第12話 黒幕
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どれぐらいそうしていたのか。
リリーティアはおもむろにその場から立ち上がった。
物陰から出て、一歩一歩ゆっくりと歩き出す。
そして、壁際に倒れている黒い影の前に立った。
----------7人目。
瞬間、腕と足に激しい痛みを感じて、リリーティアは微かに唸り声をもらす。
彼女は《レウィスアルマ》を手に持つことなく、足元につけた魔導器(ブラスティア)に意識を向けた。
「優しき光 ルーチェテネーラ」
白い光に包まれ、少し痛みが引いていくのを感じた。
だが、太腿に受けた傷は深かった為、完全に治癒はできなかった。
それでも構うことなく彼女は踵を返すと、転がり落ちている片方の愛用の武器を拾い上げて鞘におさめた。
そして、弾き飛ばされた短剣へと歩みを進めると、立ち止まってそれを見る。
刃は朱黒く汚れながらも、そこから覗く銀(しろがね)は月光に照らされ鈍く輝いていた。
彼女はそれを拾い上げようと、左手を伸ばそうとして、止めた。
その掌(てのひら)を見る。
一筋の朱(あか)が伸びていた。
それを見た彼女はため息を吐くと、右の手でその短剣を拾う。
鞘におさめることはせずに、彼女はガラクタが積まれた木箱の前まで歩くと、それを覆う布きれを奪うように手に取る。
それで、短剣の刃と自身の左手の汚れを拭った。
短剣を鞘におさめると、近くに伏した赤眼を見やる。
しばらくじっと見下ろしていると、
「・・・・・・潰されるのはどっちだろうな」
彼女は低い声で呟いた。
そこには表情もなく、伏した赤眼をその瞳に捉えている。
いや、違う。
彼女はそもそも赤眼など見ていなかった。
その瞳の奥に捉えているのは、不気味にほくそ笑むラゴウの姿だった。
宵闇の空。
変わらずそこにあるのは、満ちた月。
月の光は彼女を優しく照らしている。
夜風が彼女の体を包み込み、髪飾りが小さく揺れた。