第12話 黒幕
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レイヴンを先頭に扉の先を潜ると、すぐ先に階段が下に伸びているのが見える。
扉を閉めると、一瞬にしてあたりは闇に覆われた。
「うわぁ・・・真っ暗です・・・」
エステルは辺りを見渡すがほとんど何も見えなかった。
扉の隙間から差す光でなんとなく傍に仲間がいることだけはわかるが、この先に続く道は深い暗闇に覆われている。
「迷子になって永遠に出られねぇってのは勘弁だぜ」
「あれ、なんか明るく・・・?」
カロルがきょんとする。
突然、一行のまわりが仄かに照らされたのだ。
「それ、光照魔導器(ルクスブラスティア)ね」
リタが指差す。
リリーティアの手に持っているものが光輝いていたのだ。
それは、エアルを充填することで光を発することができる光照魔導器(ルクスブラスティア)だった。
「お、さすがリリィちゃん。用意周到だね」
「でも、携帯用の小さなものなので、この人数での行動だと不便ですね。できればもうひとつ照明範囲の広い光照魔導器(ルクスブラスティア)があればいいのですが・・・・・・」
リリーティアが常時持っている光照魔導器(ルクスブラスティア)は、手のひらサイズの小さなものだった。
辺りを照らし出していると言っても照明範囲は狭く、光照魔導器(ルクスブラスティア)から少しでも離れると視界が悪くなる。
「ワン!」
その時、ラピードが暗闇の中に何かを見つけて吠えた。
リリーティアはラピードの傍に寄り、そこに光を当ててみた。
リタも彼女の傍に近づいて覗き見る。
「・・・これ魔導器(ブラスティア)だわ」
リタが言うように、そこにはいくつかの魔導器(ブラスティア)が無造作に置いてあった。
<帝国>がギルドに占領した当時に、この地下水道で使われていたものなのだろう。
とても古いものだった。
「だいぶ傷んでいるけどなんとか使えそう、リタお願いできる?」
「任せておいて」
拾ったその魔導器(ブラスティア)をリリーティアはリタに手渡す。
リタはリリーティアが照らしてくれる光照魔導器(ルクスブラスティア)の光をたよりに、その魔導器(ブラスティア)を何度か弄る。
するとその魔導器(ブラスティア)が光を放ち、たちまち一行の周りが明るく照らされた。
「わ、ちょっと爆発したりしない?大丈夫!?」
リリーティアが持っているものとは違って強く輝くそれに目が慣れず、その眩しさのあまりカロルは手で顔を覆う。
「するわけないでしょ。これ光照魔導器(ルクスブラスティア)の一種よ」
「さすがです、リタ!」
「でも、かなりガタがきてるみたいだから、多分、長持ちはしないと思うわ」
「じゃあ、こいつが光っているうちにとっとと行こうぜ」
一行は闇に続く階段を降りて、光照魔導器(ルクスブラスティア)の光で辺りを照らしながら先へと進んだ。
地下水道の中は水路を流れる微かな水の音と、時折水滴が滴る音が響くだけで、騒がしい地上とはうってかわっての静けさに包まれている。
しかし、ずっと日も当たらない地下水道はカビ臭く、あまり長居はしたくないような場所であった。
「ま、魔物・・・!」
少し進むと、カロルが水路を覗き見て叫んだ。
そこには数体の魔物が水の中を漂っていた。
「・・・襲って・・・来ませんね」
エステルは戸惑う。
しばらくしても、いっこうにその魔物たちは襲ってこず、そこを漂っているだけであった。
「もしかして、ボクたちが油断するのを待ってる、とか?」
「魔物にそんな知恵あるもんなの?」
「たぶん、ここにいる魔物たちは光が苦手なんだと思う」
「そんなのがいるのか?」
「洞窟や海底といった暗い場所に棲息する生物の中には、光に対する耐性がなくなり、強い刺激として避けるものがいる、ですね?」
「ええ」
本の中で知り得たエステルの説明にリリーティアは頷く。
本当に彼女はなんでも知っている。
「そっか・・・だから、光照魔導器(ルクスブラスティア)でボクたちの周りは明るいから襲ってこないんだね」
「なるほどねえ」
「んじゃ、無理にことを構える必要はねぇな」
「ワン!」
光照魔導器(ルクスブラスティア)を持っている以上、この場所では戦闘になることはないだろう。
もちろん、だからといって油断は禁物ではある。
それから一行は、水路の中に漂う魔物に注意しながらも、さらに地下道を進んでいった。