第15話 解放
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一行はひとまず騎士団本部を出て、リタを連れて広場まで戻った。
今のところ騎士団からの追っ手がないようだ。
あそこにいた騎士はすべて気絶してしまったから、騒ぎになるのはもう少し後になるだろう。
「落ち着きました?」
「ええ・・・」
顔を覗き込むエステルにリタは頷く。
「それでリタはどうしてこんなところに?」
「ここの結界魔導器(シルトブラスティア)が気になったから、調査の前に見ておこうと思って寄ったの」
「で、余計なことに首を突っ込んだと。面倒な性格してんな」
リタがむっとしてユーリを睨んだ。
「一体、何に首を突っ込んだんです?」
「夜中こっそりと労働者キャンプに魔導器(ブラスティア)が運び込まれてたのよ」
リタがこの街に訪れたその日の夜更け。
彼女が結界魔導器(シルトブラスティア)を見ていた時だった。
数人の騎士たちが、木箱にたくさん積まれた魔導器(ブラスティア)を運んでいたのだという。
人目をはばかるように周りを警戒しながら。
「その時点でもう怪しいでしょ?」
「それでまさか、こそこそ調べまわってて捕まったってわけか」
「違うわ、忍びこんだのよ」
なぜか堂々と言い張るリタ。
「・・・で、捕まったんだ」
「だって、怪しい使い方されようとしてる魔導器(ブラスティア)ほっとけなかったから。そしたら、街の人が騎士に脅されて無理矢理働かされててさ」
リタの話に一行は顔を見合わせた。
彼女によると、いかにも具合の悪そうな人に対しても、ひどい扱いで強制的に働かせていたという。
また、非道な言葉をあびせ、体罰を与えている光景も目にしたというのだ。
「そんなの絶対に許せません」
エステルは胸の前でぎゅっと両の手を強く握り締める。
リタの話を聞いて誰よりも憤っていた。
「リタが見た、その魔導器(ブラスティア)の種類は何かわかる?」
リリーティアが聞く。
「兵装魔導器(ホブローブラスティア)だった。かき集めて戦う準備をしてるみたいよ」
「まさか・・・またダングレストを攻めるつもりなんじゃ!?」
カロルの顔色がさっと変わる。
バルボスがユニオンを潰すと言った時もそんなことはさせないと勇敢な姿を見せていたほど、故郷でもあり、憧れでもあるドンがつくり上げた街を心から大切に思っている。
ダングレストに危害を加えようとすることは誰よりも許せないことだろう。
「でも、どうして?友好協定が結ばれるって言うのに・・・」
「キュモールのことだ。きっとギルドとの約束なんて、屁とも思ってないぜ」
エステルの疑問に、ユーリがはき捨てるように言う。
彼の言うとおりだ。
それに、今ではキュモールだけの問題ではなくなっているだろう。
<帝国>全体がギルドへの友好協定を疑問視している時のはずだ。
あの時、ヘラクレスの存在を明らかにしてしまった。
ドンが<帝国>側に協定を結ぶ条件は”対等の立場での協定”。
あれだけの破壊力を持った兵装魔導器(ホブローブラスティア)を<帝国>側が持っていると知られた以上、すでに対等ではなくなった。
今回のことでギルド側が<帝国>への反感の念はさらに高まったはずだ。
そして、それと比例して<帝国>側もギルドへの反感の念を強く抱いているはず。
友好協定を結ぶこと自体が難しい状況下となってしまった。
「とにかく、今は早くティグルさんを助け出さなきゃ」
事情を知らないリタにノール港で会ったポリーの家族のことを説明すると、一行は改めてティグルの行方を探し出すために行動を起こそうと話し合う。
「それから強制労働を止めさせて、集めてる魔導器(ブラスティア)を捨てさせて・・・ええと・・・」
「魔導器(ブラスティア)は捨てちゃだめ。ちゃんと回収して管理しないと」
「じゃあ回収のためにアスピオの魔道士に連絡を・・・」
「待って、慎重に行こうってば・・・」
「でも・・・」
エステルだけは、あれやこれやと一人落ち着きがない。
一刻も早く労働者キャンプの実態を何とかしたいのだろうが、これではどれも収拾がつかなくなる。
「エステル、落ち着いて。とりあえず一つずつ片付けていこう。焦ってると、どれも上手くいかなくなるよ」
「は、はい」
穏やかな声音でリリーティアに宥められ、エステルは戸惑いながらも頷いた。
「それじゃあ、当初の予定通り-------」
「隠れて・・・!」
見張りがいないままの昇降機に向かおうとしたカロルの腕をリタが掴むと、結界魔導器(シルトブラスティア)の陰に勢いよく引っ張っていく。
リリーティアたちも急ぎそれに続いて、その身を潜めた。