第11話 大森林
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どうにか荒れ狂う魔物を無事に撃退した一行。
「本当・・・びっくりしました・・・」
エステルがほっと息を吐く。
リリーティアアも周りの様子をうかがって魔物の気配がないことを確認すると武器を収めた。
皆が一様に息をついて、張り詰めていた空気が和らいだ。
「この魔物が親玉で街が襲われていたのかな。だったら、これで街も一安心だね」
「安心するのはまだ早いんじゃないか」
「そうね、まだエアルが暴走してるわ」
リタは木の幹の空洞から溢れ出ているエアルを真剣な眼差しで見る。
リリーティアもじっとそれを見詰めた。
なぜこんな所でエアルが暴走しているのか、そして、その原因は----------。
その時、周りの草木が激しく擦れ合う音が響いた。
「ま、また来た?!」
カロルの驚きの声のあとすぐに、草木の間から魔物たちが現れた。
先ほど倒したのと同種である魔物で、それも一体ではなく複数のそれが次々と現れたのだ。
「木も、魔物も、絶対、あのエアルのせいだ!」
その魔物たちもあきらかに様子がおかしく、ただならぬ雰囲気を醸し出していた。
リタはそれらをエアルの影響でと結論づけたようだ。
その間にも、引き寄せられるようにしてここに集まってくる魔物たち。
気づけば、あっという間に一行を取り囲んでいた。
リリーティアたちは互いに背中合わせになって、再びその手に武器を構え直す。
「ああ、ここで死んじまうのか。さよなら、世界中の俺のファン」
「世界一の軽薄男、ここに眠るって墓に彫っといてやるからな」
「そんなこと言わずに一緒に生き残ろうぜ、とか言えないの・・・!?」
危機的状況でありながら、軽口を叩きあっているユーリとレイヴン。
リリーティアは小さな笑みを浮かべながら彼らの可笑しなやり取りを聞いていたが、実際はこの状況をどう回避するべきか思考を巡らせていた。
だが、どう考えてもこれといった打開策が浮かばず、内心焦りを感じていた、その時である。
「!」
リリーティアは新たな気配を感じで、はっとして上を見上げた。
見ると、上空から銀髪の男が降ってくる。
男は着地してすぐさまその手に持っていた剣を掲げると、周囲に光が立ちのぼった。
その眩しい光に思わず目を閉じる。
そして、次に目を開けると、魔物の大群がこつ然とその姿を消していた。
同時に巨大な幹の間で暴走していたエアルも静かになっていたのである。
「誰・・・?」
大きく目を見開き、その男を見るエステル。
「デューク・・・」
彼を知るレイヴンは呟く。
だが、その呟きは誰にも耳に捉えることはなかった。
「(どうして、ここに・・・?)」
リリーティアは訝る瞳で彼を見据える
あまりにタイミングよく現れた彼に大きな疑念を持った。
「ちょっと、待って!」
「・・・・・・・・・」
一行に背を向けて何も言わずその場を立ち去ろうとするデューク。
それを、リタが慌てて引き止めた。
「その剣は何っ!?見せて!今、いったい何をしたの?エアルを斬るっていうか・・・。ううん、そんなこと無理だけど」
「知ってどうする?」
デュークは静かな声で問う。
「そりゃもちろん・・・いや・・・それがあれば、魔導器(ブラスティア)の暴走を止められるかと思って・・・。前にも魔導器(ブラスティア)の暴走を見たの、エアルが暴れて、どうすることもできなくて・・・・・・」
「それはひずみ、当然の現象だ」
「ひず・・・み・・・?」
リタは眉間にしわを寄せて、何やら考え込む。
その時、エステルがデュークに歩み寄ると、彼女は小さく頭を下げた。
「あ、あの、危ないところをありがとございました」
「エアルクレーネには近づくな」
「え・・・?」
エステルは首を傾げる。
彼のその言葉に、リリーティアのその目は少し険しいものになった。
「エアルクレーネって何?ここのこと?」
「世界に点在するエアルの源泉、それがエアルクレーネ」
「エアルの・・・源泉・・・」
リタは彼の言葉を復唱する。
聞いたことのない単語に少し戸惑っているようだ。
だが、それはリリーティアも同じだった。
その言葉はヘルメスが遺した文書にも、これまでのどの文献にも載っていない言葉であった。
「あんた、いったい・・・。こんな場所だ。散歩道ってこともないよな?」
「・・・・・・・・・」
デュークは先ほどから長く語ることなく、ひとつひとつ短く答えてはいたが、ユーリの問いには黙したままだった。
「ま、おかげで助かったけど。ありがとな」
ユーリは深く追求することはせず、ただ礼を言った。
それにもデュークは何も答えずに踵を返すと、結局、彼は自分の正体を明かすことなく静かにその場を去って行ってしまった。
「・・・・・・まさか、あの力が〈リゾマータの公式〉」
リタはひとり呟くと、しばらく考え込む。
その間も、リリーティアは彼が去った方向をじっと見据え続けていた。
「・・・・・・ここだけ調べてもよくわからないわ。他のも見てみないと」
「他のか・・・。さっきの人、世界中にこういうのがあるって言ってたね」
「言ってたねぇ」
「ねえ、エアルクレーネっていうの、聞いたことある?」
リタがリリーティアを見る。
「いや、私も初めて聞いた。リタの言うとおり、それを探してもっと検証してみないと確かなことはわからないようだね」
リタに聞かれて、リリーティアはもう一度よく考えてみたが、やはりこれまで聞いたことのない言葉であった。
当然、それが世界各地に点在するということも知らない。
「(源泉っていうことは・・・つまり・・・。だったら、その原因は・・・・・・)」
けれど、リリーティアにはいくつか思うところがあった。
それは、リタが知らない、いや、ユーリたち皆が知らないことを知る彼女だからこそ思うこと。
彼らだけの話ではない。
この世界にいるほとんどの人間たちが知らないことだろう-------彼女が知る真実を。
「・・・じゃあ、もうここで調べる事はないんです?」
「そういうことね」
エステルの問いにリタは頷いた。
「んじゃ、ダングレストに戻ってドンに会おうぜ」
ユーリの一声に頷いて、リリーティアとレイヴン以外は来た道を引き返して歩き出した。
その場には二人だけが残る。
「奴さん、わざわざエアルの暴走を抑えるためにこんなところまで来たのかね」
レイヴンは顎に手をあてて、デュークか飛び降りてきた方向を見上げた。
「・・・・・・どうなんでしょう」
彼がエアルの暴走を抑えるために、この森の奥深くに来たというのなら、
エアルが暴走していることをどうやって察知してここに訪れたのか。
それとも、世界各地にあるエアルクレーネがあのように暴走している状態なのか。
彼の出現でいろいろと考えることが山ほどあった。
しかし、ここでこれ以上考えても推測しか出てこないだろう。
「とりあえず、今はこの森を出ましょう」
「そうしますか」
一度、彼のことは考えるのをやめて、リリーティアとレイヴンもユーリたちの後に続いた。