第3話 少年
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「ボクは、カロル・カペル!魔物を狩って世界を渡り歩く、ギルド『魔狩りの剣(マガリのツルギ)』の一員さ!」
落ち着きを取り戻した少年は、さっきまでの震えていた声とは打って変わって、はきはきと喋り始める。
とても子どもらしく、元気が有り余ってような威勢のいい声だ。
リリーティアはまじまじとその少年を見た。
『魔狩りの剣(マガリのツルギ)』というギルドは、彼女にとって初めて耳にするギルドだった。
「オレは、ユーリ。それにエステルとリリィ、そして、ラピードだ。んじゃ、そういうことで」
ユーリは自分たちの自己紹介を早々に済ませると、さっさと森の出口に向かって歩き出した。
ラピードも当たり前にように彼についていっている。
「あ、え?ちょっとユーリ!えと、ごめんなさい」
エステルは戸惑いつつも律儀に少年に頭を下げてユーリを急いで追いかける。
リリーティアはどうしたものかとカロルという少年へ、一度視線を向けた。
少年はキョトンとして去っていくユーリたちを見ている。
「へっ?・・・って、わ~、待って待って待って!!」
カロルは我に返ると、この上ない慌てっぷりを見せた。
先を進んでいたユーリたちは足を止めて少年に振り向いた。
「三人は森に入りたくてここに来たんでしょ?なら、ボクが・・・」
「いえ、わたしたち、森を抜けてここまできたんです。今から花の街ハルルに行きます」
「へ?うそ!?呪いの森を?」
カロルは驚いてリリーティアたちを見た。
呪いが魔導器(ブラスティア)によるものだとは知らないのだから、彼がそう驚くのも無理はない。
「あ、なら、エッグベア見なかった?」
「ユーリ、知ってます?」
「さあ。リリィ、見たか?」
ユーリの問いにリリーティアは首を横に振った。
「私たちは見てないよ。エッグベアは大きな体をした獣型の魔物で、近くにいたらすぐにわかるはずだから」
「そっか・・・。なら、ボクも街に戻ろうかな・・・?あんまり待たせると、絶対に怒るし・・・うん、よし!」
カロルは、最後はぶつぶつと大きな声で独り言を言っていた。
その独り言から誰かと一緒に行動していることは推測できた。
おそらく、ギルドの仲間といったところだろう。
「三人だけじゃ心配だから、『魔狩りの剣(マガリのツルギ)』のエースであるボクが街まで一緒にいってあげるよ。ほらほら、なんたってボクは、魔導器(ブラスティア)だって持ってるんだよ!」
カロルは肩にかけた、自分の体と同じぐらいにある大きな鞄を体の前に出した。
意気揚々に言うカロルに、エステルとユーリは顔を見合わせる。
その時、その二人の腕についた魔導器(ブラスティア)に気づいたカロルがその目を大きく見開いた。
そして、リリーティアのほうへ視線を向けたカロルに彼女は苦笑を浮かべると、自分の足元に視線を落とす。
カロルもそれにならって彼女の足元を見ると、足元につけている彼女の魔導器(ブラスティア)にも驚きの表情を浮かべた。
「あ、あれ、みんななんで魔導器(ブラスティア)持ってるの!」
「ま、あれだな、エースの腕前も、剣が折れてちゃ披露できねえな」
「いやだなあ。こんなのハンデだよ」
ユーリに折られて地面に落としたままだった剣をカロルは拾い上げた。
「あれ?なんかいい感じ?」
剣が折れたことで、カロルの体の大きさにちょうどいい重さになったようで、何度もその剣を振ってみせた。
そんなカロルを横目に、ユーリとラピードは何も言わずに再びその先へと進み出した。
エステルもユーリについて歩き出したのだが、カロルはそれに気づかず剣を何度も振り下ろしている。
リリーティアは困ったような笑みを浮かべ、意気揚々と剣を振り下ろしている彼に声を掛けた。
「みんな、いっちゃったよ」
その声にカロルははっとして、リリーティアが指差す方を見る。
「ちょ、あ、方向わかってんの~?ハルルは森出て北の方だよ。もぉ、置いてかないでよ~」
カロルは叫びながら、去っていくユーリたちを追いかけた。
リリーティアはその背を見詰めながら小さく笑い声をもらした。
「(なんだか、おかしな旅になってきたな)」
ユーリたちの背を見詰めながら心の中で呟く。
そして、彼女も足早にユーリたちの後を追いかけた。
新たな旅の道連れとなったカロルというギルドに属する少年を加えて、一行は無事に呪いの森を抜けたのだった。
第3話 少年 -終-