第11話 師匠
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トルビキア大陸特有の湿地帯。
鬱蒼と生い茂る草木の中を、重い足取りで歩くリリーティア。
深く被った頭巾(フード)の中からのぞく、彼女の表情は未だ険しい顔つきだった。
その表情から分かるように、彼女はキュモールのあの言動に未だ怒りが収まらずにいた。
あの時は平静を装っていたが、実際は腹が煮えくり返る思いだった。
けれど、それを表に出すわけにはいかなかった。
余計な面倒は起こしたくはない。
何より己の一時の感情のせいで、シュヴァーン隊の人たちに迷惑をかける訳にはいかない。
シュヴァーン隊の特別補佐である彼女自身がキュモールに対して事を起こせば、その本人ではなく、シュヴァーン隊の隊員たちにその矛先が向けられるかもしれないからだ。
と言っても、実際、シュヴァーン隊とキュモール隊の隊員同士が揉めた、という報告はこれまで何度か来ている。
だからこそ、彼女は己の不始末で彼と事を起こすことだけはないように努めていた。
けれど、この怒りは当分収まりそうにもないのも事実。
彼の言葉はどうしても頭から離れなかった。
『まったく、キミたちのような卑しい騎士団がいるから、高貴な騎士団の僕たちが苦労するんだよ』
そう言っていたキュモールは、その家柄によって<帝国>騎士団の隊長という地位を受けた。
いわゆる、家名だけで出世した名ばかりの隊長だ。
そのため、剣術も指揮能力もその実力は素人同然であった。
もちろん、シュヴァーンのその隊長主席という地位も訳あってのものだ。
けれど、剣術の腕も、指揮の能力も、そのどちらも優れているのは確かで。
私自身、それを見てきた。
だから、許せなかった。
『それなのに隊長主席?大した能力もない、ただの成りあがり者のくせにね』
シュヴァーン隊長に対してのあの言動は。
雲の切れ間から光が差し込む。
すると、瞬く間に太陽が広大な平原を明るく照らし出した。
ヘリオードを出で数時間。
草木が覆う湿った森林地帯を抜け、トルビキア大陸の東平原に出た。
リリーティアは一度足を止めると、雲の隙間から見える青空を見上げる。
そして、深く重いため息を吐くと、再び彼女は歩き出した。
おとずれた晴れ間に憂鬱さは和らいだものの、それでもやはり気分はすぐれなかった。
貴族出身だから何だというのか。
何が偉うというのか。
何が栄光だというのか。
何が。
どうして、貴族というだけで。
どうして、こうも違うのだろう。
どうして、同じなのに、同じではないのだろう。
----------彼女の頭の中に浮かぶのはひとりの人物。
どうして。
----------皮肉屋だったけれど、
どうして。
----------誰であっても分け隔てなく、
どうして。
----------紳士に振舞う心を持っていた、
どうして、違うのだろう。
--------------------あの人と。