第12話 黒幕
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「もうっ!あたしたちも追いかけるわよ!あのバカドラ、絶対に逃がさないんだから!」
「追いかけるって、場所分かってんの!?」
リタがいきりたって叫ぶと、一階に降りる階段へと向かって駆け出す。
カロルが慌ててリタを追いかけた。
その時、取り残されたバルボスの部下たちが一階へ続く階段の前に立ちはだかり、武器を向けてきた。
「あんたら!まだあたしたちに歯向かう気!」
自分たちの首領(ボス)に置いて行かれたにも拘わらず、最後までリリーティアたちに歯向かうつもりのようだ。
しかし、すでに彼らの仲間の数は三人しかいない。
ユーリがひとり抜けたからといって、どう見てもその数では自分たちを相手にすることはできないだろう。
「無駄なことはやめたらどうよ。もうおたくらのギルドは解体されるんだからさ」
レイヴンはやれやれといった様子だ。
その時、一階から騒がしい声と足音が聞こえてきた。
この酒場の前で見張りをしていたバルボスの部下たちがここへと向かってきているようだった。
いつのまにか誰かが増援を呼んだのだろう。
「(これ以上の面倒事はごめんだ!)」
増援が来ることを知ったかみたか、リリーティアはすぐに動いた。
愛用の武器を手に一番近くにいたバルボスの部下に向かって駆け出した。
その部下はとっさのことで反応が遅れ、リリーティアは《レウィスアルマ》を胴体の急所に叩き込み、相手を一撃で卒倒させた。
相手が床に倒れぬうちに、彼女は次の相手に向かって走る。
「このやろっ!」
次の相手は湾曲の剣を手に彼女へ向かって振りかざした。
相手の攻撃に彼女はさっと横へ避けると、背後へと回り込む。
「リリーティア、後ろから!」
その時、エステルの声が聞こえた。
リリーティアの背後を狙って、両手に短剣を持った男がその武器を振りかざしていたのだ。
だが、エステルの声が聞こえているにも拘わらず、リリーティアアは後ろには目もくれなかった。
目の前の相手に集中したまま、首元を武器で打ち込んだ。
それと同時に、彼女を狙って振りかざしていた男の腕に矢が突き刺さる。
それはレイヴンが放った矢だった。
リリーティアが背後の男に目もくれなかったのは、彼の行動をはじめから読んでいたからだった。
突然の腕の痛みに、動きが鈍った背後の男。
彼女は振り向きざまにその男の顔に武器を叩き込んだ。
その男が倒れた瞬間、増援であるバルボスの部下たちが階段から続々と現れたが、
彼女はその増援の部下たちに鋭い目を向けると、一瞬の躊躇さえ見せずにだっとそこに向かって駆け出した。
「てめぇ、よくもやってくれたな!」
仲間が倒れているのを見て、増援に来た仲間の一人が叫ぶ。
そして、ガタイの大きいその男は斧を構えてリリーティアへと突撃してきた。
男は太い腕っ節を以て斧を振り下ろす。
彼女は足を止めると、さっと後ろに飛んでそれを避けた。
標的を逃した斧は床板へと激しい音をたてて突き刺さる。
だが、深く床に突き刺さりながらも男はすぐに軽々と斧を頭上へと振り上げ、またも彼女目掛けて斧を振り下ろした。
しかし、その斧は振り下ろされきることはなく、金属の甲高い音が鳴り響いて受け止められた。
「お嬢さんひとりにちょっとそれは物騒すぎるんじゃない?」
それを受け止めたのはレイヴンだった。
弓から剣へと変形させて、男の懐に飛び込むとその斧を受け止めたのである。
彼は懐の中でにっと不敵に笑ってみせた。
「な!?」
突然現れたレイヴンに驚いていると、横からさっと影がさす。
男ははっとして顔を向けようとしたその時、後ろの首元に激しい痛みを感じた。
一瞬後、腹部にも激しい痛みが襲う。
首と腹部を襲った痛みによって男の意識はすぐに闇に落ち、どさっと音をたてて床に伏した。
男の身に起きたこと、それは、彼に気をとれているい間にリリーティアが首元を、そして、彼女に気を取られた隙にレイヴンが腹部を強く叩きつけたのである。
その後も、リリーティアとレイヴンは階段を駆け上ってくるバルボスの部下たちを次々に倒していった。
二人の動きは共に俊敏で、一切の無駄がなかった。
それはまるで示し合わせたかのように、立ち替わり入れ替わりに互いに攻撃を繰り出し、
相手に一瞬の隙も与えず、一人一人確実に気絶させていったのだった。
「これでいっちょあがり♪」
レイヴンが軽い調子で言った。
最後の一人だったバルボスの部下が倒れ、部屋は静寂に包まれる。
だが、すぐに部屋の外からは、未だに騎士たちの大歓声が響いているのに気付いた。
それからも分かるように、バルボスの部下との戦いが始まってからほとんど時間が経っていなかったのだ。
リリーティアとレイヴン、二人がバルボスの部下をすべて倒したのは、あっという間に起きた出来事であった。