第13話 楼閣
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「ごはっ!・・・そんな・・・馬鹿な・・・」
ガスファロストの頂上で、苦しげな声が響き渡る。
それはバルボスだった。
「・・・もう部下はいない。器がしれたな。分をわきまえないバカはあんたってことだ」
剣を手にしているユーリが言う。
彼の後ろには、リリーティアたちがそれぞれの武器を手に立っていた。
そんな一行たちのさらに後ろには、あちらこちらに多く傭兵たちが倒れている。
微かにうめき声をもらす者もいるが、その者もしばらくは立ち上がれそうにもなく、そこに倒れているほどんどの者が完全に意識を失っていた。
ユーリの言うとおり、もうバルボスの部下はいないと言って同然だった。
あれからリリーティアたちは力を合わせて応戦し、すべての傭兵たちを倒した。
ちょうどその頃、ユーリとバルボスとの戦いも終わりに近づいていた。
バルボスの体はボロボロに傷つき、額に汗を滲ませながら立っているのがやっとといった状態である。
今や『紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』の戦力は傷ついた首領(ボス)一人だけ。
すでに勝敗はついたと言ってよかった。
「ぐっ・・・ハハハっ。な、なるほど、どうやらその様だ」
バルボス自身も今置かれている状況を見て、己の負けを悟ったようだ。
「ではおとなしく-------」
「こ、これ以上、無様をさらすつもりはない」
エステルの言葉を遮り、苦しげな息を吐きながらもバルボスは続ける。
その言動に、リリーティアはある予感がした。
「・・・ユーリ、とか言ったな?おまえは若い頃のドン・ホワイトホースに似ている・・・そっくりだ」
そう言いながら、バルボスは一歩後ろに下がる。
その予感を阻止するには、今すぐにでも行動を起こすべきたがリリーティアは動かなった。
あえて、動かなかった。
「オレがあんなじいさんになるってか。ぞっとしない話だな」
「ああ、貴様はいずれ世界に大きな敵を作る。あのドンのように」
バルボスは不敵な笑みを浮かべ、また一歩下がる。
なぜなら、もしその予感が当たっているとしたならば----------、
「・・・そして世界に食い潰される」
バルボスはさらに一歩下がる。
-------私にとって都合がいいからだ。
「悔やみ、嘆き、絶望した貴様がやってくるのを先に地獄で待つ事にしよう」
その言葉を最後に、バルボスはすっと後ろへと倒れこんだ。
一瞬、リリーティアの表情が
その後ろは足場のない闇が広がる、奈落の底。
「ちっ・・・!」
ユーリはバルボスの行動の意図に気づき舌打ちすると、その場を駆け出す。
エステルも気づいたようで、慌てて彼に続いた。
バルボスはこの塔の頂上からその身を投げ出したのである。
この高さからのバルボスの行為。
すなわち、それは----------自決だった。
消えたは駆け出すユーリとエステルの背を遠くに見ながら、バルボスがその視界から消えるのをただ見ていた。
バルボスがとった行動に、戸惑い、驚き、悔しがり、
それぞれに何かしらの普段と違った表情を浮かべる中、
ただ彼女だけは何もなく、そこに佇んでいた。
そして、バルボスがいなくなった頂上で、彼女は心の内でこう呟いた。
----------あと、ひとつ。