第13話 竜使い
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木々に覆われた狭くて通りにくい道。
少し前まで雨が降っていたせいで、その道はぬかるんでいて、所々に浅く水が溜まっていた。
そんな森の隘路(あいろ)を、数台の馬車が走っている。
「破壊された?」
その内の一台の馬車の中で、驚きと惑う声が響いた。
「・・・はい。魔導器(ブラスティア)の稼働を確認してからしばらくして、突然の襲撃者が現れ、魔導器(ブラスティア)が無残にも破壊されたのです」
驚きの声を上げたその者の隣でそう話す男。
その男は、<帝国>の技官、いわゆる官僚の一員である。
技官は落胆した面持ちで、ぐったりと座っている。
技官の男は<帝国>から機密事項の任務を任されていた。
課せられた任務とは、新型である魔導器(ブラスティア)を動かし、その効果を確かめるというものだった。
----------新型。
それは一般に、筐体(コンテナ)に改良を加えられたもののことを指す。
魔導器(ブラスティア)は、中枢である魔核(コア)と筐体(コンテナ)で構成され、その機能を発揮する。
そこに筐体(コンテナ)があっても、魔核(コア)がなければ魔導器(ブラスティア)としての機能は果たさない。
逆もその然り。
だが、今回の新型魔導器(ブラスティア)は、今までの新型と大きく違っていた。
どう違うのか。
それは、その魔導器(ブラスティア)は筐体(コンテナ)を改良したのではなく、魔核(コア)自体が従来のものと違っていた。
今回の新型に使われている魔核(コア)は再調整を加えられ、元とはまったく違った機能を発揮するように作り変えられていたのだ。
それは、文字通りの”新型”であった。
なぜなら、一から魔核(コア)を作り上げる技術は古代に失われ、今までに一度も再現されておらず、その供給は発掘に頼っているのが現状だったからだ。
未知の機能を持った魔核(コア)は久しく発見されていない上、その技術の研究は<帝国>によって制限されている。
そうした現状から、世間全体では、機能上の需要と供給が噛み合わないという魔導器(ブラスティア)の慢性的な問題に悩まされていた。
だが、この魔核(コア)の再調整の実現によって、その問題は大きく改善できる可能性が出てきたのだ。
それ以上に、今回のこの新型魔導器(ブラスティア)の出現は、この世界《テリュカ・リュミレース》に生きる者たちの常識を覆されることになるだろう。
この新型魔導器(ブラスティア)には、結界魔導器(シルトブラスティア)の機能を有していたのである。
従来、結界魔導器(シルトブラスティア)は、あらゆる魔導器(ブラスティア)の中でも大規模なもので、世界にわずかしか存在しない希少なもの。
それはつまり、人々が安全に暮らすことのできる土地が制限されているということだ。
だが、この新型魔導器(ブラスティア)で作られた結界魔導器(シルトブラスティア)は、荷台に乗せて移動できる大きさであるから、その問題も改善されるというわけだ。
この新たにつくられた結界魔導器(シルトブラスティア)の出現は、幾世紀にわたり、<帝国>の厳しい規制の中で多くの研究者たちを悩ませてきた数々の問題を解いたことを知らしめたのだ。
多くの研究者たちを悩ませ続けてきたこの問題を解いたのは一体何者なのか。
技官は、その隠れた天才に畏敬と嫉妬の念を持ちながらも、その者の存在を確かめたかったが、それを知る術(すべ)はない。
----------ならば、この者なら知っているのだろうか?
自分の傍らで気難しい顔をして考え込んでいる若者を見た。
帰路の途中で乗り合わせた若者。
その者は、今回の任務結果を尋問するために、<帝国>から遣わされた魔導士だった。
魔導士といっても、一般の魔導士とは特殊なようで、<帝国>騎士団の一隊の特別補佐官をも担うこの若者は、魔導士でありながら騎士団にも所属し、その地位はかなり上の位置に属している者だった。
自分たちの帰城を待たず、それなりに地位があるこの者を遣わせたという事実は、今回の任務がどれだけ重要だったかを示唆していた。
この者、深紅の魔導服(ローブ)に身を包んだ若者。
その者の名は--------------------、