第11話 大森林
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一行はさらに森の奥へ進んでいく。
途中、進んだ先が行き止まりになる度に道に迷いそうになったりもしたが、分かれ道がある場所には道標をつけるなどして、なんとか森の奥へと順調に歩を進めた。
そして、どんどん先に進んでいくと、大きな幹の道を降りて開けた場所に出た。
「・・・何か・・・声が聞こえなかった?」
しばらくそこを進んでいると、カロルが突然足を止めた。
一行のものではない、誰か他の声が微かに聞こえたらしい。
皆が一様に足を止め、周りに向けて耳を澄ました。
「うちをどこへ連れってくれるかのー」
「この声、どこかで・・・」
確かに声が聞こえた。
それはどこか聞き覚えのある声で、エステルが首を傾げる。
「パ、パティ・・・!?」
カロルが叫ぶ。
見ると、草木の間から昆虫型の魔物につかまれてパティが宙を舞っているのが見えた。
リリーティアたちは唖然とした。
気のせいなのかもしれないが、魔物につかまれているというのに何故かパティは楽しそうな様子であったからだ。
それは異様な光景であった。
「なに?お馴染みさん?」
「はい、ラゴウの屋敷で一度・・・」
「ああ・・・」
レイヴンは上を見上げて、何かを思い出したようだ。
「そういやいたっけね」と彼はひとり小さく呟いた。
天候を操る魔導器(ブラスティア)があったラゴウの屋敷で、
影に隠れてリリーティアたちの様子を見ていたレイヴンは、見慣れない人物が一人増えていたことを思い出したようだ。
「助けなきゃ・・・!」
「あーほいほい、俺様にお任せよっと・・・」
カロルの言葉を聞いてすぐにレイヴンは愛用の武器を手に取ると、
剣から弓に変形させて魔物めがけてすばやく矢を放った。
「当たりました!」
エステルが声をあげたのと同時にユーリがその場を駆け出した。
そして、魔物から落下するパティを彼がしっかりと受け止める。
「ナイスキャッチなのじゃ」
嬉しげに笑うパティ。
何を思ったのか、ユーリは彼女を抱きとめていた腕をぱっと解いた。
パティは草地に尻もちをついておかしな声を上げる中、ユーリは何食わぬ顔ですたすたと一行の元へと戻った。
それから一息ついてパティから話を聞く。
「で?やっぱりアイフリードのお宝って奴を探してるのか?」
「アイフリード・・・?」
彼らに背を向けて話を聞いていたレイヴンが訝しげにパティの方へと振り向く。
「のじゃ」
「嘘くさ。本当にこんなところに宝が?誰に聞いてきたのよ」
「測量ギルド、『天地の窖(あなぐらが)』が色々と教えてくれるのじゃ。連中は世界を回っとるからの」
『天地の窖(あなぐらが)』とは地図作成を生業とする測量ギルドで、情報屋としても活動しているギルドだ。
パティの言うとおり、測量のために世界を渡り歩いている者たちなので、世界中に飛び交う情報をいろいろと知っているのである。
「それでラゴウの屋敷にも入ったって訳?結局、なにもなかったんでしょ」
「100パーセント信用できる話のほうが逆にうさんくさいのじゃ」
「ま、確かにそうかも」
パティの言葉にレイヴンはうんうんと頷く。
「あんたは100パーセントうさんくさいわよね」
「ひどいお言葉・・・」
相変わらず彼に対してのリタは手厳しい。
「とりあえず、うちは宝探しを続行するのじゃ」
「一人でウロウロしたら、さっきみたいにまた魔物に襲われて危険なことに・・・」
「あれは襲われてたんではないのじゃ。戯れてたのじゃ」
「たぶん、魔物の方はそんなこと思ってないと思うけどな」
エステルの心配をよそに、パティは平然として言った。
魔物につかまれながら楽しげにしていたのは気のせいではなく、本人は本当に楽しんでいたことだったらしい。
カロルの言うとおり、魔物のほうは戯れているつもりではなかっただろう。
魔物に対して戯れるという感覚を持てる彼女は、少女でありなが存外肝が据わっているのかもしれないと、リリーティアはある意味感嘆した気持ちでまじまじと彼女を見た。
「パティ、後ろ・・・」
エステルが指差す先にカマキリ姿の魔物グラスホッパーが現れた。
背後からまだ少し離れた距離にいるその魔物にパティはすぐさま銃を腰から引き抜くと、振り向きざまに弾をたたき込み、あっという間にこれを撃退した。
ブレることのない照準に急所を的確にとらえた彼女のその銃捌きに、リリーティアは思わず舌を巻いた。
宝を探し求めて、いろんな場所を渡っているだけはある。
「つまり、ひとりでも大丈夫ってことか」
「一緒に行くかの?」
パティはユーリに片目を瞑ってみせる。
「せっかくだけど、お宝探しはまたの機会にしとくわ」
「それは残念至極なのじゃ。でもうちはそれでもいくのじゃ。サラバなのじゃ」
そう言うと、一行が何かをいう暇もなく、以前と同じようにあっさりとした様子でパティは草木が生い茂った中へと走り去っていった。
「行っちゃった・・・」
「本当に大丈夫なんでしょうか」
「本人が大丈夫って言ってるんだから、大丈夫なんでしょ」
「だといいんだがな。ま、気にしてもしかたねえ。オレたちも行こうぜ」
パティのことも気になったが、魔導器(ブラスティア)の暴走の調査のために、一行はさらに森の奥へとその歩を進めた。