第14話 決意
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夜もだいぶ更けた頃。
リリーティアは寝具から静かに体を起こした。
体を軽く伸ばすと寝具を軽く畳み、その場を歩き出す。
「ユーリ、交代」
焚き火の前で座っているユーリに声をかける。
「ん、ああ」
ユーリは軽く返事を返すと、焚き火の中に枝をひとつ投げ入れた。
ぱちぱちと音がなる。
「今日は休んでたらどうだ。だいぶ疲れてただろ」
リリーティアはユーリに目を瞠る。
そして、苦笑を浮かべると、焚き火の前に座った。
「もう大丈夫。十分休めたから」
「ほんとかよ」
ユーリはジト目でリリーティアを見る。
彼女の言葉に半ば呆れているようだ。
怪鳥からエステルを守ろうとした時に放った魔術によって、彼女は気力、体力共に大きく消耗していた。
けれど、そんなの様子を一切見せずにこれまで振舞っていた。
エステルを連れ戻そうとした時も、ここまで歩き続けた間も、何食わぬ素振りでいたのである。
心身共に疲れを感じながも。
どうやら、彼はそれに気づいていたらしい。
身を案じてくれたユーリに、リリーティアは苦笑を浮かべたままただ頷いて見せた。
実際、すでにその疲れはほとんど感じていなかった。
明日の --正確には今日-- の旅にも何ら支障はない。
ユーリはまだ少し疑っている様子ではあったが、やれやれと頭を振った。
「にしても、本当に連れ戻さなくていいのか?」
カロルが騎士団に戻らないリリーティアの身を案じていた時、彼は心配した様子をまったく見せなかったが、それでも少しは気にはしてくれているらしい。
「ありがとう、心配いらないよ」
ユーリは肩をすくめる。
「ま、エステルがあの調子じゃ、連れ戻すってこともできねえか」
「いいえ」
それは、エステルを連れ戻そうとした時のように、はっきりとした物言いだった。
「いくらでも城へ連れ戻す方法はある」
ユーリはすっと真剣な表情を浮かべた。
パチパチと焚き火の音と共に夜虫の音が辺りに響く。
「・・・・・・けど、そうはしないんだな」
「彼女は、彼女の意志で旅に出ることを選んだ」
リリーティアは揺らめく炎をずっと見詰めている。
「私も同じ。私は私の意志でここにいる。エステルが旅を続けたい。なら、私はそれを支える。ただそれだけのこと・・・」
ユーリはじっとリリーティアを見ていたが、しばらくして目を伏せると、口元にふっと笑みを浮かべた。
「そうか」
そう一言呟く。
そして、ユーリは膝に手をついて立ち上がると、
「ま、あんたと一戦交えるのも興味あったんだけどな」
にっと不適な笑みを作って、リリーティアを見下ろした。
「ふふ、それはまたの機会にってことで」
「そうすっかな。んじゃ、見張り番よろしくな」
「了解」
ユーリは背を向けると、軽く手を振って自分の寝床へと向かっていく。
リリーティアはしばらく彼の背を見てから、焚き火のほうへと視線を戻した。
彼女はユーリが横になるのを気配に感じながら、揺らめく炎を見詰め続けていた。