第12話 黒幕
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*************************************
レイヴンに連れられるまま街の中を進んでいくと、ある一軒の酒場に入った。
さっきの酒場とは反対方面にあるもう1つの酒場。
「(ここは、あの時の・・・)」
そこは一度だけ、リリーティアも来たことがある酒場だった。
それはレイヴンと共にドンとお酒を交わした場所であったのだ。
以前来た時よりも随分と店の中は静かである。
<帝国>と戦争を始めようとしているこの現状では、酒場に通う客がいないのは当然のことだろう。
そんなことをしている場合ではないのだから。
「ちょいと通してもらうよ」
酒場の奥にある部屋。
その入口で見張りをしているドンの部下らしき男に軽い口調で言うと、レイブンの顔を見るや男はすぐに頷き、すんなりと中へ通してくれた。
「なんだ、ここは」
「ドンが偉い客迎えて、お酒飲みながら秘密のお話するところよ」
「ここでおとなしく飲んでろってのか?」
ユーリはまたも疑惑の目でレイヴンを見る。
「おたくのお友達が本物の書状持って戻ってくれば、とりあえず事は丸く収まるのよね」
「悪いけど、フレンひとりにいい格好させとくわけにゃいかないんでね」
「わたしたち、この騒ぎの犯人を突き止めなければならないんです!」
彼らの会話を聞きながら、リリーティアは部屋を見渡していた。
皆が今回の騒動に急いている中、ただ彼女だけは懐かしいなとひとり悠長なことを考えていた。
「まあまあ、急いては事を仕損じる♪」
そう陽気に言うと、レイヴンは部屋の奥の壁に歩み寄る。
その壁には『天を射る矢(アルトスク)』の紋章が描かれた旗が掛けられていた。
彼はその旗をかきわけるようにして持ち上げると、一行に視線を向ける。
はじめ彼が何をしているのかわからなかったが、旗の下からあらわになった壁をじっと見ていて、リリーティアは彼が言わんとしていることに気づいた。
「扉、ですか?」
その部分は木の板でできているのだが、よく見ると扉のように見えた。
「この街の地下には複雑な地下水路が張り巡らされている。その昔、街が<帝国>に占領された時、ギルドはその地下水道に潜伏して、反撃の機会をうかがったんだと」
リリーティアの問いには直接的に答えず、レイヴンはなにやら説明した。
「まさか・・・ここはその地下水道につながってる・・・とか言わないよね」
「そのまさかよ。で、ここからこっそり連中の足元に忍び込めるって寸法なわけよ」
恐る恐る聞くカロルに、レイヴンはあっけらかんとして答えた。
この街にそんな場所があったことや、この部屋にそんな通路があったこに、リリーティアは少し驚いた。
何より昔起きた、<帝国>とギルドの戦争時のことは書物などで知っていたが、占領してきた<帝国>を退けたギルドの勝因の裏にそんな事実があったことは初めて知った。
「ちゃちゃっと忍び込んで奴らふん捕まえる。回り道だが、それが確実ってことか」
「そういうこと。信じてよかったでしょ?」
「まだよかったどうかは行ってみたいとわかんねぇな」
「やっぱおっさんは信用ならない?」
ユーリは未だにレイヴンのことを少しばかり疑っているようだ。
彼が教えてくれた道は地下水道という暗く危険な場所であるため警戒するのも無理はない。
「当然、おっさんも付き合ってくれんだろ?」
「あっらー?おっさん、このまま、バックれる気満々だったのに」
「おっさんにもいいかっこさせてやるってんだよ、ほら行くぜ」
ユーリは有無を言わさぬ物言いで、レイヴンに扉を開けるよう促した。
それでも、レイヴンは顔をしかめ嫌な表情を浮かべている。
「えー、・・・リリィちゃん、なんとか言ってよ~」
リリーティアに助けを求めるレイヴン。
本当に行きたくないのか、それてともわざとそう装っているのか。
彼女には分からなかったが、少し何かを考えるとその口を開いた。
「ドンに言いつけますよ」
「・・・・・・リリィちゃんが一番容赦ないわね」
レイヴンはがっくりを肩を落とした。
ドンに自分たちの様子を見ておくように言われているのなら、彼がついてくるのは当然と思われた。
落ち込むレイヴンにリリーティアは声を上げて笑うと、「よろしくお願いします」と改めて頭を下げて頼んだ。
彼は何度か頭をかくと観念したかのように、地下水道に続く扉をその手で開けた。