第12話 黒幕
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「(見張りは6人か・・・)」
ラピードと共にバルボスの部下を追っていたリリーティア。
彼女たちは今、ある建物の前に積まれてあった木箱にその身を潜ませていた。
そこから顔の覗かせ、目の前の光景を窺い見る。
視線の先には建物の扉の前に立つ人の姿。
その数は6人。
「(厳重だな)」
部下たちは扉の前に立って、執拗に辺りを見渡している。
中には欠伸(あくび)をもらしている者もいるが、どう見ても厳重な体制で見張っている様子だった。
彼らが立っているその後ろの建物はダングレイス内に数多にあるうちのひとつ、酒場である。
街の東側に位置するその酒場こそが、『紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』がアジトとして使っている場所であった。
「(忍び込むのは無理か・・・・・・)」
「リリーティア・・・!」
その声に振り向くと、カロルが駆け出してくるのが見えた。
その後ろにはいつのまにか合流しているユーリと、エステルやリタもいる。
彼らも木箱の影に身を潜めると、『紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』のアジトである酒場前の様子を窺い見た。
「・・・・・・ありゃ、ちょっと無理矢理押し入るってわけにゃいかなそうだな」
「それに、中の様子もどうなっているかわからない以上は危険すぎる」
そこにバルボスがいるとなると、酒場の中にも部下が大勢いる可能性がある。
見張りをどうにかできる状況であったとしても、中へ乗り込むとなるとその前に様子を探りたいところだ。
「でも、あの中にバルボスがいるとしたら・・・」
「指くわえて見てるってわけにもいかねぇよな」
「どうしよっか・・・」
カロルの言葉にリリーティアたちが思案顔でどうするか考えていると、
「いーこと教えてあげよう」
一行とは違う声が響く。
その声に振り返ると、いつの間にいたのか、そこにはレイヴンがいた。
頭の後ろに手を組んで背を向けて立っている。
「・・・また、あんたか」
彼の姿を見たとたん、リタの目が据わった。
「おいおい、いいのか、あっち行ってなくて」
「よかないけど、青年たちが下手打たないように、ちゃんとみとけってドンがさ。ゆっくり酒場にでも行って俺様のお話聞かない?」
「わたしたちにはそんなゆっくりしてる暇は-------」
「いいから、いいから。騙されたと思って」
エステルの言葉を遮り、レイヴンは片目を閉じながら言った。
「そんなこと言われて騙される奴がいると思って・・・!」
「二度騙されるにも三度騙されるのも一緒だ。でも、仏の顔も三度までって言葉、おっさん知ってるよな」
ユーリは疑いの目を向ける。
これまでレイヴンには二度も騙されてきた彼ら。
敵の見張りに告げ口されたこと。
偽情報を掴まされたこと。
二度目の場合は嘘は言っていないのだが、ユーリたちにとっては同じことなのだ。
ケーブ・モックでもそうだったが、リタのように感情的には出さないがユーリもそれなりに心の内では根に持っている。
それもこれも仲間のことを想ってのことなのだろう。
「そんな怖い顔しなくても、わかってますって。ほら青年、笑って笑って。こっちよ」
レイヴンは手を叩くと笑ってみせる。
ユーリはしばらく彼に胡乱げな目を向けていると、リリーティアへと視線を移した。
それは”本当にあてにしていいのか?”という、彼に対する疑念を訴える視線であった。
リリーティアは苦笑を浮かべると、ただ肩をすくめてみせた。
彼女の反応に何を思ったのか、ユーリはひとつため息をつくと、レイヴンの後をついていくことを決めたのだった。