第12話 弟子
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それからも、リリーティアは師として弟子たちに出来うる限りのことを尽くした。
武術、魔術のほかに、必要なことだと思えば様々な知識を教えていった。
一見関係のないようなことまで、二人には知識として伝えた。
それは、危機回避能力を向上させるためでもあった。
暗殺ギルドという危険な場所へ向かおうとする彼女たちに、どんなことが起きようと常に動揺せずに自分の身を守れるように。
魔物との戦いも小さな油断が命取りになるように、周りの状況のどんな小さな変化でもそれを読み取り、どう考え動くのか、瞬時に思考を巡らせられるように。
リリーティアは観点様々な方向に変えて、彼女たちを指導していった。
生きぬく術(すべ)を少しでも多く身に着けるてもらいたいがために。
もちろん、彼女たちの大切な人を守る術を身に着けるためではあるが、何より彼女たちがどんな状況でも生き抜いていくことが一番大事なことなのだ。
「よし、ひとまずここで休憩しよう」
「はい」「はーい」
リリーティアとゴーシュ、ドロワットは、いつものようにトリムを出てトルビキアの平原にいた。
そして、数時間の指導を受け、しばらく休憩を入れることにした。
照り付ける太陽の光を避けて、三人は木陰の下に腰を下ろし、師を真ん中に左右に弟子たちが座った。
汗ばんだ体に、平原に吹き渡る涼やかな風がとても心地良かった。
「ゴーシュは本当に上達が早いね。会うたびに驚かされるよ」
あの日からしばらく経たないうちに、ゴーシュは魔術を使えるようになった。
一度使えるようになると、彼女は瞬く間に魔術の腕を上げていったのである。
「そ、そんなことありません。私はまだまだです」
少し素っ気なく返事を返すゴーシュ。
ゴーシュの様子にリリーティアは小さく笑みを零した。
彼女は表に感情を出すのが苦手な子だった。
彼女のことをよく知らない人は、今の態度は少し冷たい印象を受けるだろう。
けれど、そうじゃない。
ただ、うまく感情を出せないだけなのだ。
素直じゃないとも言えるだろうか。
だから、よく見ると、今の彼女の表情は僅かに照れているのが分かる。
本当は師に褒められて喜んでいるのだ。
それを知っているから、リリーティアは彼女の様子を見て笑みを浮かべた。
「ししょーししょー、私は?私は?少しは強くなった?」
「もちろん、少しじゃなくてとても強くなってるよ」
「本当!やったわん!」
ゴーシュとは正反対でドロワットは感情を素直に表に出すことができる子だった。
嬉しければ笑い、悲しければ目に涙を溜める。
そうやって感情をさらけ出すことができる素直さを持っていた。
全く正反対の性格である二人。
けれど、何事も一生懸命に取り組み、とても心の優しい所は二人ともまったく同じだった。
そんな心優しい二人が、自分のことを師として慕ってくれていることが本当に嬉しくて、思わずリリーティアの頬が緩んだ。
「師匠、どうしたのですか?」
「ししょー、なんか嬉しそうだぬ」
二人の言葉にはっとすると、気づけば不思議な表情を浮かべて自分を覗き見る二人の弟子の顔が近くにあった。
きっと間抜けな顔になっていたに違いないと、彼女は少し恥ずかしさを感じた。
「え、ああ、うん。二人ともよく頑張ってるなぁって思って」
その恥ずかしさを誤魔化すように、彼女は二人に笑って答えると、目を閉じで二人の頭を撫でた。
「へへ、ししょー、やっぱりキャナリ姐みたいだぬ」
「え?」
撫でてくれたことが嬉しくて、照れた笑顔を浮かべるドロワットの言葉に、彼女は思わずその手を止めた。
「よくこうして頭撫でてくれたよね、ゴーシュちゃん」
「ああ。いつも私たちに優しく笑ってくれた」
そういえばと、リリーティアは思い出した。
破門にすると言ったあの日、ゴーシュが”キャナリ姐”と言っていたことを。
互いに知っている仲というのは、別段不思議なことではなく、驚くことでもない。
いつどこで出会っていても不思議ではないだろう、今の自分と弟子たちのように。
ただ彼女を思い出すということは、必然的に過去を思い出すということであった。
リリーティアにとって、あの日の過去を思い出すと胸の奥がひどく痛んだ。
だからこそ、彼女の名前を聞くと、居た堪れなくなり、動揺してしまう自分がいた。
今の自分の姿を思えば、それは尚更で。
そんな師の心情も知らない二人は、彼女、”キャナリ姐”について話し始めた。
まだ二人が互いに家族と幸せに暮らしていた頃、キャナリと出会ったらしい。
聞くと二人は元々帝都で暮らしていたらしく、ある日二人で遊んでいた時、一人の騎士とぶつかり、怒鳴り散らされた。
そして、恐怖で身を震わせていたところをキャナリが助けてくれたのだ。
それから時々、キャナリと話をする機会が増え、いつも優しくしてもらっていた。
〈人魔戦争〉の時は家族とノールに来ていたらしく、結界を破って襲ってきた魔物たちに自分たちは襲われ、家族を失ったのだという。
二人はキャナリのことを嬉しげに話していたが、どこか悲しげでもあった。
彼女がもうここにはいないことは、二人にとっても辛く、未だに辛い現実なのだろう。
それでも、当時を思い出しながら、笑みを浮かべて彼女のことを話す二人の様子から、彼女のことをとても慕っていたのだとわかった。
彼女たちにとっては温かな記憶でもあるのだろう。
弟子たちの話す彼女との温かな思い出話に、リリーティアは普段思い出さない彼女との記憶を少し思い浮かべる。
頭に浮かんだのは、彼女の優しい笑み、そして、本気で心配し、怒ってくれた真剣な眼差し。
いつも、いつも彼女は----------、
「-------とても優しくて、芯の強い人だった」
リリーティアはひとり呟くように言った。
彼女の言葉に、二人は少し驚いている。
「え?師匠もキャナリ姐のことを知ってるんですか?」
「うん。・・・私は、魔導士として昔からお城にいたから」
「あ!だから騎士だったキャナリ姐のことも知ってるんだわん!」
「ええ」
リリーティアが城に勤めていることは知っていた二人だが、生前のキャナリと会っているということは考えつかなかったらしい。
騎士だったキャナリのことを聞いてくる二人に、彼女は困ったように笑いながらも簡単に話して聞かせた。
でも、彼女はこういう人だったという話しが大半で、共に過ごした詳しい出来事のことはあまり話さなかった。
否、話せなかったのだ。
もちろん記憶にあるが、それを思い出すことをどうしても拒絶する自分がいた。
彼女のことを話していると、必然的に自分と過ごした様々な想い出が蘇ってくるが、無理やり記憶の奥へと追いやり、蓋をした。
これ以上思い出すことは、今の彼女にはあまりに恐ろしいことだった。
それでも、二人にはそれでも十分だったようで、彼女について師から聞けただけで嬉しかったようだ。
「さてと。さあ、休憩は終わり。もうひと頑張りしてもらおうかな」
遠い記憶を振り払い、リリーティアは立ち上がった。
「はい!よろしくお願いします!」
「もちろん、頑張るんだわん!」
二人の威勢のいい返事に、彼女は笑みを浮かべた。
そして、三人が木陰から出た、その時だった。
「まさかユーが、二人のグランドマスターになってるとは驚きデース」
「!」
聞き覚えのあるその声に、リリーティアははっとする。
振り返ると、そこには貴族と見紛うような、派手な青の上下に身を包んだ一人の男が立っていた。
「「イエガー様!?」」
「久しぶりデース。ゴーシュ、ドロワット」
ゴーシュとドロワットの顔がぱっと喜びに輝いた。
この人こそ、〈人魔戦争〉のもう一人の生き残りであり、
暗殺も請け負う武器商人ギルド『海凶の爪(リヴァイアサンのつめ)』の現主領(ボス)----------イエガー。
また、救児院に寄付をする優しい心を持った、ゴーシュとドロワットが慕っている”イエガー様”、その人だった。
「イエガーさん」
「お久しぶりデスネ、ミス・リリーティア」
そして、裏ではアレクセイの理想のために動き、ギルド内部の情報や魔導器(ブラスティア)の出処を掌握している。
その理想の為に研究で使用している魔導器(ブラスティア)は、主にイエガーからの横流しによって手に入れているものであった。
「聞きましたヨ。魔術のレッスンをしているそうデスネ、ゴーシュ、ドロワット」
その振る舞い方、話し方は道化けているように感じるが、これが
彼の振る舞い方に初めは戸惑ったものの、それが彼の在り方であり、今では彼女の中でも当たり前になっていた。
「は、はい!私たちはどうしてもイエガー様の役に立ちたいんです」
「だから、ししょーに私らを鍛えてもらって、ちゃんとイエガー様のお手伝いができるようになるんだわん!」
二人は意気込んだ様子を見せる。
彼には今までギルドに入ることを断らてきたこともあり、今度こそ認めてもらいたいと必死なのだろう。
そのために今頑張っているのだということを知ってもらいたいのだ。
だが彼は、一瞬だけ、微かに眉を潜めて彼女たちを見た。
リリーティアはその一瞬の表情を見逃さなかった。
そして、その時の彼の心情を悟った。
「ミス・リリーティア」
イエガーは二人からリリーティアへと視線を移す。
その目はどこか鋭く、威圧的だった。
「・・・・・・余計なことしないでほしいデスネ」
「・・・・・・・・・」
放たれた言葉。
彼の怒りが含まれた低い声に、リリーティアは何も返すことができなかった。
彼のその言葉の意味を、深く理解していたからだ。
だからこそ、彼女にはそれに対する返す言葉がなかった。
何より彼の言葉の真意は、彼女自身、今まで何度も繰り返し自問していた言葉であった。
ゴーシュとドロワットを弟子としてから、何度となく繰り返し、繰り返し。
「イエガー様?」
ゴーシュとドロワットは、イエガーのいつもと違う雰囲気に戸惑いを隠せなかった。
そして、ずっと黙り込んでいる師の顔を不安げに見上げた。
師の表情は何とも言えない顔で、表情からは何も読み取ることができなかった。
ただ、師と恩人との間に流れる空気は、嫌に張り詰めたなものだということは感じていた。
「二人を巻き込むつもりデスカ?」
「っ・・・・・・」
リリーティアは僅かに表情を歪めた。
そう、弟子たちが言う”恩人であるイエガー様を支えたい”というその想い、進む道。
最終的にそれはが意味なすところは----------アレクセイの理想を叶えるための道具となる、ということ。
彼女たちを、自分たちの理想に巻き込んでしまうことになるのだ。
鋭く見据える彼の目をこれ以上見ることが出来ず、彼女は視線を落とした。
「師匠を責めないでください!私たちが無理にお願いしたんです!」
「そうだわん!ししょーは危険だからって私らを止めてくれて・・・。私らが言うことを聞かなかっただけなのん!」
ゴーシュとドロワットは必死な様子で、リリーティアとイエガーの間に立った。
「師匠は私たちに色んなことを教えてくれます。本気で怒ってくれます。心から心配してくれます」
「ししょーはどんなに忙しくてもあたしらのためにここまで来てくれる。どんな時も私らのために頑張ってくれてるんだわん」
「だから、師匠のことを責めないで下さい」
師は自分たちのために、いつも真剣に指導をしてくれる。
自分たちの願いのために、いつも想ってくれている。
だから、師が責められる理由はどこにもないのだと。
「ゴーシュ、ドロワット」
リリーティアは二人の言葉に、胸が熱くなった。
心から嬉しかった。
「・・・・・・・・・」
イエガーは僅かにだが苦渋な表情を浮かべていた。
「イエガー様のお気持ちは私たちもちゃんと理解しています。私たちのことを考えてくれていることも」
「それでも、どうしても、私らはイエガー様の役に立ちたいんだわん!」
イエガーは目を閉じて、ただ彼女たちの言葉を黙って聞いていた。
リリーティアも何も言葉を挟まず、じっとその様子を見守った。
彼女たちの想いが彼に届くことを強く祈って。
「私たちはもう決めたんです!それが私たちの選んだ道です!これは誰にも譲れません!」
「必ずイエガー様の足を引っ張らないぐらいに強くなって、イエガー様の力になるんだわん!ならないといけないんだわん!」
ここからは、彼女たちの問題であり、自分が出る必要はない。
その想いを理解してもらうには、彼女たち自身の言葉で伝えるべきだ。
「イエガー様、私たちはどんな道を進もうと、歩みを止めることなくイエガー様の力添えを成し続けます!」
「イエガー様の恩は私らの一生をかけても返せないものかもしれない。でも、私らのこの想いは、イエガー様が救児院のみんなを想う気持ちよりも大きいんだわん!」
出会った時と比べて彼女たちの想いが変わったと、リリーティアは感じた。
変わったといったら語弊があるのかもしれないが、以前よりも確固たるもの、芯がはっきりしていた。
それは、透明さがなくなり色が付いたような。
「どんなに苦しいことがあっても-------」
「どんなに悲しいことがあっても-------」
ゴーシュとドロワットは、そこで言葉を切り、互いに真剣な表情で頷き合った。
ああ、彼女たちは大丈夫だ----------リリーティアは口元に笑みを浮かべて、瞳を閉じた。
大丈夫。
彼女たちなら、きっと。
そして、二人は、まだ少し幼い瞳に強い意思を宿し、彼を見据えた。
「-----絶対に生き抜きます!」
「-----絶対に生き抜くんだわん!」
そう、彼女たちなら、
絶望の中でも、その瞳は翳ることはない。
闇の中でも、その命は輝き続ける。
己の信念を疑うこともないだろう。
私のようには、決して。
イエガーは驚きと戸惑いの表情で、ゴーシュとドロワットを見ている。
だが、しばらくするとその表情が変わった。
「!!」
瞬間、リリーティアはその瞳を大きく開いた。
同時に、目の奥が熱くなる。
彼女は思わず奥歯を噛み締めた。
溢れ出そうになる、瞳の中の熱を押さえ込むために。
目の前の彼は、少し困ったように、でも微かな笑みを浮かべていた。
それは僅かな変化。
けれど、その瞳には彼の優しさが見えた。
そして、彼が”彼”でなくなった日から、初めて見る姿。
けれど、記憶の中では初めてではない姿だった。
遠い過去の”彼”と同じ笑み。
それもまた、もう二度と見られないのではないかと思っていた。
遠い過去にあった、もうひとつの太陽(かがやき)。
遠い過去に見た、忘れられない笑顔(かがやき)。
その輝きが、今、目の前にある。
あの頃の同じ、--------------------穏やかな笑顔。
「ゴーシュ、ドロワット。グランドマスターの言うことはよく聞くのデスヨ」
しばらく二人を見詰めていたイエガーは背を向けて言った。
「「イエガー様?」」
ゴーシュとドロワットは彼の言葉に首を傾げたが、リリーティアは眉根を寄せながら嬉しげな笑みを浮かべた。
なぜなら、今の彼の言葉、それはすなわち----------、
「ミス・リリーティア。ゴーシュ、ドロワットをよろしくお願いしマース」
----------彼女たちがギルドに入ることを認めるというだ。
そして、リリーティアに彼女たちのことを頼んだということは、彼女たちの指導をこれからも行っていいということ。
「はい、任せてください」
彼女は彼の背に向かって、深く、深く頭を下げた。
ゴーシュ、ドロワットの想いを受け入れてくれたこと、
そして、あの頃と変わらない笑みを見せてくれたことに、深い感謝の想いを込めて。
この時になって、ようやくゴーシュとドロワットも、彼がギルドに入ることを認めてくれたのだというこを理解した。
二人の瞳はみるみるうちに喜びに満ち溢れる。
「「イエガー様!」」
二人の声にイエガーは足を止めた。
「「ありがとうございます!!」」
二人も感謝の意を込めて、深く頭を下げた。
彼女たちの威勢のいい声は、この平原一帯に響き渡るほど大きな声だった。
「楽しみにしてますヨ。ゴーシュ、ドロワット」
そう言って、イエガーは振り向くことなくその場を去って行く。
でも、その声は穏やかで、本当に楽しみにしているかのようであった。
三人はその姿が見えなくなるまで、彼が去っていくのを見詰めていた。
「よかったね、ゴーシュちゃん!」
「ああ!これも、師匠のおかげです。師匠がいてくれたから、イエガー様も-------」
「それは違うよ。二人が懸命に自分の想いを言葉にして伝えていた。それがイエガーさんに届いたんだ。ゴーシュ、ドロワット、二人の想いの強さは本当にすごいよ」
リリーティアは二人の小さな頭にそっと優しく手を置くと、目を閉じて続けた。
「・・・・・・本当に、ありがとう」
彼女たちのおかげで、彼はあの頃と同じ笑みを見せてくれた。
この手で奪ってしまった笑みを、もう一度見ることが出来た。
もう二度と見られないと思っていた、その笑みを。
そんな切ない想いを秘めながら、リリーティアは二人の弟子たちに感謝の言葉を零した。
「師匠?」「ししょー?」
けれど、二人の弟子たちは何に対する感謝の意味か分からず、きょとんとして彼女の名前を呼ぶも、
彼女はただただ嬉しげに笑みを浮かべて、二人を見詰める。
あまりに嬉しげに笑っているものだから、二人も何だか嬉しくなり、お互いに顔を合わせて笑い合った。
「イエガー様が認めてくれたからこそ、私たちはもっと強くならないといけないな」
「うん、もっともーっと頑張らないとねん」
そして、次は真剣な眼差しを以って、二人は師を見上げた。
その瞳には、これまでにも増して、強い意志、信念が宿っているようだ。
「師匠、指導の続きをお願いします!」
「ししょー、続きお願いしますわん!」
その揺るぎない瞳にリリーティアは大きく頷き返した。
彼女たちの瞳の輝きは彼女には眩しすぎて、少しだけ目を逸らした衝動にかられたが、その輝きに胸が温かくなるのも確かだった。
そして、弟子たちは、広大な平原へと駆け出した。
平原を駆けるその小さな後ろ姿を見詰めながら、彼女は師としての思いに耽る。
必死になって伝えた弟子たちの想い。
彼女たちが育む想いも歩む道も、彼女たちの人生(もの)。
どんな時も、自分自身で選び、歩んでいく。
そんな彼女たちの師である私の役目。
それは、私が識る知識と持ちうる力を、少しでも多く与えること。
私に出来ることは、ただそれだけ。
きっと、彼女たちなら彼女たちらしく、選んだ道を歩んでいくだろう。
だから、私が先を歩いて導くことはしない。
私が導く必要はない。
そもそも、私に導く力はないのだ。
それでも、今のこんな私でも、彼女たちのために出来うることをやろう----------、
平原を駆けるふたつの小さな光。
闇に染まった道と知って尚、その道を切り拓こうとする小さな光たち。
その光が遠くでリリーティアを呼ぶ。
彼女は手を上げて応えると、その光に向かって歩き出す。
--------------------あの子たちが彼のもとへ旅立つ、その日まで。
第12話 弟子 -終-