第13話 楼閣
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楼閣、ガスファロストの内部は薄暗く迷路のようだ。
そこら中で大人ひとり程もある大きな歯車がいくつも噛み合い、音を立てて回っている。
あまりの騒音に場所によっては会話もできない。
この騒音の中では敵を察知するのも難しいものであったが、幸いラピードの嗅覚が頼りとなって、その存在をいち早く察知できた。
そうして先へとどんどん進み、比較的静かな階に上った時、一行はほっと息をついた。
大鐘の中のような騒音は意外と心身を圧迫するのである。
「あんたも槍使うのね・・・」
リタはふと、ジュディスの手元に注目して言った。
その声はどこか忌々しげな響きがある。
「ってことは、誰かあなたのお友達も使っているのかしら?」
ジュディスが首をかしげて聞くと、リタは視線を逸らし不機嫌な表情を浮かべた。
「そういうわけじゃないわ、ちょっとイヤな奴思い出しただけ」
「それって、もしかして、あの竜使い?」
「まあね・・・」
カロルの問いにリタはぶっきらぼうに答えると、ユーリに詰め寄った。
「・・・そう言えば、ちょっとあんた」
「え、オレ?」
「そう。肝心のバカドラはどこ行ったの?」
「屋上ではぐれてな。無事だとは思うけど・・・」
「無事でいてくれないと殴れないじゃない!」
ガスファロストに来るまでの間も竜使いに対して何かと怒りを口にしていたリタ。
この様子だと、ほんとうに一度殴らないと気が済まないようだ。
「おいおい、本当にそれが目的でここまで来ちゃったの?」
「あと、あのバルボスって奴が許せないの!魔導器(ブラスティア)に無茶させて、可哀想じゃない!」
リタは顔の前でぐっと拳を握り締める。
彼女の言葉に胸の奥が鈍く疼くのを感じたが、リリーティアはいつもの表情を保ってそこにいた。
「だからってそっちのお姫様まで連れてくるかね。こんな危険なところにさ。リリィ、おまえも止めなかったのかよ」
ユーリは、リリーティアに責めるような視線を向ける。
だからといって、本気で彼女を責めているわけではない。
そのことは彼女自身も分かっている。
ただ、呆れてはいるようではあるが。
「彼女は誰よりもあなたのこと心配していたんだよ。それに、何を言っても、どのみちエステルはあなたを追いかけて行ったと思うから」
「って言ってもなぁ・・・」
ユーリは深いため息をついた。
「リタもリリーティアも悪くありません。自分から行くって無理を言ったんです。 ユーリひとりで行かせたままなんてできません。それに人々に害をなす悪人を放っておくわけにはいきません」
「そうよね。あなたいいこと言うわ」
きっぱりと言い切るエステルの言葉に、ジュディスは感心した様子で深く頷いた。
「ま、ここまで来たならしょうがねえか」
ユーリはやれやれと諦めたように言葉を呟くと、カロルへと視線を向ける。
「カロル先生、頼りにしてるぜ。貴重な戦力だからな」
「うん、もちろん!さあ、この調子で行こう!」
カロルは意気揚々と腕を振り上げると、元気よく足をあげて、まだまだ上へと続いている階段を上っていく。
さっきまでは、何段も続く階段に、少し疲れた色を見せていたカロル。
それが今では嘘のように元気いっぱいだった。
それを見越して、ユーリはカロルに期待する言葉を投げたのかもしれない。
どんどん先へと進むカロルにリリーティアは微かな笑みを浮かべると、カロルの後に続いた。
皆が先へと進む中、ユーリとジュディスだけが後方でなにやら会話を交わしていたのだが、リリーティアだけでなく、他の誰もがそのことに気付くことはなかった。