第15話 解放
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しゃべる魔物、始祖の隷長(エンテレケイア)を探すために新たに旅をはじめた一行は、空が闇に覆われてしばらく経った頃、ヘリオードに到着した。
ここでは以前、結界魔導器(シルトブラスティア)の暴走があったが、エステルがそのあとの街の様子が気になるからと、その様子をうかがってみるのも含めて、今夜はヘリオードの宿で一晩休むことにした。
「なんだか・・・以前より閑散としてません?」
「ああ。なんか人が少なくなった気がするな」
街の門を抜けてから、不思議そうにきょろきょろと街の様子をうかがうエステル。
ユーリも訝しげに辺りを見渡している。
二人が話すように街の様子は以前と少し異なっていた。
街の中はすでに落ち着きを取り戻しているようだが、以前と比べてあまりに人影がまばらであった。
歩いているのはほんの僅かの行商人や旅行者だけのようで、もともと夜となると人の往来は少ない街ではあったが、それを踏まえても、今の時間帯にしてはあきらかに街の中は人気がなかった。
「ボク、その辺の人に聞いてくるよ!」
そう言って、カロルは元気よく走り出していった。
「張り切ってるわね」
「ユーリとギルドを作れたのがホントにうれしいんですね」
ジュディスとエステルが笑う。
「別にカロルのために作ったんじゃないけどな」とユーリが苦い笑いを浮かべてぼやいた。
ああは言っているものの、おそらく無関係っていうわけでもないのだろう。
そう思いながら、リリーティアも笑みを浮かべ、街の中へ駆け出していくカロルの背中を見詰めていた。
そうして街の入り口で待っていると、ほどなくしてカロルが息せき切って戻ってきた。
「何か分かりました?」
「本当か嘘かは知らないけどさ、最近、街の建設の仕事がキツくて逃げ出す人が増えてるんだって。それで人が少なくなってるのかも・・・」
カロルの話を聞きながら、ユーリはエステルの顔をじっと見た。
「ほっとけない」
「え?」
「って顔してるわね」
ユーリの言葉にエステルが目を瞬かせると、ジュディスも彼に続いて頷いた。
カロルの話にエステルはこの街で働く人たちのことが心配になったようだ。
「だったら、これから作戦会議だね。魔導器(ブラスティア)の様子も見に行かなきゃだし」
「だな。エステルのほっとけない病も出ちまったし」
「だって、ほっとけないじゃないですか」
「ふふ、そうだね」
訴えるような目でこちらを見てくるエステルに、リリーティアは苦笑しながら頷いた。
「ねえ、逃げ出すぐらいキツいことさせてるって、そこまでしてここの建設って急いでるの?」
「さぁなあ・・・」
ユーリたちが話している中、この時のリリーティアの心境は少し複雑であった。
エステルの気持ちはよく分かるし、実際、リリーティア自身も街の建設に関する現状を知ったからには、そのまま見て見ぬふりもしていられないところではある。
とはいえど、あまり関わりたくないという気持ちも確かにあった。
「この街を管理している方って誰なんです?」
エステルがリリーティアへと問う。
その答えこそ、この一件に対して彼女が思い煩っている理由であった。
「執政官代行であるキュモール隊長だよ」
「キュモールがねぇ・・・」
リリーティアの口から出た名前に、ユーリは何か言いたげな含みのある物言いだった。
「なに、ユーリの知ってる人?」
「おまえも前に一度会ってるだろ。カルボクラムで」
「ああ、・・・あのちょっと気持ち悪い喋り方する人だね」
カロルは苦い表情を浮かべて頬をかいた。
キュモールとひと悶着あったカルボクラムでの出来事を思い出したらしい。
確かにあの時のことを思えば、誰だってキュモールに対する印象はいいものではないだろう。
「ここで話し込むのもいいけれど、ひとまず宿に行ってはどう?」
街の入り口で話し込む一行にジュディスが言う。
「それもそうだな。時間も時間だし、明日になってから街ん中を見て回るか」
「じゃあ、宿屋に出発~」
今夜はひとまず話を打ち切ると、カロルの威勢のいい声に続いて、一行は街の宿に向かって歩き出したのだった。