというのは感じられない。
「一体、何があったんです?」
「お宝探して歩いてたら、海に落っこちて、魔物と遊んでたのじゃ」
ケーブ・モックでもそうだったが、相変わらず彼女は魔物と遊んでいる感覚でいたらしい。
「・・・よかったな。そのまま、栄養分にされなくて」
「快適な航海だったのじゃ」
魚人に飲まれても航海として捉える彼女に、ユーリたちは何も言うことはなかった。
それがパティという少女なのだと、皆が半ば諦めにも似た気持ちで、当たり前となりつつあるようだ。
魔物に襲われている中で、遊んでいるという感覚を持つ彼女だからこそ、
どんな危険な状況でも、たった一人で切り抜ける力を持っているのかもしれない。
「快適な航海だったにしても、リリィに礼は言っとけよ」
「うぬ?」
ユーリのその言葉に首を傾げるパティ。
飲み込まれた魚人から助け出し、手当てを施してくれたこと。
部屋まで運んで、その後も介抱してくれていたことを彼は説明した。
それを聞いたパティはリリーティアへと向き直ると、まさに彼女らしい愛らしさのある笑顔を浮かべた。
「ティア姐、ありがとうなのじゃ」
彼女の笑顔に一瞬戸惑ったが、リリーティアも同じように笑みを返した。
そして、パティもノードポリカまで一緒についていくということになった。
新たな地で宝探しをするのだという。
一行は思わぬ所でパティを加え、船の旅を続けるのだった。