第12話 黒幕
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そうして、ユニオンの本部を出て街の広場まできた時、突然ユーリが立ち止まった。
「あれ・・・?おかしいな」
「どうしたの、ユーリ?」
カロルが聞く。
「・・・財布を落としたみたいだ」
「こんなときに何やってんの!」
「・・・・・・」
カロルが呆れている隣で、リリーティアはユーリをただじっと見る。
「ドンのとこで落としたかな?ちょっと探してくる。そのあたりで待っててくれ」
「う、うん。早く探して来てよ!」
ユーリは踵を返し、ユニオンの本部のほうへ歩いて行った。
リリーティアは意味深に彼の背をじっと見詰めると、ふっと苦笑を浮かべた。
「(・・・フレンの所にでも行ったかな)」
リリーティアは彼の行動の意図を察した。
財布を無くしたと言いながら、牢屋に捕らえられたフレンの様子をうかがいに行ったようだ。
フレンのことはユーリに任せていいだろう。
そう考えた彼女は今後の行動について考えた。
「(ドンもこの茶番には気づいているようだし・・・・・・)」
そう、この騒動はすべて茶番だ。
陰謀が渦巻く茶番劇。
ヨーデル殿下の書状の内容を聞いた瞬間、リリーティアはそれと分かっていた。
その書状は偽物であり、ドンに手渡す前に本物とすり替えられたのだと。
いつすり替えられたということまでは今の情報だけではわからないが。
すべての狙いは、騎士団とギルドの武力衝突が目的だろう。
つまりは、ギルドだけではなく、今頃<帝国>側にも偽の書状がいっているということだ。
今のギルドのように騎士団を煽るための内容が書かれた書状が。
「(バルボスはおそらくあの酒場か・・・、ラゴウもそこにいるだろう)」
この騒動は考えるまでもなくバルボスとラゴウの仕業だ。
彼らの陰謀のもとに仕掛けられた茶番劇。
ドンはそれを分かっていて、わざとその舞台で踊らされているふりをしているだけなのだ。
彼のことだ、ヨーデルの書状内容を聞いてすぐにもそれを見抜いていただろう。
それでもギルドの人たちを煽ったのは、この茶番を仕掛けた黒幕をおびき寄せるため。
あの時、ドンが自分に向けた一瞬の視線には何かを企んでいるような目だと、リリーティアは何となく感じていた。
「(・・・だとしたら、その黒幕をどうするかが問題になるが・・・)」
そこまで考えていた時、リリーティアの視界に街中を駆けるギルドの男たちが目に入った。
その男たちの姿に彼女の目は鋭くなる。
「(あの格好に、あの方向・・・・・・少し様子をうかがってくるか)」
リリーティアはそう考えると、エステルたちを見やる。
「私は少し紅の『絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』の様子を探ってくるから、みんなはこのあたりで待ってて」
「えっ!『紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』がいる居場所知ってるの?!」
「あそこ、見て」
リリーティアが向けた視線のほうを見ると、物騒な格好をした男たちが、どこかに続いた道の奥へと走っていくのが見えた。
「あれは・・・!」
「『紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)』ね」
エステルとリタにリリーティアは頷くと、ひとりその場を歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「一人では危険です!」
「少し様子を見てくるだけだよ。すぐに戻ってくるから」
カロルとエステルの言葉に心配はいらないと笑みを浮かべるリリーティア。
彼女が再びその足を進めようとした、その時。
「ガウ!」
「ラピード?」
ラピードがリリーティアの横に飛び出してきて、じっとこちらを見上げている。
”自分もついていく”と言っているのだと彼女にも分かった。
しかも、その目はどことなく相手の有無をも言わさぬものがあった。
「ありがとう、ラピード。よろしく頼むよ」
「ワン!」
有無も言わさぬ力強い目に押され、彼女は苦笑を浮かべて同行を頼んだ。
「気をつけてください」と心配するエステルの言葉に頷き、リリーティアはラピードと共にバルボスの部下たちの後を追いかけ、街中へと駆け出したのだった。