第10話 光輝
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「・・・すごい」
リリーティアは呟いた。
目の前の絶景に自然に言葉が零れた。
彼女はゆっくりと進み歩き、崖の下が見下ろせる数歩手前で立ち止まった。
ちょうどその時、地平線から光が溢れた。
それは徐々に強くなり、眩い輝きを放つ。
「わぁ」
----------朝日だ。
朝日に照らされ、海面が結晶のようにキラキラと輝く。
その美しさに感嘆の声を上げ、彼女の表情も光り輝く海面のようにぱっと輝いた。
「これはまた、前にもまして絶景だね」
彼女の後ろで、レイヴンは片手を額の上に当てながら目の前に広がる絶景に目を細めた。
「すごい、すごいです!この丘にこんな素敵な場所があっただなんて・・・!」
リリーティアは後ろにいるレイヴンに振り替えると、目を輝かせて声を上げた。
そして、彼女はまた、絶景のほうへと視線を移した。
まるで子どものように無邪気な声を上げる彼女に、レイヴンは何故か安堵した表情を浮かべ、その後ろ姿を嬉しげに見詰めていた。
「ギルドのやつらに教えてもらったのよ。知る人ぞ知る穴場があるってね。それで、前に一度、俺もここに来てみたんだけども、正直驚いたわ」
「本当にきれいです。すごく、きれい・・・とても、とても・・」
涼やかな潮風、暖かい太陽の光、リズムよく打つ潮騒。
それらすべてが体全体を包み込むように感じられて、とても心地がよかった。
母親の腕の中で眠っている赤子はこんな気分なのかもしれない。
彼女はそんなことを思いながら、じっと目の前の景色を見詰め続けた。
「リリィちゃん」
レイヴンに名前を呼ばれ、彼女は振り向いた。
「騙されてよかったでしょ?」
瞬間、----------彼女は息をのむ。
じんわりと目の奥が熱くなるのを感じたリリーティアは、とっさに彼から絶景へと視線を戻した。
そして、一呼吸おいて、
「はい」
たった一言。
それが精一杯だった。
これ以上、今の彼の表情を見ていたら、気づかれてしまうから。
これ以上、今の私で言葉を紡いでいたら、気づかれてしまうから。
----------今にも泣いてしまいそうな私に。
何とか涙を呑み込み、幸い彼には気づかれなかった。
そのまま二人は、長い間、海を眺めていた。
レイヴンは彼女の後ろ姿と輝く海を見詰め続け、リリーティアは朝日と共に輝く海を見詰め続けた。
知る人ぞ知る絶景にその瞳は魅せられ続けた。
けれど、彼女の瞳の奥に浮かぶものは、それとはまた違うもの。
目の前の絶景よりも、魅せられたものがあった。