第14話 決意
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一行はガスファロストからダングレストまで戻ってきた。
街の中に入って橋を渡ると、その先に大勢の騎士たちが集まっているのが見えた。
その中心にはラゴウがいる。
「私は無実です!これは評議会を潰さんとする騎士団の陰謀です!」
ラゴウは大声で叫んでいた。
それは周りにいる騎士団に対してだけでなく、この街に住むギルドの人間たちにもわざと聞こえるように言っているようである。
「まだ言ってるわ。ほんと、往生際の悪いじいさん」
リタがほとほと呆れた様子でそれを見る。
ラゴウは騎士団に取り囲まれ移動しているところだった。
ダングレスト内で軟禁状態にあったラゴウを騎士団の野営地へと連行している道中のようだ。
一行はラゴウを取り囲む騎士団たちに近寄った。
「騎士団を信じてはいけません!彼らはあなたたちを安心させたうえでこの街を潰そうとしているのです!」
ラゴウは何度もその足を止め、叫ぶ。
挙句には、ラゴウは騎士団の不信を訴え、ギルドの人たちを煽ろうとしていた。
「我らは騎士団の名の下に、そのような不実なことをしないと誓います」
大勢の騎士団員の中から、毅然とした声が響いた。
「あなたは、フレン・シーフォ!」
そこにはフレンがいた。
ラゴウは忌々しげにその名を呼ぶ。
「<帝国>とユニオンの間に友好協定が結ばれることになりました」
「な!そんな、バカな・・・」
ラゴウは信じられなといった様子で驚きに目を見開く。
「今ドン・ホワイトホースとヨーデル様の間で話し合いがもたれています。正式な調印も時間の問題でしょう」
「どうして・・・・・・アレクセイめは今、別時で身動きが取れぬはず」
「確かに。騎士団長はこちらの方に顔を出された後、すぐに<帝国>に戻られました」
「では・・・誰の指示で・・・」
ラゴウは訝しくフレンを見る。
フレンは何も言わず、変わりにその表情には笑みをたたえていた。
「くっ・・・まさかこんな若造にも」
その笑みに含まれた意味を理解し、ラゴウは憎たらしげにフレンを睨み見る。
つまりはフレンの指示のもとに、<帝国>とユニオンの友好協定が早急に進められたということだ。
友好協定と簡単に言っても、実際にその話し合いの場まで準備するにはそれなりに時間がかかるもの。
長年、相容れない者同士であった<帝国>とユニオン。
その分だけ事を運ぶには時間がかかる。
それを騎士団のトップではなく、一介の小隊長であるフレンの手腕によって円滑に事が運ばれた。
ラゴウにとっては大きな誤算であっただろう。
騎士団長のアレクセイさえ動けなければ、そう簡単に事が運ぶわけがないと高をくくっていたのだ。
「これでカプワ・ノールの人々も圧政から開放されますね」
エステルはとても嬉しげに隣にいるリリーティアへと笑みを浮かべた。
誰よりも<帝国>の圧政に心を痛んでいた彼女にとって、それはとても喜ぶべきことだった。
「・・・・・・・・・」
喜んでいるエステルの視線を感じながらもリリーティアはただじっとラゴウを見据えていた。
エステルは何も反応を示さない彼女に首を傾げる。
「リリーティア・・・?」
「そうだね」
だが、すぐに彼女はエステルに微笑みかけて頷いた。
「次はまともな執政官が来りゃいいんだがな」
「いい人が選ばれるように、お城に戻ったら掛け合ってみます」
「お城にって・・・エステル、帝都へ帰っちゃうの?」
カロルは驚きを含めた声音でエステルを見る。
その言葉に彼女は少し黙り込んで何か考えた後、その口を開いた。
「・・・はい。ラゴウが捕まって、もうお城の中も安全でしょうから」
その表情はどこか沈んでいるように見えた。
「ホントは帰りたくない」
「え?」
ユーリの言葉にエステルは驚く。
図星をつかれた。
まさにそんな表情だった。
「って、顔してる」
「そんなこと、ないです・・・」
苦笑を浮かべるユーリに彼女は俯いて彼から目を逸らす。
「ま、好きにすりゃいいさ。自分で決めたんだろ」
「・・・・・・帰ります。これ以上、リリーティアやフレン、他の方々を心配させないように・・・」
しばらく考え、エステルは顔をあげると、はっきりと言った。
しかし、どう見てもその言葉とは裏腹なものが彼女の心の中にはある。
リリーティアにはそう見えた。
実際にそうなのだろう。
きっと、まだ帝都に帰りたくないのだ。
「それじゃあ、リリーティアもってこと?」
「ええ」
残念そうな表情を浮かべるカロルにリリーティアは頷いた。
エステルが帝都に帰ると決めたならば、護衛としてついているリリーティアももちろん帰ることになる。
彼らと同行する意味はなくなるのだから。
「寂しくなるな、ラピード」
その言葉にラピードは鳴き声をあげることはなかったが顔を上げて反応を示した。
ラピードも主人の言葉に同調しているようだ。
リリーティアは騎士団とラゴウがいる方へと視線を移した。
ラゴウはまだ何かを言っているようだが、騎士団に腕を掴まれて連行されていく。
ユーリたちがこれからのことを話し合っている中、彼女だけはじっとそれを遠くに見詰め続けていた。