第2話 青年
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「んで、勝手に任務を放棄してていいのか、特別補佐さんよ」
エステリーゼを探しに向かっている途中、ユーリは突然足を止めてリリーティアへと振り向いた。
彼のその目は、何かを探っているような目だ。
実際、探っているのだろう。
彼らと共に行くと言った彼女の行動の真意を。
「姫さん、連れ戻さなくてもいいの?しかも、脱獄者と一緒に行動するってのもどうかと思うけどな。ま、オレはこんなところで捕まるわけにはいかねえから、そのほうが助かるけど。上に怒られるのはあんただぜ」
リリーティアは苦笑をもらす。
食えない青年だと、彼を見た。
すでに彼はエステリーゼのことを<帝国>の姫だということは知っているようだ。
「まあ、その時はその時。それに----------、」
リリーティアは目を細め、遠くを見詰めた。
その視線の先には地面に座り込んでいるエステリーゼがいた。
その隣にはあの犬がいて、あくびをしている。
エステリーゼは辺りをきょろきょろと忙しなく見渡していて、物珍しく周りの様子を見ていた。
そんな彼女の姿に、リリーティアは口元に笑みを浮かべた。
彼女は生まれてからずっと城の中だった。
それは鳥籠の中にいる鳥のように、その人生をその中で歩んでいた。
彼女自身はそれに不満はないようだが、リリーティアの心には少しばかり引っ掛かるものがあった。
それでいいのだろうか、と。
しかし、そう不憫にも思いながらも、知らないままということもまた、幸せなことなのかもしれないとも思っていた。
とくに、この世の在り方というは。
世界を見ていくと、知らない方が幸せなことが多いように感じるのも確かだった。
だとしたら、彼女のその人生もまた、幸せな生き方と捉えられるのかもしれない。
けれど、やはりそれは、どこか違うような気がした。
知らないままが幸せというのは、それも間違いではないと思うが、それが正しいとはどうしても思えなかった。
そう、だからリリーティアは決めたのだ。
「-------エステリーゼ様も、少しは外の空気を吸って頂くのも悪くないでしょう」
少しだけでもいい、彼女にも外の世界を見せてあげたいと。
エステリーゼを見詰めているリリーティアの瞳はとても優しげであった。
ユーリは一瞬目を見開くと、物珍しそうに彼女を凝視した。
「ふ~ん、あんたみたいな騎士もいたんだな。騎士ってのは融通利かない奴らばっかだと思ってたぜ」
ユーリの言葉に何と返していいか分からず、リリーティアはただ肩をすくめた。
「何はともあれ、お姫さんの勝手な行動には、オレひとりには手に余るところだったしな。ま、これからよろしくな、リリィ」
リリーティアは一瞬呆気に取られて彼を見たが、すぐに小さく笑みを零した。
「こちらこそ。よろしく、ユーリ」
こうして、思いがけなくも下町の青年と共にリリーティアの旅が始まったのだった。
第2話 青年 -終-