第11話 大森林
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ケーブ・モック大森林に入ってから、だいぶ奥深くへと足を踏み入れた。
未だこれといって、エアルの暴走と関連するようなものは見受けられない。
そんな中、リリーティアはあることに気づいた。
傍に生えている植物をじっと見る。
「リタ、ここにきてから、森の入口付近に生えていた植物よりも、さらにその形状が独特になった気がしない?」
「言われてみればそうね。それに、大きさも一段と巨大に成長してるって感じ。あまりに異状だわ」
森の入口付近に生える植物よりも奥深い場所に生える植物はそれよりもさらに一回り大きく、それだけでなく形状がさらに異様なものになってきた。
それはただ成長したから大きいとか、そういう植物だからということではないように見えた。
「一応気をつけておいて。植物の異常成長がエアルのせいなら、ここもエアルが溢れてる可能性があるから」
リタがユーリたちに注意を促した。
入り口付近よりもさらに植物の変化が見られるこの場所。
それが本当にエアルの影響なら、この周辺からさらに奥はエアルの濃度が高くなっているかもしない。
「過度なエアルは人体にも魔導器(ブラスティア)にも悪影響を及ぼすからね。エアルの取り込みすぎて代謝活動が活発になりすぎるから、普段より疲れるわよ」
リタの言葉を受けて、レイヴンが付け加えるように話す。
彼の言葉に、なぜかリリーティアの表情が僅かに曇った。
「よく知ってたわね」
「へ?常識でしょ」
少し驚いた目で見てくるリタに、彼はきょとんする。
「人体への影響は知っててもおかしくないけど・・・無茶な使い方して、魔導器(ブラスティア)をエアル過多にするのは一般に知られてないと思ったわ」
リタの言うとおり、一般的にはあまり知られていない。
魔道器(ブラスティア)研究員であるリタやリリーティアなら、職業上知っていて当然の事柄なのだが。
「武醒魔導器(ボーディブラスティア)扱う人間なら知ってて当然でしょ」
いや、知らなくても当然なのだ。
それでも、レイヴンはそのことを知っていた。
魔道器(ブラスティア)研究員でもない彼が。
「ボク、リタに聞くまで知らなかった」
「勉強不足よ、少年」
レイヴンはあっけらかんと言う。
カロルは「え~」と声を上げ、不服そうな顔を浮かべていた。
カロルのように知らなくて当然のことを、彼にとっては知っていて当然のことだった。
それが彼にとって必然だったのだ。
「・・・言いながら、おっさん、それ、ただリリィから聞いたことなんじゃねえの」
ユーリが疑う目でレイヴンを見る。
知り合いである彼女に偶然にも聞いていただけなのではと疑ったようだった。
「ああ、だったら納得ね」
「そうなの?勉強でもなんでもないじゃん」
リタは感心して損したとでもいった様子で呆れている。
カロルもジト目でレイヴンを見た。
「なによ~、すぐケチつけるんだから」
レイヴンは肯定も否定もせず、ただ拗ねたような表情を浮かべ、組んだ手を頭の後ろに回した。
ユーリたちはリリーティアから聞いたということで納得したようだが、それもまた違う。
彼らには想像することはできないだろう。
レイヴンが一般的に知られていないことを知っていた、その理由を。
「(私が教えるもなにも-------)」
----------彼は身に染みてそれを知る立場にあるのだから。
リリーティアの脳裏には、心臓魔導器(ガディスブラスティア)のことが浮かんでいた。
彼女は音もなく息を吐くと、彼らのその様子を苦笑を浮かべて見詰めていた。
しかし、それはただそう表情を繕っているだけで、実際は彼女の胸の内は重く、鈍い疼きを感じていた。
そうして、彼女のそんな心情も知るすべもなく、
もう少し調査を続けるため、再び一行はさらに森の奥へと歩き始めるのだった。