第11話 大森林
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ダングレストを発ち、一行はケーブ・モック大森林にたどり着いた。
「世の中にはこんな大きな木があるんですね・・・・・・」
エステルは周りに生えた大きな植物たちに圧倒されている。
「けど、ここまで成長すると、逆に不健康な感じがすんな」
まわりはただ葉や木々が覆っているというのではなく、
ひとつひとつの植物が巨大で、ひとつの大きな布が互いに覆いかぶさっているような情景だった。
湿気を含ませた草地の上には、ありとあらゆるところから分厚い木の幹が絡み合い複雑に入り組んでいる。
森の中を進むには、その幹を渡って奥に進むしかないようだ。
「カロルが言ってたとおりね。ヘリオードで魔導器(ブラスティア)が暴走したときの感じになんとなく似てる」
著しい成長を見せているこの一帯の植物は、あの異常なエアルの中にあった植物と同じ生態に見えた。
リリーティアもここに訪れたのは初めてで、周りの様子を注視してうかがい見る。
その時、森の入口のほうで、不自然に草が擦れる音が聞こえた。
「気をつけて・・・・・・誰がいるよ」
カロルもそれに気づき、そこにいる皆が音のしたほうに警戒した視線を向けた。
「よっ、偶然!」
そう言って、草木の中から現れたのはレイヴンだった。
突然現れた彼に、ユーリ、カロル、リタの三人は睨むような鋭い視線を向けているが、リリーティアだけはひとり苦笑を浮かべて彼を見ていた。
「こんなところで何してんだよ?」
「自然観察と森林浴って感じだな」
ユーリの言葉に、レイヴンは顎に手をあてて答える。
「うさん臭い・・・」
カロルが疑惑の目で彼を見る。
「あれ?歓迎されてない?」
「本気で歓迎されるなんて思ってたんじゃないでしょうね」
「そんなこと言うなよ。俺、役に立つぜ」
両手を頭の後ろに組んで片目を閉じると、口元に笑みを浮かべるレイヴン。
「役に立つって、まさか、一緒に来たい、とか?」
「そうよ、一人じゃ寂しいしさ。何?ダメ?」
「(・・・何かの目的があるのか・・・それともただの気まぐれ・・・・・・?)」
リリーティアはそれらのやりとりを聞きながら、彼の行動の真意を探った。
しかし、この状況で考えても答えが出るものでもなく、彼女はただ黙って成り行きに任せることにした。
「背後には気をつけてね。変なことしたら殺すから」
リタはその声は少し低く、怒気を含ませた物言いだった。
彼女の場合、その言葉を本当に実行しそうで、リリーティアは苦い笑みを零した。
「なあ、俺ってば、そんなにうさん臭い?」
「ああ、うさん臭さが、全身からにじみ出てるな」
「どれどれ・・・・・・」
レイヴンはといえば、大げさな身振りで体のにおいを嗅ぐ仕草をしている。
「余計な真似したら、オレ何するかわかんないんで、そこんところはよろしくな」
ユーリはレイヴンに指をさして、念を押すようにそう言うと、さっさと森の中へと歩き始めた。
エステルたちも次々にその後に続いていく。
「俺ってばそんなにうさん臭いかね~」
「・・・・・・まあ、これまでのことがありますからね」
拗ねた風なレイヴンの言葉を背に、リリーティアは先へ行く皆を見詰めながら答える。
「根に持つ男は嫌われるって言うけどね」
「ふふ、そうですね」
リリーティアは小さく笑うと、ユーリからリタの背に視線を移し、困ったような笑みを浮かべた。
「(どちらかというと、男というより・・・・・・)」
そして、これまで何度か彼に対して怒っていたリタの様子を思い出し、彼女はレイヴンのほうへと振り向いた。
「あれですよ、丸焦げにならなかっただけでも運がよかったと思ってください」
「・・・・・・なにそれ、こわいんだけど。俺様そんなに恨まれてる?」
冗談で言っているのは分かったが、彼女のその辛辣な言葉にレイヴンは僅かに頬を引きつらせた。
リリーティアは微かに笑い声をこぼすと、彼女もユーリたちの後に続いた。