第11話 大森林
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ひとまずの騒動がおさまったダングレスト。
街の中は幾分か落ち着きを取り戻している。
ギルドユニオン本部に向ってしばらく歩いていると、正面に大扉がある一際大きな建物が見えてきた。
扉の前にはこれ見よがしに武器を構えて立っている見張りがいる。
カロルによるとあれがギルドの総本山の中枢であるユニオン本部だという。
「ん?なんだおまえたち」
近づいてくるのに気づいた見張りの男が一行に声をかける。
「ドンに会って話したいことがあるんだ。取り次いでくれ」
「五大ギルドに関係があることなんだ」
ユーリとカロルがそう言うと、見張りの男は一行をじっと見渡す。
「見ない顔だな。どこのギルドだ?」
「どこって、どこでもないけど」
ユーリの言葉に見張りの男は少し考える素振りを見せるとすぐに向き直った。
「・・・・・・あいにくドンは魔物の群れ追って街を出てったぞ」
「魔物の群れを?」
カロルは首を傾げる。
「ああ、魔物の巣を一網打尽にするんだと」
「なるほど・・・教えてくれてサンキュな」
「ああ」
見張りの男は案外気さくであった。
ギルドに所属していない上に、見ない顔ぶれの者たちに対しても邪険に扱うこともない。
ユーリたちと共にひとまず広場まで戻ってきたリリーティアは、ふと自分がいる<帝国>とギルドを照らして考えていた。
「(ギルドのそういう柔軟さは、<帝国>も見習うべきなんだろうな・・・・・・)」
<帝国>ならば、門番にもよるだろうが上の者に会いたいといっても、いるいないも関わらずに取り次ぐどころかおそらく軽くあしらわれてしまうだろう。
とくに相手が平民ならば尚のこと、聞く耳を持ってくれないように思う。
リリーティアが空を見上げながらそんなことを考えいると、
「・・・ドンの手伝いをしたら、ドンに認めてもらえて・・・・・」
すぐ隣にいたカロルの小さな呟きが聞こえ、彼女は視線を移す。
彼は胸の前でぐっと両の拳を握り締めて、ひとり意気込んでいた。
そんなカロルの”認めてもらいたい気持ち”というのはなんとなくわかる。
リリーティアは深く考えない程度に幼かった頃の自分を思い出した。
そして、微かに優しげな笑みを浮かべてカロルを見詰めた。
「しょうがねえな。街で情報を探るか」
「・・・え?ドンの手伝いに行かないの?」
「魔物の巣の場所、知ってるのか?」
「あ、そっか・・・」
ドンに認めてもらうためにと意気込んでいたカロルは、ユーリのもっともな言葉に少しがっかりした様子だった。
確かにドンを追って無闇に街の外を探すのも無謀だし、探している間に行き違いになる可能性が高い。
「手詰まりみたいだし、あたし、ケーブ・モックの調査に行ってくる」
「そんな勝手に」
突然のリタの言葉に、カロルは困った顔で声を上げる。
「面倒な仕事はさっさと終わらせたいの」
「けど、それなら、二人も一緒ってこと?」
カロルはリリーティアとエステルを見ながら言う。
「そうですね。アレクセイにはそう言いましたし・・・」
「ええ。私もエステルの護衛を言い渡されているから」
エステルの視線にリリーティアは頷いて答えた。
「大丈夫ですよ。わたしたちだけでもちゃんとやれます」
「そうもいかねえだろ。もしもケガでもされたら、オレがフレンに殺される」
「(・・・・・・なら、私もそうなるのか)」
ユーリのその言葉に、フレンによろしく頼まれた自分にも責任重大なことだなと苦笑を浮かべた。
「いいの、ユーリ?」
「ま、有力な手掛かりもねえしな」
「なら、決まりですね。ケーブ・モック大森林に行きましょう」
ユーリたちはさっき入ってきた街の出入口ではなく、その反対方面にあるもうひとつの出入口に向かって歩きだした。
その出入り口からでないとケーブ・モック大森林へは行けないのである。
「(・・・奴らのいる場所はだいたいわかっているけれど・・・絶対とは限らないしな」
リリーティアはその場に立ち止まったまま、先を進む彼らの背を見詰める。
「(こちらが動く前に、まずはドンに話しを通すべきか。フレンもいるし・・・・・・)」
リリーティアは頭のなかでさっと考えをまとめると、ユーリたちの後に続こうと歩き出す。
数歩足を進めた時、彼女は突然後ろに振り向き、ある建物の屋根を見上げた。
「(・・・・・・気のせい?)」
リリーティアは訝げな表情を浮かべた。
視線の先には誰もない。
しかし、確かに一瞬、微かにだか彼女は何かの視線を感じたのだ。
「(・・・・・・まさか、レイヴンさん?)
しばらく誰もいない屋根の上を凝視した後、リリーティアはふと彼を思い浮かべた。
彼がダングレストにいることは何らおかしくないことだ。
しかし、その先に姿が見えない以上、今ここで考えても仕方がない。
視線も殺気じみたものでもなかったため、深く気に止めはせず、彼女は再びユーリたちの後を追った。
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「ケーブ・モック大森林とは。偶然ってあるもんだねえ」
男の声。
その声は、さっきリリーティアが視線を向けた先にある屋根の陰から微かに響く。
彼女の感じだ視線は気のせいではなかった。
そこには、ずっと一行の会話を盗み聞きしていた男がいたのだ。
その男とは、彼女が思い浮かべていた、まさにその人であった。