第11話 大森林
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「・・・・・・おもしれぇ若僧じゃねぇか」
「ハァハァ・・・化けもんか、このじいさん・・・」
ドンと一戦交えるユーリ。
戦い始めてからあまり時間は経っていないのだが、ドンのその気迫のせいか、戦いを見守っている周りの人々にも緊張感が伝わり、長い時間戦っているような錯覚を起こさせていた。
「ちいっ、まだまだ!」
ドンの力量はユーリの実力をはるかに上回っており、勝てる見込みがないように思われた。
しかし、彼は最後の最後まで諦めるつもりはないらしい。
「おおっと、ここまでだ。これ以上は本気の戦いになっちまうからな」
ドンは武器を下ろした。
さっきまでその体から醸し出してた気迫も少しばかり和らいだ。
「久々に楽しかったぜ。それじゃ話を聞こうか」
ユーリは不服な表情を浮かべてドンを見る。
決着がつかなかったことと、勝つことができなかったことが悔しいのだろう。
「ドン、お話中、すみません」
その時、窺うような姿勢で部下かやってきて、ドンになにやら耳打ちする。
「ん、わかった。野郎ども、引き上げだ」
部下たちに向かって声を張り上げると、ドンはユーリを見やる。
「すまねぇな。急用でダングレストに戻らにゃならねえ。ユニオンを訪ねてくれりゃあ優先して話を聞くから、それで勘弁してくれ」
「いや、約束してもらえるならそれで構わねえよ」
ユーリは剣を鞘に収めると、ドンに向き直る。
「ふん、俺相手に物怖じなしか」
ドンの言うとおり、ユーリはいたっていつもどおりの態度だ。
リリーティアでさえ、あの橋の上でドンと初めて会った時は、彼のその気迫に圧倒されて平静を保っているのがやっとであった。
あの時は傍にレイヴンがいたおかげもあり、すぐにいつものように振舞うことができたようなものだ。
そう考えると、初めて会ったドンを前してその物怖じしない姿には感嘆する思いでユーリを見た。
「じゃあな、リリーティア。また近いうちに酒でも交わそうや」
「はい、ぜひ。その時はよろしくお願いします」
リリーティアは笑顔を向けてドンに頷いた。
「レイヴン、人様んとこで迷惑かけんじゃあねえぞ」
「はいはい、わかってますって」
レイヴンは肩を竦めて、うんざりした表情で返事を返した。
そんな彼を軽く睨みながらも、ドンはそれ以上何も言わず部下たちを引き連れてその場を去っていった。
「こっちは結構本気だったんだがな。・・・ギルド、か・・・」
ユーリは自分の右手を見つめて呟いた。
ドンと手合わせして彼の中で何かを感じているのだろう。
「作るん、でしょ?」
「そんときが来たらな」
カロルが窺うように聞くと、ユーリは口元に笑みを浮かべて答えた。
「で、どうよ?やっと俺様の偉大さが伝わったかね?」
「偉大なのはレイヴンじゃないんじゃない?」
大げさにも胸を張って言うレイヴンに、カロルはひどく呆れた声をもらす。
その言葉に拗ねた風を見せている彼を、ユーリはやれやれといった様子で一度見ると、
「さ、ダングレストに戻って、ドンに会ったらバルボス探しの続きだ」
そう話を打ち切って、森の出口に向かって歩き出した。
他の皆もユーリたちの後に続いて歩き出す。
「(・・・・・・ダングレストで何かあったのだろうか)」
皆がその歩を進める中、リリーティアはドンが言っていた急用という言葉を思い返す。
その急用とは<帝国>からの協力要請のことか。
バルボスに何かしら動きがあったのか。
それとも、そのどちらのことでもあるのか。
それはダングレストに戻ってみないとわからない。
ただ、面倒なことが起きないことを願いながら、リリーティアもユーリたちに続いてケーブ・モック大森林を後にした。
第11話 大森林 -終-